男の痰壺

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初恋 お父さん、チビがいなくなりました

★★★ 2019年5月18日(土) 梅田ブルク7シアター2
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10年前だったら見ないタイプの映画なのだが、歳も歳だし。
ってことなんでしょう。
予告篇で老夫婦が歩いていく後姿の侘び寂びが、おのれの先行きにダブってしまう。
 
冒頭からの幾つかのエピソードで夫の妻に対するふるまいが描かれる。
・街中で妻から手を振られても無視。
・食事中、相談事を妻から言われても無視して食ったらさっさと席を立つ。
・外から帰ってきたら妻に靴下を脱がせコートは脱ぎっぱなしで床に放置。
まあ、3番目なんかは、今の時代、さすがにこんな奴はいねえだろうと思うのだが、2番目は思い当たる。
だいたい何かをしてるときに限って声をかけてきて、「5分だけいい?」とか言いながら10分たっても20分たっても本題に入らない。そのうち頭がマヒして女房の話は頭を素通りする。
であるから、妻の話をちゃんと聞かないってのはそうなのだ。
っていうか、男はたいがい思い当たるんじゃないか?
 
以前、上沼恵美子がテレビで言っているのを聞いてなるほどと思った。
男は結論を出したがるが女は結論を出さないのを好む。
そして、会話は無限ループしながら徐々にずれていって最初とはまったく違う内容になっていくのだと。
そりゃあ、男と女の会話が成立するわけないんですわ。
 
って話は限りなく映画とずれていくんですが。
いい映画だとは思う。
でも、けっきょく話さない夫の真意がわかって妻もうれぴーって話では単純すぎやせんだろか。
 
2人の若いころのエピソードがモノクロで描かれる。
そういうのをやらなければいいのにと思ってたら案の定でてきました。
しかし、これがないとラストの展開の根拠がないのだからしかたないでしょう。
 
倍賞千恵子は数年前に「小さいおうち」で久々に見たとき劣化に痛々しさをおぼえたのであったが、今回、その老化ってのに内実がキャッチアップしてきた感じがして自然体ですごく良かった。
 
理を好む男と情を優先する女は所詮は相容れぬ生き物であって、であるから無理してでも「好っきゃねん」の一言くらい言いなさいよって言われんでも分かっとーわって帰結だが、それでも2人の老優の老いを噛みしめるかのような佇まいは胸を打つ。特に賠償。(cinemascape)