男の痰壺

映画の感想中心です

白い牛のバラッド

★★★ 2022年2月26日(土) 大阪ステーションシティシネマ

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扱っているテーマも演技と演出も文句をつける筋合いはない。でも、1イシューをその通り描いただけみたいな物足りなさを感じた。

それは何だろうと考えるに、主人公の女性の葛藤の描き足りなさであるし、或いは映画の余白の少なさと言えるかもしれない。

まあ、そう感じるのはイスラムの死生観が根本的に理解できてないことによるのかもしれませんが。

 

【以下ネタバレです】

誤審をして無実の男を死刑にしてしまった。残された妻と娘が窮地に陥っている。そして、自分には彼女らを援助できる金銭的余裕がある。

これらの要件がそろったとき、男のとった行動は心情的に理解できるし、やり方のマズさはともかく責められるべき筋合いのものじゃないと思える。

 

であるから、女のとった行動は、そりゃあんまりだぜとの思いが拭えない。先述した心情の描き足りなさを感じてしまう所以です。

冤罪で死んだ亭主への想いや、彼女を取り巻く世の中の生きにくさや、新たな男へ徐々に心を開いていく揺らめきなど、それらは勿論描かれてはいるのだが、惜しむらくは半歩足りないように思えるのです。

 

原理主義ムスリムの善悪観が西洋的なそれのフィルターを通さないで提示される。ことの真相がわかってからの短兵急な展開に今一つの逡巡や葛藤があればと思うのはイスラムへの驕りであろうか。悪い奴はいないのだ。全ては司法システムの問題。そこはわかる。(cinemascape)

 

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