男の痰壺

映画の感想中心です

映画1994

太陽の少年

★★★ 1998年6月13日(土) ホクテンザ2 良く出来た年代記もので且つ少年時代の話というのは王道的売れ線要素だが、一方で余りに多くの作品があるので余程オリジナリティが無いと埋没する。年寄りと子供しかいない空虚な街という設定を活かしきれていない。(cin…

イル・ポスティーノ

★★★ 1999年1月17日(日) みなみ会館 偉大な詩人で政治家というのがノワレでは柄じゃないと思うし、無学な者と触れあい啓蒙し又虚飾なき思いに自らも打たれるにしては、そのエピソード群のインパクトの無さ。この種の映画としては媚びがないのが救いだが余りに…

死と処女

★★★ 1998年4月13日(月) 天六ユウラク座 圧政のトラウマを背景にした密室劇はポランスキーの根っ子を揺さぶる筈なのだが撮影・美術と名手を揃えて尚緩い。南米の多湿空気が怜悧な欧州体質の監督とミスマッチ。ウィーバーも当たり前だが好みの金髪美女ではない…

太陽に灼かれて

★★★★★ 1996年1月27日(土) 徳山市市民館小ホール ミハルコフが親和するチェーホフ的世界に切り込まれるタルコフスキー的前衛は故国近代史への錯綜する想いを表出し、ソビエト映画史を概観するような感銘。ズーム使いは後期フェリーニ・ブニュエルを想起させる…

ビフォア・ザ・レイン

★★★ 1996年7月20日(土) 徳山市市民館小ホール 挿話は人の死で綴じられるのだが、民族悲劇の構造を浮かび上がらせるには至らない。トリッキーであることは構わないのであろうが、マケドニアとロンドンを往還する構成が何故に必要なのか。そのへんがどうにもピ…

夜がまた来る

★★★★ 1995年1月28日(土) 森小路ミリオン2 ルーティンワークのプログラムピクチャ(cinemascape) kenironkun.hatenablog.com

天使のはらわた 赤い閃光

★★★★ 1995年1月28日(土) 森小路ミリオン2 『死んでもいい』から『GONIN』に至る石井隆最高潮期に於いて多分最も低予算の作だが、乗った作家の勢いを感じずにはいれない。サイコスリラーとして上級であり、そうであっては欲しくない1線を仮借なく越え…

愛の新世界

★★★ 1995年2月25日(土) 扇町ミュージアムスクエア 女性讃歌という概念自体が言わずもがなな時代にそれをやって耐え難い時代錯誤感に被われてしまったし、男達にも虚無が足りない。映画とアラーキーの写真との親和性も低い。それでも「今夜は踊ろう」で夜明け…

愛しのタチアナ

★★★★ 1995年3月5日(日) パラダイスシネマ 冴えなき男と女への偏愛を紡ぐカウリスマキが不動の4番打者オウティネンとペロンパーをもって1時間の短尺で織りなす小粋な中編ロードムービー。まとまってて破綻は無いが、いかにも短く小品すぎの感も。 (cinemasc…

インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア

★★★★ 1995年4月23日(日) 祇園会館 バンパイアが日常に介在する18世紀の退廃と闇と死の匂いが肝要だが、そこは、まあ欠点も無く美術も豪奢だ。ただ、やっぱ違和感は配役。ピットとバンデラスは根っからやおいの匂いが皆無。能天気クルーズのみが異様な輝き…

フランケンシュタイン

★★★ 1995年5月27日(土) 高槻松竹 望まれなかった出自への悲哀。正攻法で描いて堂々たるものではあるが、それでも今更感は尚ぬぐえない。『ドラキュラ』でコッポラのやった絢爛とハッタリの釣瓶打ちに比して余りに糞真面目なアプローチ。デ・ニーロも殻を破る…

プロジェクトS

★★★ 1995年6月5日(月) 扇町ミュージアムスクエア ミシェールのアクションのパワーは相変わらず凄いとは思うが、肉弾戦で充分に魅せ切れるのに仕掛けを多用するトンの演出志向が不要不急で頂けない。更にポーカーフェイスのクールさが身上の彼女に恋だの愛だ…

レオン

★★ 1995年6月10日(土) ホクテンザ2 孤高で峻厳な『ニキータ』の後で割り切りで日和れる魂の愚鈍。そのあとベッソンは怖いもの無しとなった。それでも、殺し屋と少女の関係がこうもウェットでは気持ち悪くさえある。レノは差し詰め縫ぐるみの熊。全然クール…

カルネ

★★★★ 1995年6月24日(土) みなみ会館 ブローアップされたざらつき感と赤の色調。少女の初潮と近親愛。屠殺と殺人。描かれるものは禍々しさを志向し続けているのに奇妙に爽やかなのは作り手の根底にあるモラリズムが透けて見えるからだろう。ショットのパワー…

ディスクロージャー

★★★ 1995年5月27日(土) 高槻松竹 セクハラという「売り」を除いたときに浮かび上がる、ギミック無い真っ当な企業内サスペンスを平凡とは思わなかった。クライトンが『ライジング・サン』と連発したこれは面白くは出来てるが、レビンソンの演出があんまり「変…

ショーシャンクの空に

★★★★★ 1995年7月30日(日) 高槻セントラル 屋上でのビール場面でのロビンスの遠くを見る気な微妙な表情の屈託。物語の主役をサブキャラに語らせることでの「説話」味の醸成。キング原作ものの成功した映画化で終わらせぬ素因は曖昧領域のインサートの巧みさだ…

ザ・ペーパー

★★★★ 1995年7月22日(土) シネマアルゴ梅田 スクリューボールなシテュエーションコメディの伝統を正統的に受け継いだオーソドックスの素晴らしさを再認識させられる。とは言ってもシーンの継ぎの巧さなんて意外なほどの凝り方。とにかくアメリカ映画らしいア…

恋する惑星

★★★★★ 1995年8月19日(土) テアトル梅田2 ミニマム世界のモノマニアックな語り口が村上春樹的であり、それを映像に定着させる技巧に於いてカーウァイは世界の先端にいたわけだが、一方でダサキュートさが遊びを生みタイト感を緩衝。先鋭的ショットの連続があ…

マスク

★★★ 1995年7月30日(日) 高槻セントラル 驚いて目玉や心臓が飛び出し外れた顎が床に落下し体が何回転も捩れて飛んで行く…カートゥーンアニメの定番ギャグをCG実写で再現。やったもん勝ちだとは思うしまあ楽しめるが結局は気の利いたトレース以上ではない。…

エドワード・ヤンの恋愛時代

★★★ 1995年8月19日(土) 第七藝術劇場 人物捌きが親切でないので錯綜した物語が入ってこず狂騒の度合いも生温い。従って宴のあとの何とやら的感慨もドッチラケで湧かない。如何にもなギョーカイを舞台に持ってきたのがどうにも鼻につき、安手の台湾版トレンデ…

ネル

★★★ 1995年8月5日(土) ホクテンザ2 山間部湖畔の風景も美しく演出は手堅い。しかし「狼少年」について語られ尽くした多くのバリエーションに新たな何も付加し得てないし、こんな風に育った女性が本当にこういう風になるのかっていうのも何となく疑問。ジョ…

恋人たちの食卓

★★★★ 1995年12月2日(土) 徳山市市民館小ホール 謙虚な長女とおキャンな三女に比して割喰う次女をバブリッシュなキャリアOLに設定し父親の対立項として設定したのが巧みで、氷解の楔が「料理」であることも良い。アン・リーのこの頃の演出は不器用だが真摯…

夏の庭 The Friends

★★★ 1994年3月12日(土) 三越劇場 同じ小6の子供でも半分大人の女の子なら何かを描きようがあっても、純正ガキの男の子3人組では相米も手のつけようがなかったのかと思わせる。いたって平凡な児童映画の趣き。三國も当たり前すぎで面白くも何ともない。化学…

凶銃ルガーP08

★★★ 1994年3月20日(日) ホクテンザ1 呪いの銃を持った凡人の破滅譚として物語は予定調和の域を逸脱するものも無い。しかし、媚びたところも全く無いのが初期の北野イズムに通ずるものを感じる。明らかに低予算でそれを隠す術もないのだが、撮影の小松原茂の…

罪と罰 ドタマかちわったろかの巻

★★★ 1994年3月20日(日) ホクテンザ1 全編手持ちカメラと思しく照明もしてるのかしてないのか解らない暗さでお手軽もいいとこなのだが、悪夢から吹っ切れようとしていたのだろう。俺はそういう人間の真摯に足掻く所業を支持したい。成り切れなかった『地下鉄…

男はつらいよ 拝啓車寅次郎様

★★★ 2001年11月15日(木) トビタ東映 ゴクミとのシリーズではウジウジと見ている者を大概いらつかせた満男であったが、寅の老化を間近で感じつつ負って立つ気概でもでたのか結構いい。牧瀬理穂も良い役に恵まれ好調。一方、寅は可愛そうな位影薄くかたせとの…

トカレフ

★★★★ 1994年5月3日(火) テアトル梅田2 通常の善悪の2項対立ではなくスパイラルに絡み合いながら沈潜してゆく怒りと憎しみ。隔絶された世界での2人の男の対決。切り取られたショットの全てが夢幻の世界の出来事めいている。この物語はこういう風にしか語ら…

ペインテッド・デザート

★★★★ 1994年5月7日(土) 天六ユウラク座 好きこそ物の上手なれでアメリカかぶれ原田の特質みたいなのがビデオ映画『タフ』連作で見出し獲得した一応の職人芸と最良の形でマッチングし違和感無くはまった。木村一八がアメリカの役者や風景の中で全く浮いて見え…

屋根裏の散歩者

★★ 1994年6月26日(日) 高槻セントラル 無駄に前衛しちゃうよりマシかもと思うが実相寺が乱歩を撮ればこうなるという想定イメージ内に安住しており退屈極まりない。徒に小奇麗なのも萎える。この原作はエキス的に純過ぎて世界が完結しているのだ。擬えるだけ…

NOBODY

★★★★ 1994年7月10日(日) 天六ユウラク座 現代的病理を描くにあたり、余りにシンプルな構成が強度を付与している。心地良いまでに抑制された演技と描写。一方で活劇的オリジナリティもある。日常と非日常の境目は些細な切っ掛けで決壊する。そういう怖さをモ…