男の痰壺

映画の感想中心です

映画2009

The Harimaya Bridge はりまや橋

★★★★ 2009年6月〇日 梅田ブルク7 描かれる戦争の禍根が緩和される切欠には完璧に納得しつつも作劇としては安易な妥協と思う。しかし、演者が皆想いを込めつつ静かな炎を交わす醍醐味に射られる。何より中堀の『鏡の女たち』を彷彿とさせるカメラ使いが遠く…

ウォッチメン

★★★★ 2009年4月16日(木) 梅田ブルク7シアター2 60~70年代のパラレル米国史観のミクロな細緻描写に折々圧倒され又郷愁も感じる一方、突如、児戯にも見えるパロディや下手なポップスの導入に戸惑うが、その壮大な混沌をゴリ押す力技はトータルでは買…

クローズZERO Ⅱ

★★★ 2009年4月25日(土) TOHOシネマズ梅田5 集団抗争の予感横溢する導入から30分は胸ときめく至高の展開だったが、鈴蘭VS鳳仙の抗争の引金OBが又も逸脱し強度を拡散させる。1作目より数段良いが脇の甘さは変わらない。そして、このどつき合いの…

ターミネーター4

★★★ 2009年6月13日(土) なんばパークスシネマ7 順な時間軸の平板さに加え『マトリックス』的未来観の新味無さに辟易する。新キャラワーシントン&カイルの物語も昇華せぬならコナーの存在は最早蛇足にしか見えない締まらなさ。構成の失敗だろう。序盤の2…

ウルトラミラクルラブストーリー

★★★★★ 2009年6月13日(土) なんばパークスシネマ3 冥界とシンクロする町で優しき人々に見守られつつ主人公は彼岸と此岸を往還する。そして、死者と生者が招き寄せられ始まる物語は他者を礎に人が再生することの肯定に行き着く。何という前向きな人生観。寺…

トランスフォーマー リベンジ

★★★ 2009年7月17日(金) なんばパークスシネマ2 ロボット戦争の低脳ぶりの更に上を行く白痴的人間ドラマが素晴らしくチャーミングだし、終盤の「顔無し」モドキの世界遺産蹂躙を筆頭にベイの無痛感覚は爽快でもある。だが、どうしようもないキナ臭さが無条…

ディア・ドクター

★★★★★ 2009年7月17日(金) なんばパークスシネマ5 決して新味のある話でもないのだが、時制の支配力とでも言うべき構成の説得性と、行間の描き込みの緩みの無さ。畢竟、物語の上澄みではなく総体のボリュームが浮上する。ロジカルセンテンスで浮かび上がる…

劇場版 ポケットモンスター ダイヤモンド&パール アルセウス 超克の時空へ

★★★ 2009年7月26日(日) TOHOシネマズ梅田1 3部作を纏める趣向は巨大ポケモン勢揃いのみという体たらく。それが繰り広げるバトルも大味で『怪獣総進撃』並の付け焼き刃感が横溢。人語を解するアルセウスにゲンナリするし物語も凡庸であった。ダークラ…

G.I.ジョー

★★★★ 2009年8月9日(水) 梅田ピカデリー3 緩い設定にエッジが効かないアクションだと思って見てたが、中盤のパリのシークェンスの怒濤の「押し」に飲み込まれた。後は一切の間断の無さで『マトリックス』的『スター・ウォーズ』的恥知らずな終盤にさえ萌え…

サマーウォーズ

★★ 2009年9月1日(火) 梅田ブルク7シアター1 誇大妄想狂の戯れ言みたいでかなり気色悪い。肉を切られ血の海でのたうつことでしか暴走するシステムという今更設定にはケリをつけてほしくない。お茶の間のキーボード早打ちで鼻血ブー如き生温さが世界を救う…

サブウェイ123 激突

★★★ 2009年9月12日(土) 梅田ブルク7シアター5 バブル崩壊後の残滓を湛えたムードが傑出しており、且つマジ本線途上での脱力会話ギャクも冴える中、プロット丸々ギャグ化する身代金輸送プロセス。ヘルゲランド冴えとると思う端から電車暴走と主役対峙のコ…

新宿インシデント

★★★ 2009年8月23日(土) 新世界国際劇場 閉じた10年の閉じた空間に於ける民族の勃興と盛衰を描いて例えばホウ・シャオシェンの幾つかの作品と同様の興趣があるが、犯罪シンジケート間の抗争に終始し且つジャッキー作品の記号性との不親和が純度を低めた。…

しんぼる

★★★★ 2009年9月12日(土) 梅田ピカデリー1 納得のリアクション芝居が延々と続く小ネタ博覧会の密室劇と、大ネタのメキシコレスラー親爺話を錯綜させる構成の冴え。正直天才的とさえ思う。しかし、実践篇の途上から惑うのだ俺は。確信的なシャレやろ?と。…

スター・トレック

★★★★ 2009年9月23日(木) ホクテンザ2 総じてふやけた原シリーズに輪をかけるかと思える旧態な世代交代譚だが、ド真ん中から射抜いてくるエイブラムスの確信ぶりには惚れ惚れする。前作はフロックではなかった。技術的達成度の高さもその力業を担保する。…

カムイ外伝

★★★★ 2009年9月22日(火) 梅田ブルク7シアター6 被虐者VS加虐者という構図ではなく同恨相食む無常に収斂させた白土イズムを押さえた脚本。殺陣も打撃と関節技を取り入れ納得性があり魅せられた。CGは『ワタリ』的原色配置は買うが「飛翔」の描写の細…

リミッツ・オブ・コントロール

★★★ 2009年9月24日(木) シネリーブル梅田1 受け身な主人公に世界のシステムを制御するカリスマはなく、狂言回しとすれば回される世界に意味或る至言は存在しない。体裁にジャンルを踏破させたいなら『欲望』を、トリックスターなら『テオレマ』をだ。この…

白夜

★★★★★ 2009年9月26日(土) なんばパークスシネマ1 発想の発端はブレッソンであったにせよ、正反なグダグダで饒舌なダイアローグ劇。しかし、それを完璧にこなす主役2人に瞠目した。緊密なサスペンスが持続する果てに男と女の関係は所詮はロジカルには帰結…

空気人形

★★★★★ 2009年10月5日(月) 梅田ガーデンシネマ2 バーチャルでないリアルなビニール性欲処理人形という実存はペ・ドゥナの緩んだ太股や汗ばんだおでこに継承され、死滅しゆく閉塞都市を彷徨い血と塵芥にまみれて消えるしかない。ピンビンの温もりの風景に包…

のんちゃんのり弁

★★★★ 2009年10月8日(木) シネリーブル梅田1 断面解説が可愛いシャレに成り得ている。…と思えるのは主人公を語るに一切の予断がないからだ。緒方は小巻を信じてるし小西にも若干の過剰があっても衒いは無い。不安と希望が綯い交ぜの泣かない女の大泣きが自…

さまよう刃

★★★ 2009年10月16日(金) 梅田ブルク7シアター1 見飽きた題材を取り上げるに、こうも今更のアプローチしか出来ないのだろうか。沈鬱な好演だとは思うが竹野内の葛藤は「今」のライン上には立ててない。何時までも良識派を気どる勘違いしたマスメディアの…

レッドクリフ PARTⅡ 未来への最終決戦

★★★ 2009年10月14日(土) トビタシネマ こうまでプラスチックでベニヤ細工の模造品を作ったジョン・ウーに或る意味尊敬の念を禁じ得ない。天気任せの戦略と勘違い女の意味無し投降と兵を退いたヘタレの葛藤無き翻意。熱くなりようもない世界ならせめて鳩出…

悪夢のエレベーター

★★★★ 2009年10月19日(月) シネリーブル梅田1 話が返るたびに段階を追って無限地獄に誘われる徹底した「悪意」が快感で、だからこそ、打破したいという主人公の心象風景たる「球場」は肝なのだ。ポイントゲットな笑いに粉飾されたサイコな深淵。描かれた世…

ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ

★★★★★ 2009年10月20日(火) TOHOシネマズ梅田9 冷めたグダグダの果ての手と手を繋いでの一過性の休戦。連綿と続く男と女の腐れ縁への諦念は生な野郎が語っても小賢しい。根岸には未だ及ばぬにせよ溝口・成瀬の先陣を追って欲しい。役者も良いがオーソ…

パンドラの匣

★★★★ 2009年10月30日(金) テアトル梅田2 気障と洒脱のギリギリ境界で均衡する日本映画で希な粋。困難とも言える台詞が浮かないのはキャスティングの妙ゆえであり、川上未映子の放つ関西弁の文学臭は肝だ。リリカルだが一歩退いた視座はアーヴィング的でさ…

母なる証明

★★★★★ 2009年11月3日(火) 2009年11月3日(火) 梅田ブルク7シアター7 場を丸ごと切り取る事での状況への臨場性は今村的でもあり、遍き不穏な空気の内在は黒沢清的でもあり、その最高ランクでの融合がボン・ジュノだという事を確認。そして、曖昧な混沌で…

マイケル・ジャクソン THIS IS IT

★★ 2009年11月4日(水) 梅田ブルク7シアター6 予め準備された材料でないだけ料理人の腕が試されるが、貴重な残存フィルムに既存コンサート映像をリミックス。レアな食材が裏通りのラーメン屋で調理されたかのよう。2カメで貫徹された「ビリー・ジーン」…

ロボゲイシャ

★★★ 2009年11月7日(土) ホクテンザ2 成る程導入は期待させる。芸者とロボとお座敷と「素」が混在する空間を辛うじて映画は支配しているかに見える。だが、あとは既存のバカ話のトレースに終始した。正直、眠かった。土台、俺は芸者よりミニスカのコンパニ…

スペル

★★★★★ 2009年11月17日(火) TOHOシネマズ梅田10 『グラインドハウス』的70年代オマージュがベースなのだろうが、これ見よがし感も無く、どうこう言っても緻密なライミの技巧。それが、行って来い的にサバけた挙げ句に落ちたところが『ミステリー・…

イングロリアス・バスターズ

★★★★ 2009年11月23日(火) TOHOシネマズ梅田1 一触即発のみを追求した沸点臨界の5幕物の、わけても永久保存的第4章でピークアウトする脚本の練り甘。終章では果たされる報復と充たされぬ愛欲と真摯な使命とお追従とシラケと大殺戮のカオスが必要だっ…

アドレナリン ハイ・ボルテージ

★★★★★ 2009年12月5日(土) 新世界国際劇場 時代のモラリティと制約から解放されるということの際まで迫った真ドラッグムービー的あんぽんたんなアメコミ細工のアホ限界爆走な極北。塚本『鉄男』が加減乗除されて行き着いた果てとも思えた。しかし、可愛げも…