★★★★★ 2024年4月27日(土) 大阪ステーションシティシネマ8
小さなミニマム世界が物語進行につれてどんどん枠がはずれて拡張していく。
決して珍しい構成ではないのだが、本作はシングルマザー家庭のギスギスした母娘の小さな世界が、屋外に開放されて多様な人物が参入してきての拡張に繋がる。
そのことは、不安・怒り・苛つきといった負のベクトルが安心・喜び・安寧といったプラスの感情に転じることに同期していく。そうやって加速的に多幸感の増幅に至る点で、ありがち構成も新たな息吹を獲得していく。秀逸だと思います。
特に終盤で水漏れがやばい状態になったリンダ宅に登場する人物を見て、本作が1歩抜けたと思ったのは、拡張が現実・非現実、現実・妄想の垣根を越えて別次元に及んでしまったことによる。あーそーきたのか!とズドンと心に落ちるものがあった。
何年か前に「マロナの幻想的な物語り」というフランスのアニメを見たときにも感じたのだけど、フランス語の語感はアニメーションという素材を包み込むのに映える。
疾走の表現も優れているが、特に夜間のドライブ行の母娘の車内は、その孤絶感の表現において特筆もん。
けっこう逃げ回ってるニワトリに感情移入しそうなんだが、最後はきっちり食べるのもシニカルな現実認識だと思います。