男の痰壺

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空に住む

★★★★ 2020年10月29日(木) 大阪ステーションシティシネマ

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基本ダウナーな彼女が、映画の後半で、突如激しい感情を表出する。

一つ目は彼女が住むことになったハイタワーマンションのオーナーである叔父の嫁が、部屋に勝手に入ってくることへの怒り。

二つ目は不義の子を孕んだ同僚が、路上で産気づいたとき、頑なに病院行きを拒む彼女への苛立ち。

なのであるが、まあ、言わばこの2つは、主線の物語に大きく寄与するエピソードでもない。しかし、それまで、そういった感情の起伏が示唆されてきたわけでもない。

 

演じた多部ちゃんは、役について全く理解できませんと言っている。そりゃそうだ。こんな唐突で舌足らずな感情表現を健気にこなす女優多部ちゃん、寧ろ彼女じゃなかったら茶番に堕したところである。

まあ、映画としては枝葉な部分なのではありますが。

一般女性が、旬のアイドルとあれやこれやの「ローマの休日」逆バージョンで、そのへんに関しては過程も帰結するところも良いと思います。

 

阿部和重Twitterで採光に関してベルトルッチ曽根中生を出してベタ褒めしてたのを読んだけど、そこまでは思わない。だが、超高層階に住むという隔絶感は大きな窓からの景観が適切で十全に表現されていた。

地下の塵芥置場のシーンが何度か出てくるのも、マンション構造を踏まえて彼女の孤絶感を際立たせる配置だと思います。

 

何より多部未華子ファンとしては、透明な空気の中で揺蕩うような彼女が魅力的に撮られていた。それだけで見た甲斐がありました。★1つ加点しました。

 

依る処見つからない彼女がタワマンの高層階という中空の覚束なさの中で逆説的に何かが解放される。柵から隔絶された幻影の恋が舞い降り、浮世の垢を癒してくれた猫は逝く。これからは呑んで溜めた怒りや苛立ちも大声で表明するだろう。透明感に彩られた寓話。(cinemascape)

 

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