男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【あさ~あの】

アトリエの春、昼下がりの裸婦

★★★ 2016年8月20日(土) 新世界国際 創作という作業にリヴェットやエリセ並みに真摯なわけでも当然ない。仄かといっていいモデルとの関係性にエロスも介在しない。だが煮え切らぬ三角関係は死へと向かう諦念めいたタナトスが浄化するだろう。そういう無常と…

アスファルト・ジャングル

★★★★ 2016年9月25日(日) プラネットスタジオプラス1 臨戦下の如き警察車の市中徘徊のローアングルな導入から容疑者の公開見分と掴みは超クールだが肝心の計画遂行は凡庸。しかし後半俄然冴えわたる。次々と娑婆への見果てぬ夢と想いと追憶を胸に彼らはフ…

アズミ・ハルコは行方不明

★★★★ 2016年12月10日 シネリーブル梅田1 あっち側へ行くっていう話であり、ただそれが女性の被虐論的に語られるのが違うんちゃうかとも思う。 だって男だってあっち側へ行きたいっていうか、みんなあっちに行きたいんちゃうやろか。 東京近郊の地方都市の閉…

アステロイド・シティ

★★★★ 2023年9月11日(月) 大阪ステーションシティシネマ12 入れ子構造なんだそうだが、それが十分に機能してるかは疑問である。1950年代、水爆の実験場の至近にある砂漠の中の町に表彰式の為に5人の少年少女とその家族が集められる、というのが内枠…

アーティスト

★★★ 2023年7月6日(木) 大阪ステーションシティシネマ10 10年前に、この映画がアカデミー賞とって日本でも公開されたとき見る気が全くおきませんでした。プラスチックなバッタもん臭がしたから。今回、再映されたのを機会に見たのだが、概ね予感どおり…

アダプション ある母と娘の記録

★★★★ 2023年6月5日(月) シネリーブル梅田3 アニエス・ヴァルダやケリー・ライカートら女性監督からリスペクトされてるらしいハンガリーのメーサーロシュ・マールタの1975年作でベルリンで金熊賞を取っているものだそうだ。 描きたいことが明確にあっ…

仇討崇禅寺馬場

★★★ 1999年11月20日(土) テアトル梅田2 折り重なる悪い偶然に翻弄されて心ならずも堕ちていく主人公の自責に苦悩し不条理に煩悶する様が今ひとつ淡泊に過ぎる。一筋縄でない物語を語るに流麗で正確だがケレンとハッタリと過剰を良しとせぬマキノ演出向きの…

あなたの微笑み

★★★ 12月12日(月) シネヌーヴォ 場当たりの出たとこ勝負であることは何かの僥倖に恵まれるか神の差配でもない限り自堕落な結果しか残さない。そういうことを思った。天才と呼ばれる一部の匠たちは往々にしてその僥倖や神の差配を呼び寄せるんだろう。リム…

あの子を探して

★★★★★ 2000年7月29日(土) 梅田ガーデンシネマ2 ド素人ばかりを使い、わけても主演の女の子の見目麗しくもなく性格悪そうなのがイタリアン・ネオリアリズモな伝統をに立脚してると思うそばから、フランス映画的小粋なエスプリも出してくる。あらゆる映画史に…

明日を夢見て

★★★★★ 1996年8月23日(金) 徳山市市民館小ホール 半端ないバリエーションに富んだセミドキュメンタルなインタビュー場面が冴えており『道』バリエーションの又かの感が気にならない。しかも、堅牢で流麗な移動を見せるスピノッティのカメラワークが入神の出来…

あの頃ペニー・レインと

★★★ 2001年4月9日(月) ナビオシネ5 マニアック小僧の業界見聞記が所詮は傍観者に留まり、自らの成長譚として生ぬるい。傷を負い血を流して欲しい。この時代、ロックシーンはもっとドラッグまみれで死と隣接してた筈。回顧調の蒸留メモワールでなく同時代的…

あなたの顔の前に

★★★★★ 2022年6月27日(月) テアトル梅田2 ホン・サンスがこれまでの大同小異な作風とは異なる領域に踏み込んだ作品だと思う。それは、これまでにないくらいのオーソドックスで強度の高い展開を持つ点と、自身による撮影がグラフィックな光彩をときに志向し…

アザーズ

★★★ 2002年4月30日(火) 梅田ピカデリー3 パンニングを始めカメラオペレーションに意味を持たせ得たロジックは感じたし屋敷の外景を含めたロケーションも堪能したが、それでもやはり世界反転の卓袱台返しの記憶冷めやらぬ時期の同工異曲には頷ぜ得ないものを…

あにいもうと

★★★★ 2001年5月15日(水) 高槻松竹 保護慾をからっきしそそらない大年増的京マチ子の妹も腺病質的中年インテリゲンチャ森雅之の荒くれ兄貴もそれなりに見れてしまうから不思議である。厭世的成瀬イズムを底辺に流したのが通りいっぺんなお名作に終わらない味…

あした来る人

★★★★ 2002年9月9日(月) 高槻松竹 これ程さばけた調子でお互いを切り合えれば気の重い人間関係も簡単だろう。川島のニヒリスティックな諦観の最良系での表出であり50年代に作られたことが驚愕。豊饒なプロットと最後の最後まで先が読めない展開を絶妙のテン…

アネット

★★★★ 2022年4月1日(金) シネリーブル梅田3 前半は、こりゃダメだーと思った。 アダム・ドライヴァーが売れてるスタンダップコメディアンの設定なのだが、その芸が全くオモロくない。ワーワーギャハハと映画内の客席が受けるほど俺の心は冷めていく。映画…

あずみ

★★★ 2003年5月14日(水) ナビオTOHOプレックス3 テロリズムに苦悩する主人公が逆説的に強く、しかも可愛い少女というのは鉄板の設定で、前半はプロットの立て方も時宜を得て良いが、結局、救出劇になっちまうのはすり替えだろう。ロジックが崩壊している…

阿修羅のごとく

★★★ 2003年11月24日(土) 三番街シネマ3 和田勉の傑作ドラマがあり、森田もそれを見てるらしいのに何故に今更なのか?中でも、新主題曲はトルコ軍楽曲の、獅童は竜童のエピゴーネンに過ぎない。向田の脚本を忠実にトレースすれば、これくらいの出来にはなる…

熱いトタン屋根の猫

★★★ 1992年2月5日(水) シネマアルゴ梅田 凄まじい閉塞状況をこれ又閉塞的な一本調子のハイトーンで綴られるものだから酸欠状態になりそうなしんどさ。AS仕込みのニューマンは押しつぶされて埋没したがテーラーの濃厚なフェロモンだけが状況に風穴を開けて…

★★★★ 1992年6月24日(水) シネマヴェリテ とにかく堅い…気が遠くなりそうな位…。ブレッソンもかくやという常道の映画時制を逸脱したコンクリートに穴を穿つ描写。鏡に集約された敗北の自虐感。突出した幾つかの描写はベッケルの歪さを際だたせる。(cinemascap…

アタメ

★★★★★ 1991年4月6日(土) 新世界国際劇場 正真正銘のストーカー犯罪者が思い描く一方的な理想郷だが、マイナスに振れ切った針が周回してプラスに転じた如き割り切り振りは疾しさを覚えつつも爽快。純情であることは則ちに異常であることを体現する主人公のキ…

姐御

★★ 1991年8月25日(日) 日劇会館 女侠映画のパターンを忠実に現代に置き換えただけのもので健さん・鶴田のポジションにたけしってのが新鮮で気が利いてるとは思うがそれだけだ。肝心の黒木がどうにも柄じゃなく肚の据わりに欠けるし鷹森演出には映画エキスの…

あの夏、いちばん静かな海。

★★★★ 1991年11月10日(日) 森小路ミリオン1 フィックスと歩行の移動のみで構成された反復のリズムが心地いい。サイレント基調なこともあり一種絶対映画の域に迫れそうだが、照れ屋のたけしは崇高化寸前でギャグのジャブをかまして外す。悪い奴は1人も出てこ…

明日への遺言

★★★ 2008年8月9日(土) トビタ東映 西村・蒼井・田中が証言台に立つ序盤。焼夷弾による空襲への包括的裁断へどれだけ迫れるかとも思えたが、これが、藤田演ずる日本将校の米軍兵死刑問題への前フリとして機能しか無くなった時点で問題意識は極度に矮小化さ…

明日の食卓

★★★★ 2021年6月7日(月) シネリーブル梅田3 3つの子育てにからむ挿話が並行して語られるのだが、ほとんど連関しない。それは構わないのだが、連関させる構造の尾っぽが微妙に残っているのはどうなんやろう。 終盤で唐突に出てくる子殺しの主婦が菅野美穂…

あの日、欲望の大地で

★★★ 2009年10月1日(木) テアトル梅田1 場所と時制が錯綜し多くのエピソードが並立配置される前半。圧倒的な風景描写の中、過去は神話性を現在は絶望の深淵を垣間見せる。ベルイマン絶頂期をも想起させる性的アプローチだったが、物語の帰結が見えるにつれ…

アニエスの浜辺

★★★ 2009年11月5日(木) 第七藝術劇場 前半は虚(?)実交えての自分語りがトリッキーな闊達さと饒舌と詩情を混じえての展開で素晴らしい。『道化師』や『ローマ』のフェリーニの似非ドキュメントに似た興趣。だが、後半の映画を撮りだしてからの話は俄に自…

アドレナリン ハイ・ボルテージ

★★★★★ 2009年12月5日(土) 新世界国際劇場 時代のモラリティと制約から解放されるということの際まで迫った真ドラッグムービー的あんぽんたんなアメコミ細工のアホ限界爆走な極北。塚本『鉄男』が加減乗除されて行き着いた果てとも思えた。しかし、可愛げも…

熱海殺人事件

★★★ 1986年6月15日(日) 友楽劇場 終始ハイテンションで繰り広げられる誇張芝居は、それだけ充分に吸引力を持つ。滅法面白いとは思いつつも、この演出でこれだけ面白いんだったら…との疑念を持ち続けた。小賢しくもないが冒険もなさ過ぎ。(cinemascape) kenir…

あのこは貴族

★★★★ 2021年2月27日(土) テアトル梅田2 「あの子は貴族」という物言いの裏には当然に「私は平民」という立場の思いが隠れているわけだが、映画はそういった格差について切り込もうという意図はない。どっちに属して生きたって楽しいこともしんどいことも…