男の痰壺

映画の感想中心です

アーティスト

★★★ 2023年7月6日(木) 大阪ステーションシティシネマ10

10年前に、この映画がアカデミー賞とって日本でも公開されたとき見る気が全くおきませんでした。プラスチックなバッタもん臭がしたから。今回、再映されたのを機会に見たのだが、概ね予感どおりでした。

 

モノクロ、サイレントでハリウッドの無声映画時代の悲喜交々を描く。

モノクロ・サイレントという手法。1930年代の映画産業の悲喜交々の内実。この2つは各々には悪くない要件なのに掛け合わされて陳腐化・無毒化されてしまう。安易で楽な戦略だ。手法に拘るなら現代劇をモノクロ・サイレントで、内実に拘るならカラー・発声で突き詰めて欲しい。

と言っても、映画がトーキーになったときの俳優たちの浮沈譚に今更感はあるし、内容も古来繰り返されてきた「スタ誕」物語では安牌の二乗なのではあるが。

 

それでもこれは!と思わせるシーンもあった。犬の疾走。そこだけはサイレント活劇のダイナミズムに辛うじて比肩しかけていたと思います。

 

サイレント期の映画産業をサイレントで描くことは単なるアイデアであり結婚式の余興の類と変わらない。その中で演者はハイボルテージな名演をしてるかのように見えるが本質的な悲喜交々は『スタ誕』物語のお定まりに埋没する。無垢なワン公の疾走だけが真実。(cinemascape)

 

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