男の痰壺

映画の感想中心です

愛人ジュリエット

★★★ 2023年1月19日(木) シネリーブル梅田2

これぞおフランス正調ロマン主義といった趣きで、煎じ詰めれば「色男金と力はなかりけり」ってだけの話であり、男は女々しくもフラれた女のことをいつまでも思っている。それだけの話なんです。

 

夢や幻想を映画は好んで描く。それは、飛躍したイメージの描写に映画の特質が合っているからです。で、本作も全篇の8〜9割が夢のシーンであるのだが、それが例えばベルイマンが繰り出すようなエッジの効いたものには遠いように思われる。だって描くものが女にフラれてイジイジだけっすから。

夢や幻想は現実世界の生業と相対してこそ意味を持つ。この映画では後者がほぼ無い為に何だか一方的な世迷いごとを見せられ続けてるような退屈さを感じるのです。

 

終盤、映画は現実世界に回帰する。撮影アンリ・アルカン、美術アレクサンドル・トローネルの仕事は夜の街を彷徨するジェラール・フィリップを孤絶させるにさすが一級の仕事だと思わせる。この2人を「ローマの休日」というお茶目でキュートな作品で登用したワイラーは強かであったと思わせるのです。

 

女々しくて辛いよは分かるが、夢や幻想は現実世界の生業と相対してこそ意味を持つ。後者がほぼ無い為に一方的な世迷いごとを見せられ続けてるような退屈さを感じる。終盤、現実世界に回帰した映画は撮影・美術の粋とも言える深みを増すが時既に遅しだった。(cinemascape)

 

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