男の痰壺

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サイド・ストリート

★★★★ 2019年6月22日(土) シネヌーヴォ
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フィルム・ノワールの世界」という企画で見た。
この企画、見たいものがそこそこあるのだが、ほとんどがデジタル上映なので敬遠していた。
今回、他に見たいのがあって、どうせならとついでに見たのだが。
 
アンソニー・マンの未公開作である。
どうも、「ウィンチェスター銃73」と「グレン・ミラー物語」くらいしか思いつかない監督だが、俺はけっこう好きで、「胸に輝く星」なんて映画は大傑作と思ってるんですなあ。
そのへんも見てみようと思った理由かもしれない。
 
文句なしの佳作であった。
出来心から悪さしてしまった男が、ずるずると酷いめにあう話なのだが、描き方が簡潔で手際がいいのである。
脇にからむ人物群が、いちいち味がある。
バーの店主や取り調べの刑事や悪辣な弁護士や、ちょっとした出演場面でかっさらう感じです。
演技を溜めません。チャキチャキやって合理性に貫かれている。
取り調べのシーンなんて、尋問して電話とって尋問して電話とってで爽快です。
それを描くに、アンソニー・マン得意のローアングルの仰角を適宜はさんで小気味いい。
 
そして、主人公の身重の女房が泣かせる。
あーいい娘やなあ、不幸になってほしくないわあ。
って誰でも思うでしょうな。
で、映画も彼と彼女に優しい。
きっと正しく更生するだろうとのラストのナレーションが又泣かせるね。
 
ふとした出来心から地滑りのように降りかかる災厄だが身重の恋女房の慎ましやかさが更生を促す愛すべきは小市民な人間観。悪徳弁護士と刑事に反復応用される小道具としての電話など小気味良いテンポと随所の仰角アングルが効いたマン演出はタイトで闊達。(cinemascape)