男の痰壺

映画の感想中心です

黒い牡牛

★★★ 11月28日(月) 11月28日(月) シネリーブル梅田4

もう全篇、少年の牡牛愛ダダ漏れに塗れた映画で、「ヒターノ、ヒターノ」と牛の名を連呼するそれが耳に五月蝿い。

まあ少年ってのは、動物好きと相場が決まっており、定番の王道が犬なんでしょう。けど、幼少期、団地住まいだった俺は犬など飼ったことなく、飼うのは昆虫・魚貝・鳥類・爬虫類などであった。トンボ・蝶・バッタ・蟻んこ・蟻地獄・カナブン・クワガタ・カブトムシ・カイコ・カエル・うなぎ・メダカ・亀・イモリ・タガメ・ザリガニ・どじょう・ミミズ・インコ・文鳥などなど。その大半は家の周りで獲ってきたもんで、1、2日は愛でていても後はほったらかしで皆死んでしまいました。少年とは残酷なもんなんです。

とまあ関係ない話書いてしまいましたが、この少年のヒターノ愛はすごいです。

 

本作はダルトン•.トランボが赤狩りにより潜伏期に仮名で書いた脚本がアカデミー賞を受賞したことで映画史に刻印されるものですが、それなら「ローマの休日」で刻印されたら良かったのに、なんて思ってしまった。

前半、農村部で展開する物語が、後半には舞台が大都会メキシコシティに移る。このロケーションの大きなグラインドが妙味と思う。

闘牛に駆り出され殺される運命のヒターノ救いたいの一念は大統領への嘆願という現代のホラ話から大観衆のシュプレヒコールというおとぎ話へと連なっていく。このへんのたたみ込むダイナミズムはさすがだと思いました。

 

少年の牡牛愛が「イターノ」連呼で多少場煩わしいのだが人それぞれなのだろう。鄙びた寒村から大都会メキシコシティへのロケーションの跳躍が映画的妙味で、そういう中で大統領直訴のホラ話はやがて現代のお伽話へと連結していく。トランボのリリシズム。(cinemascape)

 

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