男の痰壺

映画の感想中心です

真田風雲録

★★★ 2020年7月4日(土) 新世界東映

f:id:kenironkun:20200704204715j:plain

大真面目すぎる情の表出が身上の加藤泰としては、このキッチュなオフビート感は異形といっていいだろう。

で、それが上手くいってるかっていうと、どーもなんだかなーです。

ミッキー・カーチスがギターを持って登場する。キタキターと身構えるが寸止めレベル。その後、ミュージカルっぽく弾けそうな局面が尽く弾け損なってます。

 

まあ、徳川・豊臣の覇権争いの最川下で、振り回されて戦わされる農民のそのまた下の下忍たち。白戸三平の無常感にも通じる諦念と苛立ちは、あからさまに当時の学生運動に擬えられる。意図はいいが生乾き感は否めません。

 

60年代の日本の撮影所システムが徐々に陰りを帯びはじめるなかで、東映というシステム内でアナーキーな胎動を感じさせたのが加藤泰であったことに意外感がありました。

それは、東宝、日活でプログラムピクチャーを量産しながら枠内で滾る想いを叩き付けた喜八や清順の仕事と同期してるように思えます。

各々がその後に内的想いを純化させた作風へと凝固していくのも同じであります。

そういう映画史的な感興をおぼえました。

おもひでのしずく(2006年3月17日 (金))

※おもひでのしずく:以前書いたYahoo日記の再掲載です。

 

言語矯正ヤクザ

f:id:kenironkun:20200704203919j:plain

「兄ちゃん、それくれ」
「はい、こちら牛カレー丼でよろしかったでしょうか」
「なんやねん」
「は…」
「なんやねんちゅうとんじゃ」
「あ、あの…」
「かったって何やねん」
「…」
「何で過去形やねんちゅうとんじゃ」
「…」
「よろしいですか、でええんちゃうんか」
「…」
「言い直せ」
「…よろしいですか」
「最初からそう言わんかいボケ、殺すぞ」
「…」
「他のお客さんにも、そう言えよ、聞いとるからな」
「…はい」

「おう、うまかったで兄ちゃん、勘定」
「ありがとうございます」
「ほれ」
「1,000円の方からお預かりします…お返しの方…」
「おい、何て言った今」
「えっ…」
「何て言ったかっちゅうとんねん」
「…」
「しばき倒して、しまいに埋めたろか」
「…」
「方って、どっちの方や、えっ」
「…」
「西か東か」
「…」
「はよ言うたらんかい、眠ならんうちに」
「あの…」
「どっちや」
「あの…」
「おう」
「…あっち」
「…おもろいなあ、ほんまおもろいわ…覚悟しいな」

男は店員をその場で射殺すると、姿を消した。
明日は君のバイトする店に現れるかもしれない。

桐島、部活やめるってよ

★★★★ 2012年8月17日(金) MOVIXあまがさき1

f:id:kenironkun:20200704203235j:plain

 部活組と帰宅組と間で揺れ動く者の青春の悶々という超ミニマム命題が、素晴らしくシュアな技術と技法で解題されそうになるが、そういう閉じた空間を破り外世界を窺うにオタクどものゾンビごっこを持ち出した時点で退く。そんなもん屁のつっぱりにもならない。(cinemascape)

愛と喝采の日々

★★★ 1978年8月29日(火) 大毎地下劇場

f:id:kenironkun:20200704202737j:plain

バリシニコフとブラウンという若い2人のバレエシーンの本物の前にベテラン女優の肝心のドラマが霞んでしまう。凌駕できるような圧倒のドラマトゥルギーが不足してるから。岐路での選択への屈託が女同士のつかみ合い喧嘩で解消されるなら高が知れる。(cinemascape)

一度も撃ってません

★★★★ 2020年7月3日(金) 大阪ステーションシティシネマ10

f:id:kenironkun:20200704201936j:plain

結果、芳雄の遺作を撮っちまった阪本順治が、なら蓮司のもと思ったかどうか知らんけど、老人同窓会と化した出演者の顔触れもゲンナリであるし、阪本の最近のフィルモグラフィもてんでしっくりこない。見るの止めよかと思ったが、予想に反してタイトに締まった好編だった。見て良かった。

 

ハードボイルド親爺が、グラサン外して煙草を置いたら、その実ありゃまあレレレのレーという緩いコメディの予想は、冒頭の真正殺しのシーンで良い意味で裏切られた。

そして、映画はマジとシャレの境界線上を絶妙のバランスを保ちつつ、それでも逸脱の危惧を孕みながら擦り抜けていく。

丸山昇一としても久々の虚実ない混ぜワールドで、「遊戯」シリーズより寧ろ「ヨコハマBJブルース」の世界観を思わせる。

 

老人化した出演者陣、わけてもかおりが痛痛しかったらどしよーの懸念があったが、大丈夫だった。まだイケると思った。

 

亭主の裏の顔とそれに疑念を持つ妻。

ありがち設定なのだが、この映画、そこだけはマジ路線っぼくて針で心臓つつかれる気分だった。勘弁してほしいと思った。

おもひでのしずく (2006年3月13日 (月))

※おもひでのしずく:以前書いたYahoo日記の再掲載です。

 

駅の喫煙コーナーにて

f:id:kenironkun:20200701210837j:plain

月曜の朝の7時。
駅の喫煙コーナー
煙草を吸う俺の周りには10人くらいの男女。
そこに、ピンクのダウンジャケットに黒のジーンズの若い女性が1人来た。
俺の斜め前で彼女も煙草を吸い始める。

俺はぼんやりと思索を巡らす。
今日1日のこと。
来週のこと。
来月のこと。
半年後のこと。
パズルのように想定される事象を組み合わせ解きほぐし思念をめぐらす。
5月末で出向を解かれるのだ。
そして、会社は解体される。
やっととのほっとする思いと同時に混乱と悲哀を想像すると気が重い。

ふと気がつくと、1人のおっさんが女性に近づいてきた。
そして、いきなり女性の腰に手を触れなでた。
俺の脳内に緊張が走る。
おっさんは言った。
「姉ちゃん、シャツ出てるで」

…おっさん、それはわざと出しとるんや
俺は腰をなでられた女性の表情を注視する。
緊張と恐怖と怒りと侮蔑…
しかし、俺が予想したそういう感情を女性の表情の中に見出せなかった。

彼女は笑っていた。
軽やかすぎるくらいに。

霧が晴れるように気持ちが軽くなった。

沈黙の宿命 TRUE JUSTICE PART1

★★★★ 2012年8月11日(土) トビタシネマ

f:id:kenironkun:20200701205731j:plain

瑣末なエピソードの多くが素晴らしい中位安定を維持して、その絡み合うタペストリーが調和的な刺激を伴いクローズされる。サラ・リンドを筆頭に若手衆の懸命さも良く、それを胡散臭いセガールが絶妙な支配で仕切る様は或る種の理想郷かも知れない。(cinemascape)