男の痰壺

映画の感想中心です

映画1985

愛と哀しみの果て

★★★ 2017年3月18日(土) 大阪ステーションシティシネマ8 思い込み女の自己愛にまみれた一代記。 …と切って捨ててもいい話なのだが、まあ、しかし、人のことを言えたもんでもない。 俺たちだって皆、ええかっこしたいし、自分はかわいい。 例えば、スカーレ…

ゴダールの探偵

★★★ 2023年7月13日(木) シネヌーヴォ 探偵つーても、ゴダールですからその手のジャンル映画の醍醐味があるわけもない。冒頭、向かいのアパートからホテルの入り口を盗撮するシーンでまさかと思ったが、見事に空振りだった。 ホテルを舞台に4組の男と女が…

男はつらいよ 寅次郎恋愛塾

★★ 1996年9月7日(土) テアトル徳山Ⅲ 山田洋次の脳内思考で形成された現代的モテナイ君平田満が恐ろしく共感を拒否するキャラクターで、それに物語を乗っけようとした終盤の追っかけは無惨極まりない。加えて樋口はシリーズには全く馴染まない感じ。(cinemasc…

キルソドム

★★ 1994年7月10日(日) ホクテンザ1 血の繋がりとは何かを問いかける結末のシビアさは非常に重くドラマトゥルギーを内包してるとしても、それを映画として観客に訴求するにはグォンテクの愚直が裏目に出る。しんどい物語を語るに記録フィルムとのモンタージ…

火まつり

★★★★★ 2022年4月25日(月) シネヌーヴォ 原作・脚本/中上健次、撮影/田村正毅、美術/木村威夫、音楽/武満徹。とまあ、この布陣を見ただけで柳町がこの映画にかけた裂帛の気合いが伺える。そして、それは結果に結びついてると思います。個人的には「さら…

男はつらいよ 柴又より愛をこめて

★★★ 1993年6月6日(日) トビタ東映 低迷期には何をやっても上手くいかないという悲哀感を自虐にまで転化し得たら新たな地平が開けたかもしれないのだが、栗原小巻では何を付加し得ようもない。あけみこと美保純ちゃんをこそ最前線に駆り出すべきであった。(ci…

団地妻 肉体地獄

★★★ 2003年5月14日(水) 東梅田日活 正味AVに毛のはえた程度の代物としか言えず、定石のストーリーを飽きもせず繰り返すだけにしても、数多ある「映画」の存在意義を考えるに、これはこれで或る意味役割をまっとうしているとは思う。見てる間ずっと勃ってた…

友よ、静かに瞑れ

★★★★ 1993年10月30日(土) 第七藝術劇場 日本映画には珍しい本物のハードボイルドの臭い。原作通りの北日本では多分キザが表に立ちすぎてしんどかったろうが、緩い沖縄のムードが中和剤となり又そこはかな神話味も付与。出色な出来。脇に回ると最強な原田・倍…

夜叉

★★★★ 1993年10月31日(日) 日劇会館 脛に傷持つ者達が流れて辿り着いた裏日本。今更のド演歌設定を愚直に衒い無く描く降旗節。ときには恥ずかしく鬱陶しいが、ここではプラスに作用。受けの高倉を蹂躙する田中裕子の強烈なエロスとたけしの紙一重な狂気。敦賀…

冬の旅

★★★★ 1992年7月5日(日) みなみ会館 出生由来やよくあるトラウマ等の帰納法的帰結ではなく、唯ひたすらに事象を演繹的に描くことにより自ずと浮かび上がる少女の強烈な自我と心の底まで冷え込みそうな孤独。一種の絶対映画の域に達している媚びの無さだと思う…

シーズ・ガッタ・ハヴ・イット

★ 1992年8月8日(土) 高槻セントラル こういう自己中女を半ば肯定的に描けるスパイク・リーってのは余程包容力のある良い男なんだろうってのはわかっても、しかし俺は勝手にせえやとしか思えない狭量な野郎なのである。多彩な描方に関しても多分に出たとこ勝…

早春物語

★★★ 1985年9月21日(土) 友楽スカラ座 淡色のイメージで統一された手堅いだけが取り柄の映画と言ってしまうと身も蓋も無いが澤井演出は何のハッタリもなく悠然としている。だからって何なんだと言ってしまうとそれまでだがなかなかできることではない。思春期…

暴走機関車

★★★★ 1991年3月3日(日) トビタシネマ 異常な刑務所長に抗するにヴォイトが切れて微妙に逸脱するあたりに通常ではないドラマトゥルギーが発生する。極寒のシベリアを暴走する重機関車上の望遠でとらえられた人影。その剥き身な生々しさだけで興奮しちまう。妥…

童年往事 時の流れ

★★★ 1991年5月11日(土) 毎日文化ホール 少年時代ものというジャンル訴求力に侯孝賢の作家性が未だ拮抗していない感じだ。編年体の叙事性は後の『非情城市』で、叙情性は『恋恋風塵』で透徹した深みに至る。郷愁は堪らなく切ない。ただし思いの丈が過ぎて年代…

未来世紀ブラジル

★★ 1991年6月1日(土) みなみ会館 管理社会の風刺だとするなら直球でやればいい。鼻について仕方ない気障っぽい意匠は不要だし一歩譲っても統一感に欠ける。西洋的なものにオリエンタリズムと南米風味をトッピングすればカフカにでもなれると思ってるらしい。…

桑の葉

★★★★ 1991年8月25日(日) 日劇シネマ 初期の今村やイタリアンネオリアリズモのような土着的で図太いユーモア。イ・ミスクの明るさが全く素晴らしく被虐は裏返されて泰然自若の境地に至る。終盤の種明かしも物語の深度を深めており、儒教観の頸木から解かれた…

なまいきシャルロット

★★★ 1991年8月3日(土) アクア文化ホール 思春期の女の子の等身大の日常の憧れや反抗や反発や発見をサラリと描く。しかし、サラリとしすぎて余り心に響かない。シャルロットに感情移入する術を持たざる者には、どうということのない映画にしかならない。(cine…

ZOO

★ 1990年9月16日(日) シネマヴェリテ梅田 一片のアナーキズムでもあれば生理的に合わないもんでも何かが共振し得るだろう。しかし、現実から乖離した独自世界で完結する理解不能な物語は余りに閉塞的で退廃的。過剰な手法や音楽のみが自走しても空虚でしかな…

雪の断章 情熱

★★★ 1990年8月11日(土) みなみ会館 新派の舞台劇みたいな大時代話を今更やってられないとの相米流開き直りがナンセンスな冒頭の18シーン1カットなのだろうか。にしては本篇での少女の捉え方は得意のモラトリアム心象的イメージを持ち込むワンパターン。嫌…

マイライフ・アズ・ア・ドッグ

★★★★ 1989年11月19日(日) セントラル劇場 不幸な少年の物語は映画の世界では山ほどあるのだが、これは彼の独白台詞が随所に出てきて幼気なのに必死で自分を鼓舞するのだ。そこが泣かせる。多くの変人が彼の気を紛らせ救うのだが、とりわけボーイッシュな女の…

山の焚火

★★★ 1988年4月10日(日) 吹田映劇 何も起こらないのではなく起こってしまう点が純度を低める。閉じた世界が開かれるかに見えた矢先の終焉では物語の序章のみを取り上げ希釈した印象。どうカメラを置いてもそれなりに撮れてしまう景観世界なのだが、にしては余…

マリリンとアインシュタイン

★★★★ 1987年2月2日(月) サンケイホール こうあって欲しかったという異世界から見た夢幻のアメリカン・フィフティーズ。殊更に何が語られるでもない。クリアでシャープな構成と映像の威力を駆使したローグの憧憬があるだけだ。わけてもカーティスのマッカシー…

バック・トゥ・ザ・フューチャー

★★★ 1986年1月2日(木) 北野劇場 万人向けに毒要素を希釈したジュブナイルだとしても陰のないのっぺり感が拭いがたい。マーケティングのマニュアルにアイデンティティは蹂躙された。スーパーカーで時間を遡上し町内会の範囲で両親の為に大活躍。内向きのベク…

マッドマックス サンダードーム

★★★ 1986年1月19日(日) 大毎地下劇場 かの『SW』シリーズが第3作にしてイォークを出して大衆に迎合したような腑抜けぶりが本作にも感じられる。悪も善も知らぬ存ぜずのミーイズムこそがマックスの本懐であるはずなのに、凡ヒーローに成り下がった哀しさ。…

恋文

★★★★ 1986年2月8日(土) 観光会館地下劇場 この物語に全面的な共感を覚える訳ではないが、ある局面に対しての男と女の心理的葛藤を技巧を凝らした精緻さでしみじみと描き切ったものとして、ターニングポイントに至った後期神代の代表作と言えるのではないだろ…

バタリアン

★★★ 1986年2月11日(火) 友楽会館大劇場 御大オバノンだけあって各種ゾンビの造形などクオリティは高いし、恐怖を笑いに転化するときの外した境界の引き方も絶妙。しかし、バカなハイスクールの連中ばかり出てきてで世界が偏狭なので拡散の戦慄は限定的。為に…

コマンドー

★★ 1986年2月11日(火) 友楽会館大劇場 キャメロンにせよマクティアナンにせよシュワが異形であることに意識的であるのに対し、レスターはと言えば、そーんなこと全然考えてる風でもなく、かと言ってアクション演出が斬新なわけでもない。前後の比較から気の…

イヤー・オブ・ザ・ドラゴン

★★★ 1986年5月11日(日) 観光会館地下劇場 人種偏見によるトラウマにも仁義なき成り上がり根性にも肩入れは出来ないので刑事もマフィアも実に中途半端な描き方。東西2大ナルシスト男優の競演が輪をかけて表面ずらに堕させている。コマーシャルに転向したチミ…

L.A.大捜査線 狼たちの街

★★★ 1986年11月2日(日) 友楽会館大劇場 やっちまったの連続が『フレンチ・コネクション』リフレインなのだが、主演俳優にハックマン程の狂気と愛嬌が無く捜査の行き過ぎに必然を付与できなかった。大がかりなチェイスが見せる程度。ミューラーの撮影もシステ…

コーラスライン

★★★ 1986年12月7日(日) 梅田ロキシー 下手に切り刻んだカットバックなんぞを使わない抑制感は買えるが、それなりにエッジの効いた連中が集まってこの程度のボヤけたもんにしかならないのはやはりアッテンボローの感覚が老衰していたからだろう。ショウビズに…