男の痰壺

映画の感想中心です

映画1971

喜劇 女は男のふるさとヨ

★★★★ 2015年1月17日(土) トビタ東映 美津子や魔子を巡るエピソードがそれ程に感銘的とも思えぬとっ散らかし的混沌なのだが、或る意味でのラストリゾート新宿藝能社を営々と維持する森繁・メイ子に改めて敬意と羨望を抱く。理想郷に於ける理想の夫婦像を巧…

ゴールキーパーの不安

★★★ 1980年11月2日(日) 関西学院大学第4別館309号室 1982年12月23日(木) 神戸青少年会館研修室 現代人の不安と閉塞と絶望はアントニオーニと同工異曲かもしれないが、遙かに即物的で直載的。風景描写とかに意味を見出そうとするお芸術志向でないぶんヴェ…

白夜

★★★★ 1979年2月18日(日) 大毎地下劇場 1980年5月24日(土) SABホール 余りにもの内向的世界に退く部分もあるが、確固たるポリシーで統一された透明感には微塵も隙が無い。その世界を構築するのは叙事的物語ではなく刹那の叙情なのだ。わけてもセーヌをたゆ…

未来は我らのもの ドイツ革命とリープクネヒト

★ 1978年3月26日(日) SABホール 共産圏にあった東独時代の作品なので教条的革命礼賛と愚直で面白味のない人間描写が鼻につく。しかも、局地的・限定的な内容でドイツ革命についてのある程度の事前学習がないと物語の進捗は理解困難。為にするプロパガンダ…

バンクジャック

★★★ 2015年10月25日(日) プラネットスタジオプラス1 最悪の窮地でも軽やかに笑みを浮かべ続けるベイティとキュートなゴールディが「ルパン三世」の元ネタめいてる。犯行シークェンスはともかく後半の大半を台詞無しで費やす延々たる逃避・追跡行が異様な…

カンタベリー物語

★★ 1978年4月9日(日) SABホール 徹底的に修正が施されたものを見て汚いと思ったが無修正版を見てもそう思いそうな気がする。それがリアルな中世だと言うなら結構だがパゾリーニの願望が多分に入り混じったそれは男色とスカトロの色彩が濃い。となれば艶め…

書を捨てよ町へ出よう

★★★ 1977年8月14日(日) 毎日ホール 全篇にわたりこれでもかと叩きつけ続けられるコンプレックスを起因とした暗渠じみたパワー。60年代の「新しい波」が触れた手を引っ込めた何かを引きずり出して晒すのには前衛の鎧での武装が必要であったのだろう。前にも…

死刑台のメロディ

★★★★ 1977年10月22日(土) ビック映劇 アジ映画かも知れぬが、事実はどうであれ、反共のスケープゴートになった靴屋と魚屋が7年間の裁判を戦い抜いて自由主義の闘士の如き風貌をたたえる様は感動的で、主演2人は文句無く素晴らしい。 (cinemascape) keniron…

バニシング・ポイント

★★★★ 1977年6月19日(日) 伊丹グリーン劇場 1979年10月10日(水) 伊丹ローズ劇場 15時間の時制を解体した暗喩が破滅への疾走だけを執拗且つ強固に反復することにより絶対映画の純度を獲得。その強度が明確なので大過去の陳腐も意味不明の寄り道もどうでもい…

007/ダイヤモンドは永遠に

★★ 1975年8月10日(日) 伊丹グリーン劇場 荒唐無稽に走りすぎて愛想を尽かされ、レーゼンビー起用で更に愛想を尽かされた後の本作。コネリー復帰したが半端な余裕綽々も侘びしく正にシリーズ斜陽の末後感。カースタントとコケティッシュなジル・セント・ジョ…

屋根の上のバイオリン弾き

★★★★★ 1977年4月17日(水) 大毎地下劇場 1977年7月24日(日) 元映 伝統賛歌で開巻した物語だが、娘の結婚の度に選択を強いられるトポルの劇画チックな心理描写。それは概ね近代的。その保守と変革と歓喜と悲嘆がロビンス舞踏と名曲「サンライズ・サンセット」…

ラスト・ショー

★★★★ 1976年5月16日(日) SABホール 1991年10月31日(木) テアトル梅田2 黄昏の田舎町でゆっくりと死んでいく人々。ベトナムは遠く少年達は少年らしく今を受容するだけ。アカデミーのジョンソンとリーチマンも良いが若干の生気を発するエレン・バーステイ…

ミニー&モスコウィッツ

★★★★★ 2024年2月12日(月) プラネットプラスワン 【ネタバレです】 前代未聞の卓袱台返しが呈される。最初は唖然として、次にざけんなと腹が立ち、でも何日かしてカサヴェテスの全てを肯定する包容力に平伏す思いに至った。 例によってしんどい状況が繰り広…

小さな恋のメロディ

★★★★ 1976年12月28日(火) 伊丹グリーン劇場 正直、巻毛の童顔ガキの恋なんてどうでもいいのだが、英下層階級の少年少女の家庭や友人との関係のクールで完璧に自立している点。俺達の憧れはそこにこそあったんじゃなかろうか。そして、それを縁取る音楽と映像…

わらの犬

★★★★ 1976年12月21日(日) ビック映劇 主人公の衝動が暴発へ向かうトリガーは多分に言い訳がましいが、前段の妻を巡る執拗な確執があって違和感を減殺してる。ショットガンでの殺戮からラストまで正にペキンパーの独壇場だが、前半のフラッシュバック多用はく…

ドラゴン怒りの鉄拳

★★★ 1975年3月23日(日) 伊丹グリーン劇場 狂気へ至る男の稚戯めいた変装コスプレと純愛キスが切ない。終盤までは何がどうと言うこともないが、いざ事が始まればオーラに被われた伝説が顕現する。ヌンチャクと回し蹴りのの100年級の耐度。殺陣に関していえ…

ドラゴン危機一発

★★ 1974年11月3日(日) 伊丹グリーン劇場 蹴られて人型の形で壁を突き破っていくさまがギャグではないらしいのが意気消沈させる。全てが安くせこくテキトー。ブルース・リーに後の作品のような抜き差し成らない悲壮感が無く素材に徹して凡庸だ。可愛いだのな…

告白的女優論

★★★★ 2023年8月16日(水) シネヌーヴォ 茉莉子、ルリ子、稲子の女優としての実存と作劇が交錯するような半ドキュメンタルなものを予想してたのだが、完全な劇映画だった。3人の女優はそれぞれ虚構の女優を演じる。演じる役と本人とにどれくらいの連関があ…

傷だらけの挽歌

★★★★★ 11月27日(日) プラネットプラスワン アルドリッチの中でもあまり言及されない作品だし役者陣も地味である。大して期待せずに見たのだが、驚いたことに傑作だった。 ギャング団に拉致された少女が一味の若者と心を通わせるようになる。っていうとスト…

ジャンケン戦争

★★★ 2001年1月9日(火) キリンプラザ大阪 12分間ひたすら続くジャンケンとそれに付随するコント。アドリブでこれだけの長帳場を単一テーゼで遣り切らされる2人の声に出せない苦悶の叫びが聞こえてきた。稚拙な権力風刺の全くしょもない舐めた作品とも言え…

トマトケチャップ皇帝

★★★ 2001年1月9日(火) キリンプラザ大阪 際どいと言うより児童福祉法違反じゃないかという完全に一線を越えてしまってる危うさが、意図したアナーキズムではなく幼児の遊びとほぼ紙一重。だからといって微笑ましいわけでもなく寧ろ禍々しい。深淵を覗かせる…

団地妻 昼下りの情事

★★★ 2002年9月26日(木)~27日(金) 東梅田日活 ロマンポルノの原点というよりテレビの昼メロやサスペンス劇場の原点のような気がした。そういうオーソドックスな王道の風格があるし、日活の底力を感じさせる撮影と美術。何より一見老け顔な白川和子のミニスカ…

さすらいのカウボーイ

★★★★★ 2002年10月16日(水) テアトル梅田2 女は男の愛にすがって生きていけても男は女への愛だけでは生きてはいけず、永久に本質的には解り合えないという自明の理を悟りの境地に達したかのような達観ぶりで描いた散文詩。20歳のときに結婚した10歳上の…

狐のくれた赤ん坊

★★★ 1993年7月11日(日) 日劇シネマ 阪妻の愛すべきキャラクターを次世代で体現し得たのは豪放一筋の三船より愛嬌兼備の勝新であったと断言し得るほどのドハマリ役。オリジナルを超えるものも見当たらないが安定した三隅演出もあって水準以上のプログラムピク…

男はつらいよ 寅次郎恋歌

★★★ 2003年2月4日(火) トビタ東映 池内淳子を口説く寅の台詞はシリーズ中出色の心情の吐露で、そうとしか言えない寅の身上に泣ける…が、結局逃げちまうので見る者は心のやり場に困る。同一ネタを4回に渡り繰り返し4回目で本物に転化させる脚本の巧みさ、森…

緋牡丹博徒 お命戴きます

★★★★ 1993年7月11日(日) 新世界東映 『ゴジヘド』と同年製作が意味をもつ公害問題が映画のモチーフをも浸食したメルクマール。シリーズ中では本流とは言えないかも知れないが、背景の荒みと穢れの陰影が末期感に感応し藤純子の殺陣に於けるシリーズ最高の濃…

栄光のル・マン

★★★★ 2003年3月17日(月) みなみ会館 年に1回フランスの片田舎で開催される世界的な祭に持ち込まれたカメラの特A級の臨場感が全てでドラマなぞどうでもいい。その風景にマックイーンを立たせて違和感のない高度に静謐な融合が果たされている。(cinemascape)…

恋のエチュード

★★★★ 2003年10月18日(土) 梅田ガーデンシネマ2 煮え切らぬ主人公への共振は感じられるにしても、一方で姉妹の性格付けが甘く映画の終盤まで来てやっと全体構造が氷解するように見えて来る。女を描くのが得意なようでそうじゃないのではと思わせた。撮影が完…

男はつらいよ 純情篇

★★★ 1992年9月5日(土) サンポードアップルシアター どうにも山田がマドンナを持て余しおっかなびっくりな生半可さで、寅の想いは発露さえ儘成らぬ体たらく。代わりの博の独立騒動とかも又楽しいが、添え物扱いの若尾がやはり気の毒。序盤の宮本と森繁のサイ…

チコタン ぼくのおよめさん

★★★★★ 2021年8月15日(日) シネヌーヴォX 小学生の男の子が寝ても覚めても同級生の女の子が好きやと、そればっかり考えている。 なんじゃあそりゃあ、そんなん考えてるヒマあったらもっと遊んでもっと勉強しろ。 と俺が親なら言いそう。 でも、チコタンチコ…