男の痰壺

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男はつらいよ 寅次郎春の夢

★★★★ 2020年8月30日(日) 大阪ステーションシティシネマ

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胡散臭い感じがして、長年食指の動かなかった作だが、予想に反して佳品だった。

だいたい、何でレナード・シュレイダー?ってのもあったし、ハーブ・エデルマンって誰?ってのもあって、それが山田洋次と噛み合うのが想像出来なかった。

しかし、見事に噛み合ってて驚かされました。

 

ハーブ・エデルマンが良くて、アメリカ人が鞄1つ持って日本で飛び込みセールスの浮世ばなれた世界観を地に足着かせている。

まあ、ええ歳こいて、学もなくってセールス稼業。女にも縁がございません。彼を心配してくれるのは故郷のお袋さんだけっす。

まんま、アメリカ人版の寅さんだが、山田の演出は彼に相当に力入ってて、流している感はない。ひなびた日本の都会の片隅を重い鞄抱えて歩く巨躯がもの悲しい。

 

本作は、そういう異分子が加入して、通常の山田の規範を逸脱しそうになるのが相当にスリリングだ。さくらに纏わる挿話が、これ程にキャプチャーされたのは1作目を除くと最初で最後だろう。

 

まあ、その分、寅とマドンナ香川京子の話は薄いのだが、シリーズの終盤は全作こんな感じだから気になりませんでした。

 

寅バッタもんでなく巧緻な合せ鏡エデルマンの佇まいが良い。巨躯を折り曲げ京都鴨川架橋を行く寂寥。同時進行する2つの恋は予定通りの顛末だが寅屋2階での2人のリアクションはシリーズ上位のリリシズムと思う。上野高架下での別れもハードボイルド。(cinemascape)

 

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