男の痰壺

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アブラハム渓谷

★★★★★ 2016年11月19日(土)シネヌーヴォ
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シニカル爺さんがその攻撃の爪をたたんだふりをして、文学的芳香をあらん限りの力量を投じて注ぎ込んだ作品として、ブニュエルの「哀しみのトリスターナ」と好対を為すであろう。
もちろん、たたんだ爪は随所で主人公を切り裂く。
女が好きでたまらない一方、根の深い女性嫌悪のマグマがたぎっているかのようだ。
 
主人公の心の揺らぎをナレーションで説明する。
危険な手法だが、オリヴェイラはこともなげにそれを徹底的に押し出す。
フローベルというよりフォークナーを思わせる。
欧州から発した意識の流れの叙述がアメリカ経由で再構築された趣き。
素ん晴らしい。
真のド傑作とはこういうのを言う。
 
シニカル爺いがその爪を畳んだふりし文学的芳香をあらん限りの力量を投じて注ぎ込んだが勿論その爪は随所で主人公を切り裂く。女好きな一方で根深い女性嫌悪のマグマが滾る。意識の流れ的ナレーションは危険な手法だが事もなげにそれを押し出しものにしてる。(cinemascape)