男の痰壺

映画の感想中心です

映画1993

アブラハム渓谷

★★★★★ 2016年11月19日(土)シネヌーヴォ シニカル爺さんがその攻撃の爪をたたんだふりをして、文学的芳香をあらん限りの力量を投じて注ぎ込んだ作品として、ブニュエルの「哀しみのトリスターナ」と好対を為すであろう。 もちろん、たたんだ爪は随…

ゴダールの決別

★★★★ 2023年7月13日(木) シネヌーヴォ 見てから半月以上経ってしまってどんな内容かももはや記憶に覚束ない。最近、この作品について書いてた人がいて、それ読んであーそんな話やったんかと今更思ったり。 とにかくこの映画、ゴダール史上ツカミのカッコよ…

親愛なる日記

★★★★ 2022年9月29日(木) シネリーブル梅田2 私事ですが、映画の感想のブログのタイトルが何で「男の痰壺」やねんってのは、もともとは日々のなかのムカついたこと、イラついたこと、泣き言、恥ずかしい希望・欲望とかの捌け口にgoo日記ってのを使って…

逃亡者

★★★★ 1994年1月3日(月) ホクテンザ2 何か新味を加えようとか奇手を用いてハッタリをかまそうとかの作家的自己主張が全くない。しかし、真面目に真摯に取り組まれたものは見ていて気持ちいい。その正義が信じられた時代の往年の正統アメリカ娯楽映画的風味に…

ヌードの夜

★★★★★ 1994年1月20日(木) シネマアルゴ梅田 名美(余)を取り巻く物語に介在せざるを得ない村木(竹中)のスタンスが濃厚な背景描写も相俟り完璧な説得力だ。間断しない緊張感と正真正銘のハードさ。雨・闇・光彩・影など佐々木原の仕掛けも豊富で且つ濡れて…

ハード・ターゲット

★★★★★ 1994年2月17日(木) 三番街シネマ2 ジョン・ウーもヴァン・ダムもお互いにアホであることを隠し立てせず完膚無きまでにそのアホを全開しスクリーンに刻印してる。「極み」と言っていいだろう。有象無象のペキンパーの申し子中、少なくとも技巧面では真…

クリフハンガー

★★★ 1994年3月3日(木) 北野劇場 冒頭の見せ場は心胆寒からしめるものだったし、スタローンお得意の全身哀しみオーラ発散でそのトラウマを表出できていたのに、いつのまにやら何でも詰め込んでのてんこ盛り映画に堕ちてしまった。(cinemascape) kenironkun.ha…

ロビン・フッド キング・オブ・タイツ

★★★★ 1994年3月21日(月) 新世界国際劇場 企画の由来からして素晴らしく幼児的なのだが、知性の欠片もみられないギャグが低位で間断なく持続して全く緩まない。弾け切らないのも確かだが、ずーっと薄ら笑いしてられる心地良さ。尖ってないのが微温湯的に安心…

トゥルー・ロマンス

★★★ 1994年4月3日(日) 新世界国際劇場 男版ハーレクインに逆説的に「真実の」ロマンスと銘打つからには自覚もあったろうに若気の至りとも言うべきナマな夢物語には矢張り退く。これだけの脇キャストを揃えながらスコットの無臭演出が妙に素直というアンビバ…

さらば、わが愛 覇王別姫

★★★★ 1994年4月3日(日) 三越劇場 多くのドラマトゥルギーが帰結の予兆的萌芽を内包し物語を深化させる前半の少年時代が良いのは編年記の常。しかし、後段、愛に言及し仮初にも三角関係に展開の綾を託すにしては余りに躊躇が横溢し近代史の嵐の中で雲散霧消す…

天と地

★★★ 1994年4月10日(日) 高槻松竹 大国の利権争いから内戦に至るベトナム近代史で翻弄される1人の女性を通しストーンが何を言いたかったのか終ぞ見えない。駆け足的な大河ドラマの中でジョーンズの印象はお荷物の介入者でしかない。視点の立脚点に本腰が入っ…

新ポリス・ストーリー

★★★ 1994年5月7日(土) 天六ユウラク座 正に行き詰まりであったのだろう。香港時代を総括する『酔拳2』の前年、今までのキャラを捨ててまでも臨んだ真性シリアス路線は決して悪くはなかったが、嘗ての華やぎは失われ斜陽の翳りは覆うべくもない。その寂寥感…

から騒ぎ

★★★★ 1994年6月26日(日) パルシネマしんこうえん ブラナーとトンプソンのいちゃいちゃもワシントンとキアヌが兄弟という適当さも、馬鹿騒ぎなハイテンションで突っ走る展開の中で、どうでも良くなっていく快感。下手な現代的再解釈ものより本質をわきまえて…

カリートの道

★★★ 1994年7月24日(日) 新劇会館 しがらみに絡め取られて暗黒道に舞い戻らざるを得ない顛末が在り来たりで、大体パラダイス志向のヤクザってのが、どうにもショボくて物語が一向に弾けない。ラストはやはり魅せられたが、あとはショーン・ペンのチリチリ頭く…

パーフェクト・ワールド

★★★ 1994年7月24日(日) 新劇会館 とりたててヒネリが効いてるとも思えぬ真っ当すぎる浪花節をノーブルだが散漫な演出と凡庸な撮影でダラダラ見せられる。コスナーが良いので若干救われてるが所詮は狂気の域まで踏み切る訳もなく、イーストウッドに至っては役…

ジェロニモ

★★★★ 1994年8月28日(日) 新世界国際劇場 時代に呑まれ消え行く者への惜別感が如何にもミリアス的なのだが、ジェロニモというカリスマを描くのではなくその周囲で時代に抗した者をこそ哀悼してる。ハックマンとデュバルが介添的役回りなのも泣けるしヒル演出…

鉄男Ⅱ BODY HAMMER

★★★ 1993年1月15日(金) テアトル梅田1 カラー&プチ贅沢になったおかげで接写地獄の音響拷問みたいな訳の分からないインパクトから解放されたが、結果、安手の「仮面ライダー」みたいな改造人間モノな本質が露呈してしまった。気持ち悪いコマ撮りやゲリラ手…

お引越し

★★★★ 1993年3月21日(日) シネマアルゴ梅田 少女彷徨3部作の掉尾とも言える終盤の琵琶湖畔には些かの食傷を覚えるが、狸顔少女への偏愛の凝結点田畑智子の発掘はセンスと言うしかない。両親に無臭な中井・桜田を配したキャスティングも自然体の境地を思わせ…

プロゴルファー織部金次郎

★★★ 1993年3月27日(土) 天六ユウラク座 好きこそものの上手なれの鉄矢メソッドが基底で好悪2極分化を誘発するのだが、そのエネルギーは尊重されてもいい。微温的な出演者たちによって演じられる微温的なストーリー。そういう意味で松竹プログラムピクチャー…

まあだだよ

★★ 1993年4月19日(月) 梅田劇場 これだけの提灯持ちに囲まれたお山の大将を演ずるには松村では線が細すぎる。又囲む連中も愚物にしか見えず、それが老年期の黒澤にダブって映画の存在自体さえも老醜の極みである。らしいと言えばらしすぎる遺作。(cinemascap…

ソナチネ

★★★★★ 1993年6月17日(木) 梅田ピカデリー3 ルイ・マル『鬼火』と並べてもいい「死にたい男」の厭世観が蔓延するキタノ・ブルー代表作。死に場所を探すでもなく唯待ち続ける倦怠感が沖縄の海と空の空虚さに助長される遣り切れなさを精緻に描いて奇跡的な達成…

リング・リング・リング 涙のチャンピオンベルト

★★ 1993年6月26日(土) 天六ユウラク座 つかの真情は現スターが世代交代で落ちて行く部分にあるのだろうに、肝心の島田陽子に華も悲哀も足りず,又、新スター長与千種と端っから対等にタメはれるわけなくショボすぎ。演出もネバリが足りない。渡瀬の動きの良…

獅子王たちの最后

★★★ 1993年7月4日(日) 天六ユウラク座 対極的な2人の男の生き様が類型的だが故に安心して見ていられる出来。ただ、象徴としての「伝説のヒットマン」の位置づけの筋への絡みが悪く思いの他機能しきれない。ラストも投げやり。青いなりに役者達は良く、錦織…

国会へ行こう!

★★★★ 1993年7月24日(土) ホクテンザ1 中央国政を直截に描かず代議士の地元政治活動に絞り描いたのが、みみっちくもコンパクトで成功した。胡散臭さ100%の緒形がここぞとばかりの快演で妻吉田日出子との『社葬』コンビも絶妙。義を通すには汚濁を吞むの…

病院で死ぬということ

★★★★★ 1993年8月2日(月) テアトル梅田2 1996年8月24日(土) 萩市民館大ホール 死ぬということを描いた部分の抑えた台詞回しや固定カメラに作為を感じるとしても、この死にゆく者にしか感じ取れないと思わせる市井の風景や何気ない人々の営みの美くしさと愛お…

大病人

★★ 1993年7月24日(土) ホクテンザ1 得意の取材力により病院という機構のメカニズムの矛盾点を突く訳でもなく、願望めいた平安死への伊丹の深層心理を普遍化せずに極私的且つ理解不能な般若心経一大ページェントに乗せて描いてしまった。或る意味、終着点さ…

卒業旅行 ニホンから来ました

★★★★ 1993年9月15日(水) 梅田劇場 ベタも2乗すれば突き抜ける。リアルな日常へ介入する卒業旅行という儀式が超絶非日常への隠し扉になりメフィストフェレスに誘われ目眩く酩酊へと飛翔する麻薬的な螺旋構造。感傷と郷愁を狂熱でごった煮したお祭り騒ぎ。そ…

水の旅人 侍KIDS

★★★ 1993年9月15日(水) 梅田劇場 NHK教育の幼児向けドラマのようなチープな絵作りがそれなりに味わい深く、それを全篇全うすることで題材に見合う世界を表出し得てるとは思うが、『デンデケ』以後の大林マイブーム手持ちカメラのブレ映像のしつこさが世界…

キャプテン・スーパーマーケット

★★★★ 1993年10月17日(日) 新世界国際劇場 インディーズから発生したマイナーキャラが変遷を経て、どんな難事に遭遇してもノンシャランと乗り切ってしまう正統派アメリカンヒーローに帰結したが、予定調和の陥穽に陥る直前の微妙なアンバランスさが画面を横溢…

機動警察パトレイバー2 the Movie

★★★★ 1993年11月3日(水) 高槻松竹 『ビューティフルドリーマー』で「メガネ」を抽出した如く南雲と後藤を前面に出してオリジナルを解体するのは作家的独善思想を感じ少し嫌だが1を数段上回る圧倒的技術進歩。だからこそ、擬似や模擬ではない本物をシュミレ…