男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【む】

無法松の一生

★★★ 2023年3月13日(月) 大阪ステーションシティシネマ5 今回、俺が見た「午前十時の映画祭」では、撮影や公開の裏話みたいなのを取り上げた短篇がついていてありがたかった。なんでかと言うと戦時中の検閲で大幅カットされたことを知らないと、なんじゃこ…

ムーラン・ルージュ

★★★★ 2001年12月2日(日) 三番街シネマ1 繰り返し朗々と「愛」が歌われ感銘したように思えるのだが、それは愛を歌った嘗てのミュージカル映画に対するオマージュへの共振であった気がする。デジタル使いも熟れて浮世を突き抜けるが、一方で汗とドーランの強…

無秩序な少女

★★★ 1994年4月24日(日) ホクテンザ2 夢も希望もなくて何をしたらいいかも解らなく、手を差し伸べてくれる人を通り越し流されて行く。確かに人生とはそういうものだろうが、真面目に丁寧に、そのことを描いただけと言うのではどうかと思う。「無秩序」と言う…

息子の部屋

★★★★ 2002年2月2日(土) 動物園前シネフェスタ3 喪失がもたらす長い閉塞感のトンネルを抜け、日常から隔絶した海岸の国境検問所で互いの顔を見合わせ笑顔を交わす3人。何も解決されたわけではないのだが取り敢えずはここで観客も一気に開放される。これから…

ムーンフリート

★★ 1994年6月19日(日) 第七藝術劇場 「宝島」とか「白鯨」とかの海洋奇譚の系譜上のものなんだろうが、それにしても何なんでしょうか…これは…。閉塞舞台で爽快感の欠片もないダラな話が延々と続きラングが投げた訳でもなさそうなのに漂う場末の湿り気。有る…

夢魔

★★ 1994年7月21日(木) テアトル梅田1 石井隆が好んで撮りそうなサイコなのだが、この手の題材に不可欠のケレンやハッタリが未だ廣木演出には欠ける上に、決定的なのは学芸会かと見紛うばかりの出演陣の演技の拙劣。嗜虐願望の掌話程度なワンアイデアを無理…

無法松の一生

★★★★ 2003年2月4日(火) トビタ東映 日本映画黄金期の贅を尽くしたセット美術の奥行きの深さを堪能。ミディアムショットはマキノを彷彿とさせる安定感があり、多くのシンボリックなショットに加藤泰を想う。お話は勿論良い。尚阪妻版は未見。(cinemascape) ke…

無能の人

★★★ 1992年4月15日(水) シネマヴェリテ 石への偏愛やそれを売るという不条理がどうにも借り物臭い。何もできない・しないことへの突き詰めが不足してる。もっと影の薄い奴を主役に据えるべきだったのに竹中直人が主演も張ったので台無しだと思う。神戸浩だけ…

無防備都市 ベイルートからの証言

★★★★ 1992年9月27日(日) 新世界国際劇場 敢えてこの映画の難点と言えば『ミッドナイト・エクスプレス』との類似性だろうが、ドキュメンタルな分迫力は圧倒的。中東に対する違和感で染色された物語に比して透明度は高い。何らかの政治性に依らずに純粋に映画…

息子

★★★ 1991年11月9日(土) 高槻松竹 今更の平成版『下町の太陽』的アナクロを稀代の無頼役者を親子に立て演じさせる山田の平衡感覚は流石だが、序盤で『東京物語』をトレースし、終盤ではメロウな情に流れ、それらが有機的連関を持たずバラバラである。部分では…

無防備

★★★★ 2009年11月21日(土) シネマート心斎橋2 理に落ち過ぎると言うか、所詮は男の目線で語られる女の話という感じが拭えないし、過度に妊娠・出産に形而上的な何かを付与し過ぎな気もする。ただ、それでも主演森谷文子の存在感の醸す居たたまれ無さは圧倒…

無理心中 日本の夏

★★★ 1983年12月11日(日) 伊丹ローズ劇場 自分が誰かに殺されることにこそ意味が或るという机上の論理的モチーフを、これ又記号化されたアナーキスト達の中に投げ込み禅問答を繰り広げる。記号が記号に留まるので突き抜けないが方法論としては解る。イメージ…

ムーンライズ・キングダム

★★★★★ 2013年2月17日(日) MOVIXあまがさき8 潔癖すぎるまでの構図や美術を始めとした世界観、笑わない低温な人物群などがタチを思わせるが、境界超え寸前の猥雑なエロティシズムや狂気手前の偏執も混在してる。ミクロな世界で閉じてるかに見せつつ、…

ムービー43

★★★★ 2013年8月24日(土) テアトル梅田1 睾丸や下痢便をモチーフにする高度に幼児的単線ギャグが冴え序盤で鷲づかみにされかけたが、中盤以降は変態度がスーパーとまではいかずシュールの域に留まる。若干ダレかけたところでド腐れ猫が登場し立て直した。…

麦子さんと

★★★★ 2014年1月11日(土) TOHOシネマズ梅田6 構成は脚本段階で省略が効き、安易に大林的ジュブナイルな陥穽に落ちないのも好感を持った。低温兄妹も心根の奥では親への思慕は持ち合わせていることを自認する。ベタだが随所でそこそこ辛辣で納得性がある…

無防備都市

★★★ 1980年8月31日(日) SABホール 作り込んだと思しきドラマトゥルギーはアンナ・マニヤーニのシーンを除くと実は発露にさえ至っていない。解放直後のエモーションとリアルな風景と制約から生じた既存文法の破壊。それらは戦略的に付与されたものではなか…

衝動殺人 息子よ

★★★★ 1979年11月17日(土) ダイニチ伊丹 1980年9月26日(金) 伊丹ローズ劇場 救い難いまでの時代錯誤感とあからさまなメッセージ臭を割り引いても尚、真摯さは心を打つ。1.5線級の配役陣の入魂の演技と岡崎宏三の平板でありつつ的確な深度を携えたカメラワ…

胸に輝く星

★★★★★ 2016年2月28日(日) プラネットスタジオプラス1 冒頭から馬上のフォンダの佇まいの余裕と馬の歩みの心拍同期な快楽。沁み込んだ差別感情も気のある女の手前あっさり変節。へなちょこトニパキも真摯に指導し勝利も女も手に入れる。男ならこうありたい…

無伴奏

★★★★ 2016年3月26日(土) 大阪ステーションシティシネマ11 結局はこの顛末が主人公に何かをもたらしたわけでも無さそうで、寧ろ無いことが成海璃子のノーブル且つ無頓着演技で際立つのが清々しい。自己愛に浸りたいところを回避し得ている。大騒ぎの片隅…

無限の住人

★★★ 2017年4月30日(日) MOVIXあまがさき9 冒頭の100人斬りもクライマックスの300人斬りも、まあ大したものだとは思う。 こういう長丁場の乱戦を一応はダレもせず構築し切れるのは、やはり三池しかいないと思うのだ。 だが、にもかかわらず、つ…

ムーンライト

★★★★ 2017年4月6日(木) TOHOシネマズ梅田2 正直、これで終わりかいな…ってのが終映後の感想です。 以前、「ブロークバック・マウンテン」評で読んだものに、これが男と女の話だったら、この内容でこれだけの評価を得られるだろうか。 ってのがあって、深く…