男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【ああ~あこ】

愛の嵐

★★★★ 2000年1月15日(土) 天六ユウラク座 接写中心の収容所描写は扇情的に過ぎ一歩間違えれば陳腐に堕する臨界だと思うし、被虐の逆転から心中へと至る男と女の描写も曖昧で食い足りない。にしてもナチの亡霊達が裏側で徘徊する古都ウィーンの退廃ムードが出…

アイズ ワイド シャット

★★★★★ 1999年8月1日(日) 梅田東映パラス 最先端の過激度は無い替わりに極上の器が用意され、鬼面人を驚かすハッタリの替わりに揺れ動く心の襞の細部をも精緻を凝らして描くキューブリックの新局面と思われたのに…。クルーズとキッドマンのかけ合いには後期ベ…

愛人ジュリエット

★★★ 2023年1月19日(木) シネリーブル梅田2 これぞおフランス正調ロマン主義といった趣きで、煎じ詰めれば「色男金と力はなかりけり」ってだけの話であり、男は女々しくもフラれた女のことをいつまでも思っている。それだけの話なんです。 夢や幻想を映画…

愛を乞うひと

★★★★ 1999年1月30日(土) 新劇会館シネマ2 原田の2役は成人した子の演技に1万メートルを全力で走りきったランナーのような透徹した悟りと自信を限りなく静かな佇まいに滲み出させ怒涛のサディスティック感情の発露は反転し母性の慈愛へ還流する。凄まじい…

アイス・ストーム

★★★★★ 1999年8月28日(土) 西灘劇場 エゴヤン的退いたアプローチが転じて終盤のカサヴェテス的に肉を切る展開に迫るあたりで醍醐味は充足されるが、更にラストで反転されるうっちゃり展開には世界が変じて全てが許容可能となる。前作に続き連チャンされるアン…

赤穂浪士

★★★★ 12月12日(月) 新世界東映 毎年、暮れともなれば映画もテレビも「忠臣蔵」って時代があって、多分60年代がピークだったんじゃなかろうか。ひねくれた俺は、そんな年中行事みたいな手垢まみれの趣向にソッポを向いてきたので、まともに忠臣蔵見たこと…

愛してる!

★★★ 2022年10月11日(火) シネリーブル梅田2 元女子プロレスラーが地下アイドル目指すがパッとしなくてSMの女王様になる。という雇用の流動化が求められる現在の我が日本に於いてキャッチーな題材であります。嘘ですけど。 だが、このミサ・ザ・キラーと…

愛のコリーダ

★★★ 2001年2月10日(土) シネリーブル梅田2 吉蔵の優しさってのが時代への厭世感から来る投げやりに見える。それに対して定は完全なるニンフォマニアで極めてノーマルなる嗜好を持つ俺には単なるうっとおしい女。心の底で噛合わない愛にはそそられない。(cin…

愛の新世界

★★★ 1995年2月25日(土) 扇町ミュージアムスクエア 女性讃歌という概念自体が言わずもがなな時代にそれをやって耐え難い時代錯誤感に被われてしまったし、男達にも虚無が足りない。映画とアラーキーの写真との親和性も低い。それでも「今夜は踊ろう」で夜明け…

青空娘

★★★★ 2001年1月20日(土) テアトル梅田2 タイトルそのままの抜けの良いカラー画面の中で、いい調子で飛び交うロジカルで歯切れのいい台詞の気持ちよさ。そして、タイトルロールとは正反な若尾の粘液質のキャラが醸し出すギャップがやけに色っぽい。(cinemasc…

哀愁

★★★ 2001年2月26日(月) 動物園前シネフェスタ2 3つか4つ位の感情を複層的にワンショットで表現し切るリーの顔芸は万座を圧するが何せ綺麗すぎて哀切さに遠い。戦時下の「螢の光」が喚起するロマンティシズムは鉄板にしても後半のごたつきもすっきりせず恋…

RED SHADOW 赤影

★★★ 2001年8月11日(土) ホクテンザ2 『サムライ・フィクション』を承前する開巻は最大級の期待を抱かせるのだが、類型な作劇の連続に落胆が募る。そういうパターンをこそ崩壊させてほしかった。ギャグに抗するシリアス、おちゃらけに比する非情が温く均衡が…

あいつと私

★★★★ 2001年9月2日(日) テアトル梅田2 アンチモラル天こ盛りで相当にドロドロしハードで暗いと言えば暗すぎる内容を裕次郎の「天然」と明晰口跡で生硬台詞を早口で捲し立てる演出の盲信と馬力が完璧にカバー。更にカラーの調子も絶品で暗部を粉飾する。まさ…

赤い砂漠

★★★ 2001年9月7日(金) 動物園前シネフェスタ2 明確な起因があって病んだらしい主人公は自己完結しており世界を閉ざす。故に変化は永遠に訪れない。石化コンビナートの幾何世界に彩色された淡彩と曇天狙い。ディ・パルマのそういう完璧なコントロール下で尚…

悪魔の美しさ

★★★ 2001年10月12日(金) シネリーブル梅田2 所詮は魔法によって得られた若さってのがどっかで引っ掛かる。主人公が自力で獲得したわけでない幸福は間抜けな悪魔のおかげで永続する。それでもミシェル・シモンの愛らしい因業親爺演技の素晴らしさは満喫でき…

赤い橋の下のぬるい水

★★★ 2001年11月7日(水) シネリーブル梅田1 脚本・演出とも地に足着かぬ感じがした。そんな中清水のエロスがのっけの役所を籠絡する場面から唯ならぬものがあり、胡散臭い寓話に真実味を付与するかと思われたのだが、結局大竹しのぶのイミテーションに収束す…

悪名

★★★ 2001年12月20日(木) ホクテンザ1 今更企画で前半は紙芝居的展開にうんざりしかけるが後半俄然息づいてくる。櫻井淳子の醸し出す儚さ所以だろう。役者、演出をはじめ美術に至るまでアベレージを保ち卒が無い。エンクミ・青田など女優陣の選択がシュアで…

青い凧

★★★★ 1994年5月3日(火) みなみ会館 珍しくもない文革期を挟んだ一女性の編年記だが、従容として受動的であるが故の強靱で柔軟な適応力が素晴らしい。透明度の高い撮影は静謐であり淡々と流れてあざとさの欠片もない。子役が良いのも中国映画の常。(cinemasca…

悪名一番勝負

★★★ 2001年4月5 日(金) トビタ東映 これはマキノを監督に招聘したからだろが、丸っきり『侠客伝』か『残侠伝』の世界で健さんを勝新に置き換えただけだ。それはそれで味わいがあるが、一方で大映が自社の看板を他社のに塗り替えられて已む無しといった見栄を…

アクシデンタル・スパイ

★★★ 2002年4月17日(水) 新世界国際劇場 笑いが弾けきらないジャッキー高齢化の寂寥感が重く哀しくのしかかる。ビビアン・スーとの哀切な物語の余韻を終局のカタルシスがぶち壊す構成の拙さ。見えそで見えない町中での逃走劇が最大の見所。(cinemascape) keni…

愛の拘束

★★★ 1994年8月28日(日) 新世界国際劇場 何だかようわからん展開がずるずる続いていってる間に一応は納得させられるという一風変わった味。男と女の曰く言い難いダレた関係は第3者には付け入る隙はないというなら徹底すればよかったのにと思わせる。ラストの…

愛の世紀

★★★ 2002年6月20日(木) OS劇場CAP 映画製作話に独善的モチーフを散りばめた閉じた世界は食傷するが、一方で困ったことに、この映画はとてつもない美しさなのだ。しかも終末観とでも言うような哀しみに覆われている。ドカエやヴィエルニの最高作に並ぶモ…

青い春

★★★★ 2002年8月17日(土) 梅田ガーデンシネマ2 ありがちな家庭環境とかの背景を一切削ぎ落としたのは映画の純度を高めてはいるし、語り口も切れが良いが、傍系人物のわかり良さに比べ主人公の虚無感がどうにも借り物臭い。演じる松田龍平が所詮ボンボンだか…

赤いシュート

★★ 1993年2月11日(木) 扇町ミュージアムスクエア がむしゃらにやって来たが突如これで良かったのかと振り返る自分史。魅力的な構成だが、どっちつかずのモレッティの風貌同様にアプローチが緩くて上滑りにしか感じられない。『81/2』級の映画的造形への拘り…

赤線地帯

★★★ 2002年9月9日(月) 高槻松竹 ピークを迎えた女優と忘れられクスブってる女優を、その通りの配役で使う冷徹さが溝口の溝口たる所以だったのだろうが、京と若尾の挿話は図式的で木暮と三益の部分が胸に沁みるのも溝口だったからこそとも言える。(cinemascap…

赤穂城断絶

★★ 1993年2月28日(日) トビタ東映 何でもありの『柳生』の次に「忠臣蔵」とは企画力が圧倒的に貧困で約束事の名場面集を寄せ集め俳優を使って深作流の或る意味バタくささで形成しただけに過ぎない。東映が狼煙を上げた時代劇復興の掛け声は2作目にして夢の…

OUT

★★★★★ 2002年10月21日(月) 梅田ピカデリー1 誰もが一線を越えたいと思っているし越えてしまえるのだということ、そして、その後には刹那であるにせよ人は解放される。日本版『テルマ&ルイーズ』めいてもディテールの巧さがカバーし切る。原田は良くて当り…

愛について、東京

★★ 1993年3月21日(日) テアトル梅田2 ある意味したたかに生き抜いていく在日外国人達に抗する日本人がインポテンツに悩める半端ヤクザってのが余りに偽悪的であり被虐趣味にしか見えない。バブル真っ直中の90年代の「東京」はもとより「愛」についても描…

赤い夕陽の渡り鳥

★★★ 2002年10月26日(土) トビタ東映 白木マリを軸にした三角関係の横っちょで旭とルリ子はあくまで明朗に光輝く。正統派のヒーロー・ヒロインってのはそういうものなのだろうけど、穢れどこ吹く風情は感情移入の余地なく何となく物足りない。磐梯山の雄大な…

赤い影

★★★ 2022年4月25日(月) シネヌーヴォ イタリア資本下のジャーロ風味を感じるという点でダリオ・アルジェントを、音楽ピノ・ドナジオからデ・パルマをと、影響されたんじゃないかと思って調べてみると「サスペリア」や「キャリー」より前の作品なんですね、…