男の痰壺

映画の感想中心です

コーダ あいのうた

★★★ 2022年4月11日(月) 大阪ステーションシティシネマ

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オリジナルのフランス映画「エール!」未見です。それにしても「ウエスト・サイド」にせよ本作にせよリメイク作品が賞争いをするアカデミー賞の薄味さ。アメリカ映画の層としての絶対的な痩せ細りを感じる。低予算のインディーズとマーベル、ディズニーしかないんちゃうやろか。

 

歳とって涙腺緩んでますから泣きましたけど、作劇の甘さは拭い難いと思います。

聾唖の両親と兄という障がい者一家の唯一健常者の娘が主人公で、彼女は歌が好きで才能もある。考えてもいなかった遠方の音大への道が開けそうになったとき彼女はどうするか。ってのが話のメインであるが、その葛藤が本線であるにもかかわらず描き方が足りないと思いました。

多分、実際はそんなに簡単じゃない。自分が今まで家族と外社会との通訳を担ってきたわけだから、自分の不在は即、家族が社会とのコミュニケーションを断たれることになる。もちろん映画でも葛藤はする。しかし、家族を棄てる引け目と自分のアイデンティティの確立への希求の鬩ぎ合いはこんなに簡単に解が出るもんでもないと思うんです。

そもそもに、彼女の歌が一声聞いたとたんに震憾するようなそんな歌唱力とも思えないのもどうやろかと思いました。

 

良い点もいっぱいある。

彼女とクラスメイトの男子との行きつ戻りつの恋愛の成熟過程は納得性もあり、素直にええなー思いました。

漁村の港や卸売り場やパブなどの醸す地方都市のムード。漁に出た海上の景観や作業の自然さも描写に力入っている。

そして何より合唱部の顧問の先生のキャラと演じる役者の良さ。彼の存在が映画の厚みを大きく膨らませてると思いました。

 

旅立ちを引き止める母とケツ押す兄。軋轢は一応描かれるが社会から孤絶する家族を置き去りにする葛藤は生半可ではない。それをバカ陽気キャラを立て逸らしてる感も。デュオ組む少年や顧問の音楽教師のナイスキャラ。漁港町の風情など本当に素晴らしいのだが。(cinemascape)

 

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