男の痰壺

映画の感想中心です

映画1993

アブラハム渓谷

★★★★★ 2016年11月19日(土)シネヌーヴォ シニカル爺さんがその攻撃の爪をたたんだふりをして、文学的芳香をあらん限りの力量を投じて注ぎ込んだ作品として、ブニュエルの「哀しみのトリスターナ」と好対を為すであろう。 もちろん、たたんだ爪は随…

ゴダールの決別

★★★★ 2023年7月13日(木) シネヌーヴォ 見てから半月以上経ってしまってどんな内容かももはや記憶に覚束ない。最近、この作品について書いてた人がいて、それ読んであーそんな話やったんかと今更思ったり。 とにかくこの映画、ゴダール史上ツカミのカッコよ…

ハード・ターゲット

★★★★★ 1994年2月17日(木) 三番街シネマ2 ジョン・ウーもヴァン・ダムもお互いにアホであることを隠し立てせず完膚無きまでにそのアホを全開しスクリーンに刻印してる。「極み」と言っていいだろう。有象無象のペキンパーの申し子中、少なくとも技巧面では真…

から騒ぎ

★★★★ 1994年6月26日(日) パルシネマしんこうえん ブラナーとトンプソンのいちゃいちゃもワシントンとキアヌが兄弟という適当さも、馬鹿騒ぎなハイテンションで突っ走る展開の中で、どうでも良くなっていく快感。下手な現代的再解釈ものより本質をわきまえて…

カリートの道

★★★ 1994年7月24日(日) 新劇会館 しがらみに絡め取られて暗黒道に舞い戻らざるを得ない顛末が在り来たりで、大体パラダイス志向のヤクザってのが、どうにもショボくて物語が一向に弾けない。ラストはやはり魅せられたが、あとはショーン・ペンのチリチリ頭く…

パーフェクト・ワールド

★★★ 1994年7月24日(日) 新劇会館 とりたててヒネリが効いてるとも思えぬ真っ当すぎる浪花節をノーブルだが散漫な演出と凡庸な撮影でダラダラ見せられる。コスナーが良いので若干救われてるが所詮は狂気の域まで踏み切る訳もなく、イーストウッドに至っては役…

お引越し

★★★★ 1993年3月21日(日) シネマアルゴ梅田 少女彷徨3部作の掉尾とも言える終盤の琵琶湖畔には些かの食傷を覚えるが、狸顔少女への偏愛の凝結点田畑智子の発掘はセンスと言うしかない。両親に無臭な中井・桜田を配したキャスティングも自然体の境地を思わせ…

プロゴルファー織部金次郎

★★★ 1993年3月27日(土) 天六ユウラク座 好きこそものの上手なれの鉄矢メソッドが基底で好悪2極分化を誘発するのだが、そのエネルギーは尊重されてもいい。微温的な出演者たちによって演じられる微温的なストーリー。そういう意味で松竹プログラムピクチャー…

まあだだよ

★★ 1993年4月19日(月) 梅田劇場 これだけの提灯持ちに囲まれたお山の大将を演ずるには松村では線が細すぎる。又囲む連中も愚物にしか見えず、それが老年期の黒澤にダブって映画の存在自体さえも老醜の極みである。らしいと言えばらしすぎる遺作。(cinemascap…

ソナチネ

★★★★★ 1993年6月17日(木) 梅田ピカデリー3 ルイ・マル『鬼火』と並べてもいい「死にたい男」の厭世観が蔓延するキタノ・ブルー代表作。死に場所を探すでもなく唯待ち続ける倦怠感が沖縄の海と空の空虚さに助長される遣り切れなさを精緻に描いて奇跡的な達成…

リング・リング・リング 涙のチャンピオンベルト

★★ 1993年6月26日(土) 天六ユウラク座 つかの真情は現スターが世代交代で落ちて行く部分にあるのだろうに、肝心の島田陽子に華も悲哀も足りず,又、新スター長与千種と端っから対等にタメはれるわけなくショボすぎ。演出もネバリが足りない。渡瀬の動きの良…

獅子王たちの最后

★★★ 1993年7月4日(日) 天六ユウラク座 対極的な2人の男の生き様が類型的だが故に安心して見ていられる出来。ただ、象徴としての「伝説のヒットマン」の位置づけの筋への絡みが悪く思いの他機能しきれない。ラストも投げやり。青いなりに役者達は良く、錦織…

国会へ行こう!

★★★★ 1993年7月24日(土) ホクテンザ1 中央国政を直截に描かず代議士の地元政治活動に絞り描いたのが、みみっちくもコンパクトで成功した。胡散臭さ100%の緒形がここぞとばかりの快演で妻吉田日出子との『社葬』コンビも絶妙。義を通すには汚濁を吞むの…

卒業旅行 ニホンから来ました

★★★★ 1993年9月15日(水) 梅田劇場 ベタも2乗すれば突き抜ける。リアルな日常へ介入する卒業旅行という儀式が超絶非日常への隠し扉になりメフィストフェレスに誘われ目眩く酩酊へと飛翔する麻薬的な螺旋構造。感傷と郷愁を狂熱でごった煮したお祭り騒ぎ。そ…

水の旅人 侍KIDS

★★★ 1993年9月15日(水) 梅田劇場 NHK教育の幼児向けドラマのようなチープな絵作りがそれなりに味わい深く、それを全篇全うすることで題材に見合う世界を表出し得てるとは思うが、『デンデケ』以後の大林マイブーム手持ちカメラのブレ映像のしつこさが世界…

キャプテン・スーパーマーケット

★★★★ 1993年10月17日(日) 新世界国際劇場 インディーズから発生したマイナーキャラが変遷を経て、どんな難事に遭遇してもノンシャランと乗り切ってしまう正統派アメリカンヒーローに帰結したが、予定調和の陥穽に陥る直前の微妙なアンバランスさが画面を横溢…

機動警察パトレイバー2 the Movie

★★★★ 1993年11月3日(水) 高槻松竹 『ビューティフルドリーマー』で「メガネ」を抽出した如く南雲と後藤を前面に出してオリジナルを解体するのは作家的独善思想を感じ少し嫌だが1を数段上回る圧倒的技術進歩。だからこそ、擬似や模擬ではない本物をシュミレ…

月はどっちに出ている

★★★★★ 1993年10月31日(日) 第七藝術劇場 バブル終焉期のダイナミズムの残り香の中を主人公は無自覚に泳ぎ続ける。60年退廃ローマの『甘い生活』マルチェロの如くに。行き着けば僅かにせよ希望が見えるかも知れない。鄭と藤澤という新たな共闘者を得た崔の…

その木戸を通って

★★★ 2009年1月17日(土) シネリーブル梅田2 泣くにも泣けぬ持って行き場無い遣り切れなさだが、中井の人生での淡い華やぎの数年間を親世代のフランキー・井川・石坂は慈愛で見守る、その至福。日本版『心の旅路』的小世界に異論無いが、矢張りこの画質と軽…

男はつらいよ 寅次郎の縁談

★★★ 2011年7月9日(土) トビタ東映 新味の欠片もない出がらし的一作なのだが、松坂の腰の据わった風情や城山の衒いのない直情など女たちは良い。そう思うそばから、引き際よすぎる寅のダメさと満男の意気地なさに相も変らぬ残尿感を覚える水準作。就職に絡…

日の名残り

★★★★★ 2019年1月19日(土) 大阪ステーションシティシネマ5 趣味な映画なのだが、公開当時なんで見なかったかと考えるに、 アンソニー・ホプキンスに辟易してたからだと思うのだ。 これは、1991年の「羊たちの沈黙」の2年後の作品である。 徹頭徹尾、…