男の痰壺

映画の感想中心です

2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

新しき世界

★★★★★ 2014年2月22日(土) シネリーブル梅田1 既視感のある設定とも言えるのだが、豊穣で魅力ある細部の連鎖と組み合わせの妙が否応なくアドレナリンをかきたてる。一筋縄でいかぬキャラもてんこ盛りだが特筆のジョンミンの大友イズムと大陸の物乞い。そし…

地上より永遠に

★★★ 1981年10月6日(火) 毎日文化ホール 反骨野郎クリフトと権謀術数のランカスター…本来は対立項であるべき2人が並列配置されるため盛り上がりきれずにスカされる。特にランカスター扮する男は或る意味時代を先取りしたキャラだっただけに残念だ。(cinemasc…

キングダム

★★★★ 2019年5月24日(金) 大阪ステーションシティシネマ4 原作未読です。 正直、見る気はぜんぜんなかった。 だって、漫画ならともかく、日本人が日本語で演じる中国史にのっとった話なんて胡散臭い。 たとえば、日本の戦国時代を中国人が中国語で演じて映…

ダラス・バイヤーズ・クラブ

★★★ 2014年2月22日(土) テアトル梅田1 体制に抗する義侠心とか共闘者との心底からの親和とかは無い。そういう意味で実モデルに準拠し抑制の効いたクールネスで統御されてるが、だからどうしたとも思う。見たいのはドラッグラグへの今更の告発なぞでなくも…

シーウルフ

★★ 1981年11月6日(金) 伊丹ローズ劇場 どういうわけか忘れた頃に少しだけ狂い咲いたかのようなマクラグレンの凡企画に最早死に体の老俳優を掻き集め、『007』ムーアで色を添えてみたが、案の定、顔合わせの割には全然面白くないという当たり前の結果にな…

スケート・キッチン

★★★★★ 2019年5月13日(月) 大阪ステーションシティシネマ7 女子のスポーツものといえば、昨年、「バトル・オブ・セクシーズ」や「アイ・トーニャ」といった実在のスポーツ選手を描いた作品があって、どちらも力作であったが、これは、そういった流れに与し…

ラッシュ プライドと友情

★★★ 2014年3月5日(水) MOVIXあまがさき1 普通に見えて奇想なアングルを繰り出すハワード演出に調和するダークな深度のマントルの撮影が絶品で、それがクライマックスの豪雨の富士スピードウェイへと結実する展開に否応なく萌えるのだが…。実話の枷に…

配達されない三通の手紙

★★★★ 1981年10月3日(土) 伊丹ローズ劇場 パーティだワインだと翻案物特有のバタ臭い気恥ずかしさは否めないが、それにしても新藤の巧い脚色もあって滅法面白い。もちろん原作の力もあるのだろうが。出演者の中では松坂慶子が正に油が乗ってる感じ。彼女のシ…

初恋 お父さん、チビがいなくなりました

★★★ 2019年5月18日(土) 梅田ブルク7シアター2 10年前だったら見ないタイプの映画なのだが、歳も歳だし。 ってことなんでしょう。 予告篇で老夫婦が歩いていく後姿の侘び寂びが、おのれの先行きにダブってしまう。 冒頭からの幾つかのエピソードで夫の…

エレニの旅

★★★★★ 2014年1月11日(土) 梅田ブルク7シアター5 最初の2ショットで巨大な流転のクロニクルを語ろうとする圧倒的気概に呑まれる。自我に立脚した生き方を訴求するエレニを、しかしギリシャ近代史は容赦なく苛むわけだが、その個人史への歴史の侵食は豊穣な…

蔵の中

★★ 1981年9月28日(月) 高島屋ホール 普通の人が変態だったら面白いが変態が変態してもつまらん。近親相姦や盗視だけでも充分倒錯的であるのに、配役に奇手を凝らし過ぎて相殺し合った感もある。技法や趣向に溺れすぎるから、もったいぶってるだけで全然面白…

深夜の告白

★★★★ 2019年5月19日(日) プラネットスタジオプラス1 何かと逸話の多いワイルダーの初期作で「ファムファタールの原型とも言われてるらしい。 しかし、1時間半という尺の為に駆け足めいた点は否めないのだ。 保険屋の主人公は資産家の家を自動車保険の更…

ラム・ダイアリー

★★★★ 2014年3月15日(土) トビタシネマ 泥酔いも壊れるまではいかぬ匙加減が中米のダラーンとした風土と相まり半端で良い。高等遊民の田舎日記の朦朧とした無為な日々も後から思えば意味を為す的刹那な叙情。無駄が廃された性急な時代に復古されたコークの…

突然、嵐のように

★★★★ 1977年5月1日(日) ダイニチ伊丹 郷は一貫してまんまアホで無軌道な若者であり、秋吉も健気で真面目だが堕ちてしまう女そのもの、そういう直線的なキャラを弾ける乗りで一気に見せ切る勢い。しかも急転直下のラストの再反転が衝撃的。それが『祭りの準備…

ダンボ

★★★★ 2019年5月9日(木) 大阪ステーションシティシネマ6 ダンボにしようかピカチュウにしようかルンルンルン♪ と、還暦間近の親父の血が騒ぐのであった。 ってのは、嘘に決まってるんで、まあ、言わば究極の選択で見たのであったが…。 意外にイケるかも、…

それでも夜は明ける

★★★★ 2014年3月9日(日) 大阪ステーションシティシネマ1 殊更にスキャンダラスなわけでもない。虐げる側の者たちを概ね葛藤して心を病む者として描いた点が新しくもあり性善説に立ち過ぎる気もする。その胡散臭さを対象を見つめる演出の腰の据わりの真摯が…

スケバンマフィア 恥辱

★★ 1981年10月14日(水) 関西学院大学学生会館大ホール ハードボイルドとは文字通り乾いているべきであって、こうも情緒過多に陰々滅々と濡れているのではハジけるもんもハジけない。快作に成り得べき単純な骨格も尾っぽを引きずった勘違いな入れ込みで台無し…

12か月の未来図

★★★★★ 2019年5月6日(月) テアトル梅田2 1人の教師の成功譚のような体裁をとっているので、現実はそんなに甘くねえよの声も聞こえそうだ。 が、それでもいいんじゃないかと思えるのだ。 描かれたのは膨大な移民と、それがもたらした格差。 エリート校のベ…

ほとりの朔子

★★★★★ 2014年2月23日(日) シネヌーヴォ 受験少女の感傷バカンスに片寄するほど暇でなく、擬似ロメールめいた寂れた浜辺の無為な会話も左程成功してるとも思えぬのだが、仮初の言葉に隠された本音や余裕の下の切実や衝動が静かに立ち昇り健全な肢体が闇と対…

ドクトル・ジバゴ

★★★ 1981年10月3日(土) OS劇場 所詮はリーンが肩入れもできぬ背景としてのロシア革命だし、不倫愛の背徳性も直視せぬので、両者が乖離し強度が無い。個々のシークェンスの厚みは大層なものだが、スペクタキュラーな要素があらずもがなに思える。それでも終…

地下室のメロディー

★★★ 2019年5月12日(日) プラネットスタジオプラス1 冒頭、刑務所を出所したジャン・ギャバンが列車に乗ると、まわりの乗客がみんなバカンスの話をしている。 黙って聞いていたギャバンがひとりごつ。 「うーむ…バカンス旅行が大はやりらしい」 自宅のある…

ドン・ジョン

★★★ 2014年3月15日(土) テアトル梅田2 イケイケのしんどい女よりくたびれかけてても気のおけない女というコンセプトはレヴィットごとき若造に言われたくない。シーンの場を限定し反復する話法は原理主義的主人公を反映する為としても世界を矮小化する。家…

ニューヨーク1997

★★★★ 1981年10月5日(月) 伊丹グリーン劇場 こういうグッドバッドガイを持ち出し今更と思われることを恐れてはいけなく、決めたら迷ってはいけない。ヘタウマとかパロディとか小賢しい概念とは無縁であるからこそチンケであっても熱い。カート・ラッセル生涯…

ハイ・ライフ

★★ 2019年5月6日(月) シネリーブル梅田3 別に厳格なものを映画に希求するつもりはない。 それに抗じるものがあれば。 冒頭、宇宙船外で修理作業する男が手を滑らせ部品を落とす。 …落とすって無重力なのに落ちないやろ。 でも。それはどんどん落ちていく…

愛の渦

★★★★ 2014年3月15日(土) テアトル梅田1 一応は醒めた社交性が支配する場に於いて乱交ではない相対の交合いが秩序を保たれつつ繰り広げられる点に於いてマニュアルに支配された今を撃っている。宴のあとの冷めた朝の空気が良い。その中で唯一何かを穿とう…

わが命つきるとも

★★★★ 1981年10月6日(火) 毎日文化ホール 命を賭しても貫く信念…なぞと決して声高に叫ぶわけでもない。家族と平穏を愛した男の編年記。厚みある美術も素晴らしいが特筆は役者とカメラ。高価な衣装で泥濘に降り立つロバート・ショウの初出シーンはとりわけ印象…

ザ・フォーリナー 復讐者

★★★ 2019年5月5日(日) MOVIXあまがさき1 ジャッキーの新機軸みたいな言い方をどっかで見たが、それほど何がしかが変わったようにも見えない。 「老化」であるが、そもそも「ベスト・キッド」がエポックで、ジャッキーが脇に回ったってのが革命的であった…

家族の灯り

★★★★★ 2014年3月15日(日) シネリーブル梅田3 真面目なドライヤーやブレッソンを装いつつ舌を出すオリヴェイラ。凪の水面の湖底では悪意と洒落っ気が絶妙に混在する。老妻の偏狭を撃ち、善人ぶった老父の妄執を叩きのめす呵責の無さは怖いもの知らず。銅版…

犯された白衣

★★ 1981年10月17日(土) 新世界東宝敷島 内向し自己完結するテロリズムはオナニーに過ぎない。足立が投げたテーゼは若松と唐の商業主義的妥協に媒介され半端な形で現出してしまったのではなかろうか。画力はあるが連続射殺魔の概念は抽象から具象に変換され安…

幸福なラザロ

★★★★★ 2019年5月6日(月) シネリーブル梅田2 アリーチェ・ロルヴァケルの前作の「夏をゆく人々」の感想を見返してみると、シネフィル的と書いてある。 エリセ、タヴィアーニ、アンゲロプロス、アントニオーニの名前を挙げてる。 で、今作だが、前段はオル…