男の痰壺

映画の感想中心です

対峙

★★★★★ 2023年2月18日(土) 大阪ステーションシティシネマ

又もやのコロンバインの事件がモチーフかと思ったら、パークランドの事件だと。似たような事件が繰り返されてるんですね。

設定も、それ程までには意外性のあるものでもない。ディスカッションドラマは対立項が要件なのだから、まあ、これほど対立する設定もない。銃乱射事件で殺された子の両親と犯人の子の両親のディスカッションなのだ。

 

映画はわずか数時間の対峙を描いているが、作り手はそこに至るまでの膨大な日々のことを相当、綿密にリサーチ・想定して作り上げた節がある。

事件当日のこと、裁判のこと、裁判以降の日々、更に事件に至るまでの家庭内のことなどで、それを4人の役者たちと綿密にディスカッションして共有したのだろう。台詞の端々に挟み込まれる、過ごしてきた日々の厚みが尋常ではなかった。

監督のフラン・クランツはTVドラマを中心に活躍してきた役者だそうで、この作品が初監督作だそうだが、すごい執念で丁寧な仕事をしたと思います。

 

役者も素晴らしかった。特に加害者側の両親。夫は典型的な仕事人間タイプでドライ、妻はただそれに従ってきた女に見える。その2人が最後には心の内を振り絞るように吐露し出すあたり、両者のタイプは反転する。

 

肚を割って話し合う。よく言われる言葉だが、それでも分かりあうことは簡単ではない。それでも人は肚を割って話し合うべきだと映画は締め括られる。微かな希望と一抹の不安と共に。

 

何か大きな逆転劇がある訳でもないが、ドライな仕事人間と夫に従うだけの女に見えた加害少年の両親が世間体を脱ぎ捨て真摯な思いを語りだす終盤のドライブ感。相当に綿密で大容量の背景設定の共有が為されて初めて醸される濃厚な時間とタイプキャストの成功。(cinemascape)

 

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