男の痰壺

映画の感想中心です

映画感想【よ】

夜明けのすべて

★★★★★ 2024年2月15日(木) TOHOシネマズ梅田9 「ケイコ」に続いて又もや何らかの生きづらさを抱えた者たちの話かいな、三宅唱は才能あんねんから題材の方向性を何某かに偏向していってほしくないなー、と一抹の懸念をもって見たのだが、それでもやはり…

河内のオッサンの唄 よう来たのワレ

★★★ 2023年3月15日(水) 新世界東映 大阪南部は西の泉州と東の河内に色分けされるけど、堺からズドンと国道26号様が和歌山に縦断する泉州に比べ河内は他の人が滅多に足を踏み入れることのないディープ大阪だとハイブローな北摂人の私は思っておりまして、…

蘇える金狼

★★★ 1998年4月13日(月) ホクテンザ1 低予算を逆手に取ったような侘びしくも暗い情念が相当に良い味わい。大風呂敷を広げる前にその余地もなかった箱庭世界で充足している。だが、時代に即応しようとしたシステム攻略になると馬脚を現し低予算のショボさが際…

八日目

★★★ 1997年9月27日(土) 徳山市市民館小ホール これでも綺麗ごとすぎて本人や家族の実際の苦労の1万分の1しか描けてないと言われても、ダウン症の役をダウン症の役者に演らせたのは、知らんぷりするよか100万倍位偉いに決まってる。しかし、一方のサラリ…

夜の蝶

★★★★ 2000年8月13日(日) シネヌーヴォ 例えは突飛かも知れないが金星(京都)から飛来したキングギドラ(山本富士子)を迎え撃つ地球(銀座)の覇者ゴジラ(京マチ子)と言う一種の既視感を伴う怪獣映画並みの興奮を覚えた。それ位の迫力が、この2大怪獣(…

夜明けまでバス停で

★★★ 2022年11月1日(火) なんばパークスシネマ10 2年前のコロナ第1波による緊急事態宣言下の世相を反映させた作品で、その時何が起こっていたかを描こうとしているのだが。 当時、その余波を受けた多くの飲食業が苦境に立たされ廃業や縮小に追い込まれ…

夜の騎士道

★★★★ 2000年12月8日(金) 動物園前シネフェスタ4 恋の駆け引きが冷徹な損得勘定の基軸と移ろうパッションに委ねる冷めた若さとの往還として描かれるあたり、堪らなくシニカルで老成している。ルネ・クレールがこれ程の職人だったとは思ってもみなかった。巧…

四畳半タイムマシンブルース

★★★ 2022年10月19日(水) 梅田ブルク7シアター3 元ネタらしい「四畳半神話体系」の原作未読・TVアニメ未見だし、「サマータイムマシンブルース」の舞台・映画化作も見てません。唯一湯浅監督による「夜は短し歩けよ乙女」を数年前に見て傑作やーと今更…

夜がまた来る

★★★★ 1995年1月28日(土) 森小路ミリオン2 ルーティンワークのプログラムピクチャ(cinemascape) kenironkun.hatenablog.com

欲望

★★★★ 1994年7月30日(土) 扇町ミュージアムスクエア 写真の片隅に何かが写っているというモチーフがサスペンスの常套から逸脱し不条理に浸食され始める。深遠な何かを呈示しているとも思えぬが、それが夢か現かの白日の陽光と非現実的な美しいカラーのもとで…

忠臣蔵外伝 四谷怪談

★★★★ 1994年11月27日(日) 池田映劇 『忠臣蔵』にせよ『四谷怪談』にせよ大概にして欲しいという何の新鮮味もない題材を合体させると言う臆面の無さが素晴らしいと言えば素晴らしい。深作にしか出来ぬ芸当。そのいったらんかいの混沌から佐藤浩市の何とも言え…

夜の河

★★★★ 1994年11月6日(日) ACT活動写真館 この毅然と自立した価値観に立脚した女性の往き方というのは若干今更でもあるが、ハイクオリティの宮川映像と山本富士子の熱い情とクールネスの混在と古都の染物屋という閉鎖社会の雰囲気描写の3者の結合には惹か…

陽氣な渡り鳥

★★★ 1993年6月20日(日) サンポードアップルシアター 物語は在り来たりではあるが、TV勃興以前のスターというものが如何に丁寧に数多の職人達の手で作り出されたかを偲ばせる。天性のタレントもあるにせよ、未だ少女のひばりが垣間見せるオーラに感銘するの…

夜を賭けて

★★★★★ 2003年3月17日(月) みなみ会館 ベタに生きることを恥ずかしいと思うことが恥。復興の余韻冷めやらぬ狂熱の時代を描くにはエネルギーが要る。嘗ての今村や浦山が持ち得たそれをダルな時代に叩きつけ今の時代を問い直させる。オーソドックスなカメラの縦…

欲望の翼

★★★★★ 1993年8月6日(金) みなみ会館 隔絶された虚空間で、或いは夜の静寂で決してクロスしない5人の男女の想い。登場人物たちの息詰まりそうな閉塞感を亜熱帯林に舞台を移して解放するかに見えた語り部の視座が突如、神の視座に飛躍するかのようなラスト。…

四畳半襖の裏張り

★★★ 2004年1月22日(木) 東梅田日活劇場 宮下と江角の密室でのからみは圧倒的ではあるが、一方で粟津の挿話が全然面白くない。大正の世相をスチールで挿入した近代史観へのアプローチは上滑りで何の感慨も覚えなかった。絵沢にどやされてピーヒョロと自己研鑽…

四畳半芸者の枕紙

★★★★ 2004年1月22日(木) 東梅田日活劇場 ただただ順子とやりたいという栩野が清々しく、そんな純情への同情から体を与える中島葵が優しく、そんな葵を労るヒモ庄司三郎との四畳半こそが本作の白眉。とことん皆優しい。そして、越境するラストには至福と地獄…

赤坂の姉妹より 夜の肌

★★ 1992年6月13日(土) みなみ会館 落日の寂寥も伸し上がりの活力も決定的に欠ける。東宝的硬質さでは大映的艶やかさが要件の物語を御しきれないので、所詮はブラジルや北海道といった新天地に希望を見出す民青的終焉に帰結してしまう。男を手玉に取ってなん…

予期せぬ出来事

★★★ 1992年7月21日(火) シネマアルゴ梅田 群像劇と承知の上で野暮言うと夫婦と愛人の話に絞れなかったのが物語の純度を低めている。それ程までにリチャード・バートンのニヒリズムが発見だったし、更にそれ以上にエリザベス・テーラーの輝きには見とれる。こ…

夜逃げ屋本舗

★★★ 1992年8月16日(日) トビタ東映 伊丹映画的なニッチ路線業界話だが、突っ込んで取材した訳でもなく緩い。前田の手堅い画作りもあり堅牢で破綻は無いが、何と言っても大竹しのぶの柄じゃないのを強引に引き寄せたクールキャラ。中村雅俊の揺るがぬ凡庸と巧…

妖怪大戦争

★★★★★ 2005年8月19日(金) 梅田ピカデリー1 絶対零度の期待感で観始めたが、河童の「差別すな!キュー」で世界は鮮やかに転倒。そこからは一気呵成にバカ騒ぎに巻き込まれた。内輪の狂騒はスクリーンを隔てて容易には観る物に遡及しない。これはレアケース。…

汚れた血

★★★★★ 1992年10月4日(日) みなみ会館 ゴダール=クタールの共闘関係に色使いで並びレンズ使いで凌駕したとも思える撮影。あまりなボウイのポップスに乗ってのザーメン臭い若者の自己解放も仏映画史を負うノワレが押さえて均衡する。まあ、格好いいものはいい…

夜よ、こんにちは

★★★ 2006年7月8日(土) 第七藝術劇場 『浅間山荘』や『ミュンヘン』に比して物語る手法として扇情的な描写が皆無に等しいのはいいのだけど、そこから何を提示したかったのかが今ひとつ見えてこない。テロルの「時代」を問うわけでもなく人間の尊厳や葛藤を…

夜顔

★★★★ 2008年1月19日(土) テアトル梅田1 老醜と変態が滲み出るかの如きピッコリのアル中演技から一瞬たりとも目が放せず、それだけでも必要十分だが、怒涛の終盤に叩き込まれた意匠(箱や雄鶏)が醸すブニュエルへのオマージュ。2人の爺さんのシュール趣…

妖怪大戦争 ガーディアンズ

★★★ 2021年8月19日(木) 大阪ステーションシティシネマ10 全然期待もしてないのに、なんで見てしまったのだろうか。思うに俺は2005年の前作がすご〜く好きで、その年のベストワンにしているほどだったので、あの半分でも面白けりゃとでも思ったんでしょ…

Mr.レディー 夜明けのシンデレラ

★★★ 1990年2月18日(日) セントラル劇場 「おかま」であることの本質には言及せず一昔前の調和的人情世界にしか物語が展開しないのが所詮限界とも思うが、それが一種心地よくもある予想外に良く出来たコメディ。想像以上の赤塚、小野寺等のカマ演技に俺は徒花…

蘇りの血

★★★★ 2009年12月19日(土) シネリーブル梅田2 舌足らずとも思うが一徹に言いたいことを言おうとしている。それは全てに抗した者のみが愛を全うできるというみたいなことだろうか。『羅生門』な森林と『山椒太夫』な湖畔が彩る似非中世のアンビバレンツとパ…

4ヶ月、3週と2日

★★★★★ 2010年2月4日(木) 天六ユウラク座 不安と焦燥と苛立ちと遣り場無き怒りにまみれた1昼夜の顛末。直裁に呈示される剥き出しの女の生理は即物的な余りハードボイルドに近似しゆく。崩壊の臨界で踏みとどまった主人公は真夜中の彷徨の果て狂騒の対岸で…

世にも怪奇な物語

★★★★★ 1986年1月3日(金) SABホール 暗黒が日常に介在する近世にそれを求めた2人に対し、一見無縁な退廃と人工灯のバリバリ現代の次元の狭間に予想外の地獄を見せるフェリーニ篇が発想の根源で勝っている。深夜の高速道路で佇む少女は時を越えて「童夢」…

妖婆 死棺の呪い

★★★★ 1986年1月3日(金) SABホール 牧歌的世界の怪異小話としてパラジャーノフ的くすんだ原色が味わい深く、まあ悪くないと嘗めていると、やがて始まる3夜の祈祷が夜毎に凄みを増して行き一種のカタストロフィにまで達してしまう。驚天動地の弾け具合。(c…