男の痰壺

映画の感想中心です

映画1969

やさしい女

★★★★ 2015年6月9日(火) シネリーブル梅田1 女ってのはわけわからんという詠嘆を醒めた諦観で語るのと、現在進行形のパリの景観が関係性の怜悧を抱擁するかのような柔らかな情緒を帯びる点で『白夜』と好対を為す。しかも結局の底意は不寛容であり、そこは…

暗殺のオペラ

★★★★ 1980年12月27日(土) 三越劇場 サスペンスフルに謎が解明されるわけでもないが、ストラーロによる緩やかな移動と匂い立つ緑萌えるイタリアの田舎町の環境描写が、じわじわ絡め取られるかのような白昼の夢幻とでも言うべき雰囲気を醸し出している。そして…

野性の少年

★★★★★ 2017年9月18日(月) プラネットスタジオプラス1 産まれてこの方、社会的関係性を断絶された少年の関係性を回復させる試みという点で「奇跡の人」と相似。 なのだが、スパルタのサリバンに対しイタール博士のやり方は冷静で実直で慈愛にあふれる。 い…

風林火山

★★ 1978年5月28日(日) 伊丹ローズ劇場 何もデヴィド・リーンを期待したわけでもないが、大河感が無さすぎる。歴史の陰にスポットを当てる井上原作の滋味を三船が仕切って台無し。土台解釈が違いすぎる。謙信裕次郎登場に至っては最早哀しく笑うしかない。(ci…

真夜中のカーボーイ

★★★★★ 1978年6月21日(日) ビック映劇 1980年5月21日(水) 関西学院大学学生会館大ホール 上辺にトライし打ち砕かれても受け入れ場所はある。そういう懐の深さを宿す60年代末NYアンダーグランドの混沌。定員制故に退場者は出るにせよ救済システムが一応機…

夜の儀式

★★★★ 1978年10月8(日) SABホール 土壇場での攻守の逆転というモチーフは『魔術師』から10年を経てTVという枷の中で凝縮された。「様式」と「室内」という基調に刹那的に差し込まれる「リアリズム」と「屋外」がニクヴィストの撮影で煌めく。それにし…

女王陛下の007

★★ 1978年10月19日(木) 伊丹グリーン劇場 エモーションは隠し味としてそこはかとなく臭っていればいいのに、隠し味が前面に出れば料理はぶち壊される。シリーズの転換期に主役と映画の色調を同時に変えてしまったのが変化を好まないファン心理を逆撫でした。…

ワイルドバンチ

★★★★ 1976年12月21日(日) ビック映劇 1998年12月19日(土) パルシネマしんこうえん 砂塵と血糊と汗と唾液と酒と精液にまみれた西部にモンタージュされた高速度撮影による野郎どもの連帯の機微と愛惜。静と動を頻繁に往還する構成は螺旋状に濃度を高め破壊的ク…

イージー・ライダー

★★★★ 1976年9月5日(日) 伊丹グリーン劇場 「俺たちゃあ束縛されないぜ!」と時計を投げ捨てたキャプテン・アメリカが渇望し広大な大地をひたすらバイクでぶっ飛ばした「自由」は徴兵制等のリアルな束縛からの解放願望と思えば切ない。自由が横溢する世界で…

影の軍隊

★★★ 1998年11月7日(土) シネヌーヴォ 淡々と進む話の流れを断ち切ってでもいいから得意の陶酔型描写を見せて欲しかった。ムーディな叙情描写を旨とする人が見せた転向とも言える叙事的語り口を評価する向きがあったにせよ俺には平板としか感じられなかった。…

薔薇の葬列

★★★ 1999年8月1日(日) シネヌーヴォ梅田 ギリシャ悲劇を基盤に置いたものの、パッションの表出は文字の挿入や時間の解体などゴダール的手法に囚われる余り多分におざなりである。あるのは60年代末のゲイカルチャーの記録価値であり、ピーターのスター性よ…

緋牡丹博徒 花札勝負

★★★★ 1995年2月19日(日) 新世界東映 良い意味で情を垂れ流すのが仁侠映画の約束事としそれを如何に厳格な様式をもって修飾するかという世界観の中では、これは同じ加藤の『明治侠客伝 三代目襲名』と並び双璧。好き嫌いはともかくこの峻厳さの前には納得し平…

嵐の勇者たち

★★★★ 2002年2月14日(木) トビタ東映 くだらないと言えばこれほどくだらない脚本もないのだろうし、一種のお宝映画的に見ようとしても、そこまで振れ切ってないのだが、逆に言えば、それをここまで見せ切ってしまう演出力とキラ星の如きスターのパワーには恐…

フェリーニ 監督ノート

★★★ 1994年7月16日(土) ACTシネマテーク 撮られることのなかったチェロ奏者の話の大オープンセットが本当に勿体無く惜しいと思う。後の『道化師』・『ローマ』・『インテルビスタ』などに継承されるフェリーニ得意の似非ドキュメンタリー初作であり『サテ…

悪名一番勝負

★★★ 2001年4月5 日(金) トビタ東映 これはマキノを監督に招聘したからだろが、丸っきり『侠客伝』か『残侠伝』の世界で健さんを勝新に置き換えただけだ。それはそれで味わいがあるが、一方で大映が自社の看板を他社のに塗り替えられて已む無しといった見栄を…

盲獣

★★★★ 1993年4月11日(日) 高槻セントラル 変態世界を描くに、抑制があれば歯がゆいし露骨では痛い。微妙な距離感覚。セーブするものがあればこそ打破する越境感覚が生じるのであり、皆逝ってるのに生真面目でもある。これを見て爛熟の平成の世に乱歩を映画化…

続・男はつらいよ

★★★ 1993年5月5日(水) 日劇会館 シリーズ中でも水準高く、ふられシーンも痛切なのだが、江戸っ子の寅のお袋に浪花言葉の蝶々ってのが違和感を禁じ得ない。夢想の世界の寅さんに現実のシビアさを割り込ませる山田流はテイストの範囲でよく、これは本質に関与…

昭和残俠伝 人斬り唐獅子

★★★ 1993年7月11日(日) 新世界東映 ファナティックな佐伯と対極的なまろみのマキノ作の狭間で得てして個性が埋没しそうな山下耕作作ではあるが、定番パターンに乗っ取って面白いことは面白い。しかし、藤純子の抜け落ちた穴は小山明子では補い切れないのも事…

天狗党

★★★ 2006年10月21日(土) 日劇会館 カラー映画に於ける表現主義的ライティングの追求かとも思えるような幼少時にTV時代劇か日本史授業で知ったか最早定かでさえもない「百叩きの刑」を見せることに費やした気合いは僅かながらも期待させた。しかし、後は…

鬼の棲む館

★★★ 2007年1月20日(土) 日劇会館 骨格は単純で良いにしても、淫猥と高潔の対決は余りに何の捻りもなく、しかも、新珠は吹き替えヌードで興を削ぎ佐藤は腹に一物有り気で胡散臭い。高峰をもっと掘り下げれば違う目もあったのではと思う。宮川カメラは唯一パ…

赤毛

★★★ 1991年5月19日(日) 日劇シネマ 一途な純情キャラというのが、この頃の三船ではもうこそばゆい。岡本一家総出の脇芸の競い合いが楽しく、何とかそれを補完しているが、終盤では、凡庸な展開が全てを飲み込み、何もかもが哀しいまでにしぼんでしまった。(c…

女の警察

★★★ 2007年6月9日(土) 日劇会館 「商品には手をつけない」とか言いながら結構手をつける旭の場当たりさが心地良い。モラリズムとニヒリズムの絶妙の均衡の上の立ち位置とそれを当たり前とする自信に憧れる。政官の汚濁に切り込む本筋は固有名詞を並べて訳…

フェリーニ サテリコン日誌

★★ 1991年6月23日(日) みなみ会館 フェリーニに対する無邪気な憧憬があって、奇矯で馬鹿でかいセットが幾つもあって、珍奇な扮装の人々があちこちに居る。そこでカメラを回せば何某かのものになるのであって、『サテリコン』という巨大な怪物を解き明かそう…

ざくろの色

★★★ 1991年9月22日(日) みなみ会館 タルコフスキーに捧ぐと言うからには後継者として彼を認知したということなのだろうが、研ぎ澄まされたものではなくスラブ的素朴さと宗教臭濃厚なイメージの連続に戸惑った。オムニバスなイメージ集なので、とらえ易い筈だ…

男はつらいよ

★★★ 1982年5月21日(金) 豊中松竹 破壊的で荒ぶれる寅だからこそ失恋の痛みが本当に痛切。それは恋愛に関してプラトニックであることと表裏なのだ。終盤の駅の安食堂での別れに滲み出る兄妹愛がそくそくと心に染み透る。粗相やっちまったら去るのみ。妹はそん…

日本俠客伝 花と龍

★★★ 1990年3月21日(水) 日劇会館 火野の世界が東映任侠映画の世界と親和するのはさも有りなむだしマキノは手馴れた世界を手馴れた役者で破綻無く演出して全く飽きさせない。長大な原作のダイジェスト版の感は拭えないが想外に東宝招聘の星由里子は純子に対し…

新宿泥棒日記

★★ 1990年9月22日(土) みなみ会館 多分に場当たり的であり1個の街の名を冠した巨視的視点での構築からは程遠い。アナーキーたろうとする作者の表層的ゴダール節は真のアナーキズムどころか混沌を映画的に表現するにも至っていない。ラストの騒乱のドキュメ…

アンドレイ・ルブリョフ

★★★★ 2021年6月6日(日) シネヌーヴォ 水や火や超常現象への拘りは未だそんなに際立っていない。これを見て「惑星ソラリス」がタルコフスキーの分岐点だったのだなと改めて思ったし、こういうプレ・タルコフタッチな土着的で政治的な混沌のクロニクルをもっ…

サテリコン

★★★★ 1978年4月9日(日) SABホール 1994年7月16日(土) ACTシネマテーク 今で言うノンポリ青年2人が彷徨うエログロの一大饗宴が繰り広げられる古代ローマの各シーンはフェリーニの集大成とも言うべきスペクタキュラーなイメージ造形で真に圧倒的のひ…

アントニオ・ダス・モルテス

★★★ 1985年12月30日(月) SABホール 意匠や設定は商業主義な定石に準拠しているのだが、そう思って見るとバイオレントもシュールも不足気味で余りにゆったりしたテンポがしんどい。勧善懲悪とは行かぬわだかまりの中行き着くところにカタルシスは無い。原…