男の痰壺

映画の感想中心です

映画1979

桜 さくら

★★ 1980年11月9日(日) 大毎地下劇場 日中平和友好条約締結の政策的記念映画は残留孤児問題を双方の架け橋と規定しなければ進みようがなかった。希望を謳ったそれは悪くもないのだが、何せ掘り下げも技術も拙劣である。第五世代勃興前夜の旧世代教条映画の…

ハッピーストリート裏

★★ 1982年4月29日(木) 大阪府立文化情報センター 内向するルサンチマンは遂に弾ける術を見出せない。非情とバイオレンスを志向しつつプログラムピクチャーの枠を破って表出するものは鬱積し沈殿する倦怠のみ。今更こういう話を見たいとはどうしても思えなか…

勝手に逃げろ 人生

★★★★ 2003年5月22日(木) テアトル梅田2 ミエビルはヨーコ・オノみたいなものなんだろう。だとすれば、これはゴダール版「ダブル・ファンタジー」で、となれば当然カリエールの手によると思われるユペールパートに尽きる。ブニュエル臭溢れる執拗な変態味が…

火宅

★★★ 2021年8月15日(日) シネヌーヴォX 見る人が見たら技術的に凄いのかもしれませんが、なんせアニメーションの技術的な造詣もないので、どうしても表層的な物語への根本的な違和感が拭えなくて気になります。 女性は悪いことをしでかしたわけではない。 …

草迷宮

★★ 1984年12月8日(土) 千日会館 海外からの初オファーを受けて勝手知る自家籠中の世界でってのが安易。まるっきり『田園に死す』の焼き直し短縮版みたいで、受け狙いのイメージの集積に見える。母と故郷に絡め取られた閉塞感は繰り返し何度も見たいものでは…

マンハッタン

★★★ 1982年2月23日(火) 三越劇場 大してオモロくもないロリコン男の自虐的かつ露悪的物語をそういう風に撮らず、神業というしかないウィリスのモノクロとガーシュインの音楽でオブラートして性が悪い。ギャグで塗してこその身を2.5の線に窶したアレン若気…

男はつらいよ 寅次郎春の夢

★★★★ 2020年8月30日(日) 大阪ステーションシティシネマ6 胡散臭い感じがして、長年食指の動かなかった作だが、予想に反して佳品だった。 だいたい、何でレナード・シュレイダー?ってのもあったし、ハーブ・エデルマンって誰?ってのもあって、それが山田…

もっとしなやかに もっとしたたかに

★★★★ 1982年8月20日(金) 毎日ホール 無気力・無責任とまでは言わないが本質にそういった資質を色濃く内在させる脚本で、起承転結が無くダラダラだが結構色々起こる平凡男の日常がノンシャランで良い。奥田十八番の受動的で取り柄無きうらぶれ男も良いが藤田…

ルパン三世 カリオストロの城

★★★★★ 1982年11月11日(木) 伊丹ローズ劇場 ミスが結果オーライ帰結になるに過剰な飛翔が胡散臭さを反転させ、ド根性な男気の発露に過剰な暴飲がセンチを粉砕する。その過剰は、少女信仰のそれでは際どいが、アクション演出の冴えの中で遮蔽される。脇キャラ…

宇能鴻一郎の 濡れて開く

★★ 1981年5月4日(月) ダイニチ伊丹 明るいのが良いと言えばその通りなのだが、余りに他愛ない話。映画界に於ける秩序を破壊せんとした作家の養卵機としての日活ロマンポルノを実質支えたのは、こういう数多の作品であった。決して言及されることがない西村…

テス

★★★★★ 1981年4月5日(日) ビック映劇 1982年4月28日(水) 関西学院大学学生会館大ホール 美しいが故の悲運を逍遥と受け止めるキンスキーを時代と世界が包み込む。その圧倒的なアンスワースの遺言とクロケの継承。少女愛の臨界に立つポランスキーだからこその…

華麗なる相続人

★★ 1981年4月5日(日) ビック映劇 この何の芸当もないオードリーの復帰第2作を止める者は誰もいなかったのだろうか。薹が立った爺婆スタッフ・キャストに囲まれ安住するだけの彼女に年相応の枯淡も色香もない。無惨なだけで、つくづく『ロビンとマリアン』…

ブリキの太鼓

★★★★ 1981年5月22日(金) 三番街シネマ3 自ら成長を止めた割に傍観するだけのオスカルは或る意味歯痒く、歴史に翻弄される欧州地方小国家のメタファーだとしたら、この爛れた性関係ばかりを追った展開はかなりに悪意に充ちて自虐的。外連に充ちたナチスの…

テン

★ 1981年8月31日(月) 新劇会館 そりゃあ街で見かけた女を採点なんて男なら誰でも無意識下にやってることだろうが、そんなもん公然と映画にするようなもんでもないだろう。老エドワーズが見せ得べくもない下心をさらけ出してみっともない。大体ボー・デレク…

配達されない三通の手紙

★★★★ 1981年10月3日(土) 伊丹ローズ劇場 パーティだワインだと翻案物特有のバタ臭い気恥ずかしさは否めないが、それにしても新藤の巧い脚色もあって滅法面白い。もちろん原作の力もあるのだろうが。出演者の中では松坂慶子が正に油が乗ってる感じ。彼女のシ…

新・明日に向って撃て!

★★ 1980年1月15日(火) ビック映劇 ブッチがナイスガイだってのを前作ではニューマンが説明なくとも十二分に体現できていたのに対し、本作では前面に出しすぎて何か嫌らしい。非情さが無く温いし、リリシズムは安い。そっくりショーとしてはベレンジャーは表…

レ・ブロンゼ スキーに行く

★ 1980年11月30日(日) 梅田東映ホール ドリフや欽ちゃんや吉本新喜劇を全く何の基礎知識ももたずに見て面白いかということで、喜劇・笑劇とはその拠って立つ社会的連続性の中でしか意味を成さない。続編ということもあり、全く馴染めぬ連中が繰り返す余りに…

地獄の黙示録

★★★★ 1980年3月26日(水) OS劇場 1980年9月3日(水) 伊丹グリーン劇場 地獄巡りの主人公が見聞する、恐怖がドラッグを蔓延させ抑圧された性欲が暴力衝動を喚起し意義喪失が殺戮の意味を見失わせる様は圧倒的画力を持つ。しかし、狂言回しが、何時しか侵食さ…

絞殺

★★★ 2014年8月5日(火) シネヌーヴォ 母親に対する父親と少女に対する義父という清清しいまでの2段重ねエディコン祭りで、こういう枠組みで事の解明を図る新藤は理数系なんだと思う。3文演劇のようなご近所芝居は前衛の1歩手前とも見え愛らしい。尚現在…

ジャスティス

★★★★ 1980年7月1日(火) ビック映劇 漫画チック未満の微妙なカリカチュアの按配が良く、ポイントでは結構金もかけ厚味もある。並行する多くのプロット群は有機的錯綜を見せないのだが、それが味でもあり、自殺癖の判事や仕事の矛盾に悩む弁護士等、本筋以外の…

十八歳、海へ

★★★ 1980年7月31日(木) 毎日ホール 『青春の殺人者』の原作・脚色者を再組合せし『サ-ド』の主演コンビをマッチングさせた企画もん丸出し作。藤田特有のシラケ感は、所詮重量級の観念劇と噛み合わず、訳知り顔のわからん話がしんどい。唯一安藤庄平のヘヴィ…

悪魔の棲む家

★★ 1980年7月16日(水) 伊丹グリーン劇場 さしたる刺激が無いことを承知しつつ、怠惰に流されるだけの仕事。ベストセラー原作でヒットが予測されてるに甘え使い古しの設定に依拠し斬新さの欠片もないスタッフやキャストの迎合のルーチンワーク。何よりあんま…

その後の仁義なき戦い

★★ 1980年9月27日(土) 毎日ホール 役者は揃ったが、組織の川下で青春ものめいた友情とかをチンタラやってるだけで包括的な組織論に波及しないのでは「仁義なき戦い」の冠が泣く。笠原イズムはもっとドライでクールであった筈。工藤演出もTVの段取り感が抜…

エイリアン

★★★★ 1979年8月25日(土) OS劇場 極北まで行った『2001』から10数年。お子様活劇『SW』と怪物譚の本作でSF映画は周回し伝統に回帰した。贅を尽くした怪奇的でバロックな美術と王道的ショッカー手法とグロテスク趣味が混在し宇宙の静謐と孤独が寂…

アルカトラズからの脱出

★★★ 1980年11月16日(日) 伊丹グリーン劇場 ベッケルやブレッソンが試みたジャンルを凡庸に復刻しただけの域を出ない。折角の『ダーティ・ハリー』コンビの復活作なれば空間移動を旨とするものこそ見たかった。退屈こそしないものの、とりたててどうと言うも…

クレイマー、クレイマー

★★★★★ 1980年11月23日(日) 梅田東映パラス 単に社会事象への問題提議の映画だったら、ここまでの感銘は無かろう。親が子を想い子が親を想う様を緻密なディテールで積み重ね、それこそが事の本質と言ってるかのようだ。ベントンの演出は精緻を極めアルメンド…

オール・ザット・ジャズ

★★★ 1980年11月18日(火) 大毎地下劇場 お手盛りの自画自賛映画だとしても、せめて10年早くフォシー自身の主演で撮って欲しかった。ショービズにどっぷり浸かった男の佇まいがシャイダーではどこか嘘っぽい。ロトゥンノを擁してもフェリーニの夢幻の境地に…

あゝ野麦峠

★★★ 1979年7月15日(日) 伊丹グリーン劇場 女工哀史的な情緒がだだ漏れる被虐もあるが一方で優良工女の争いがしのぶVS美枝子の両極激突に表象されるのが骨太で女性讃歌へと接続される。製糸工場のセットは健闘だが美学的昇華には至らぬがストーリーテラー薩…

太陽を盗んだ男

★★★ 1979年10月10日(水) 伊丹ローズ劇場 1980年2月29日(金) フェスティバルホール 時代の空気に乗ったアナーキズムとノンシャランが横溢し味を醸してはいるが、所詮は投げ遣りなので構築されたカタルシスに遠い。原爆製造の4畳半と皇居前のシーンは流石の粘…

男はつらいよ 翔んでる寅次郎

★★ 1979年8月4日(土) ダイニチ伊丹 階級が滅んだ時代に、形骸化したそれに拘る姿勢は、底辺からそれを撃つかにみせかけ続けた山田の姿勢がポーズにすぎないことを逆説的に露呈させる。異端の桃井起用も更なる無惨さを煽るだけ。シリーズでも最悪の部類。(cin…