映画1990
★★ 1990年○月○日 ○○劇場 1・2話は覗き見るという視線の映画的効用と児戯性が題材に相応で良い。しかし3・4・5話の異端性の弾けないことがエッジの喪失を感じさせ、6話以降は凡庸なメッセージに映画は牛耳られる。それはストレートと言うより幼稚でさえ…
★★★★★ 1995年2月12日(日) ACTシネマテーク 平素がどうであれ男達が有する内に秘めた怖さの突発的表出に対する既視感を繰り返しクローズアップ。わけてもたけし・渡嘉敷コンビの個人史に基づくリアリティが傑出してる。シュールな展開も脳内組成でない肌感…
★★★ 1995年2月19日(日) 新世界東映 「女帝」としての覇権を得るまでの話であって題名に偽り有りだと思うのだが、まあ、それなりにはおもろい。脇での名取・草笛の老若老練コンビが良く、十朱1枚看板では苦しいところを好サポート。しかし、思うのだが、大奥…
★★★ 1994年4月2日(土) みなみ会館 良くも悪くも優等生的であり、小綺麗にまとまっているものの、話法が妙にこなれ過ぎてて却って面白みがない。本来もっと激しく骨太で土俗的にプリミティブであって欲しかったと思わせる題材であるし、阿るだけで批評性が無…
★★★★ 1992年10月4日(日) 大毎地下劇場 時間的な頃合いといい出来良い短篇小説の趣があり映画としてのバランスはパーフェクトなものだが、完璧すぎてあまりに夾雑物がなくこれでええのかと戸惑う。幾つもの謎は放置されたまま踊るしかないのかと煙に巻かれる…
★★★★★ 2002年10月11日(金) 扇町ミュージアムスクエア 他律的に壊れていく男を描いた映画は山ほどあるが、自覚し受容し淡々と運命を受け入れるこの中年禿デブおっさんは何処か哀しく愛おしい。縦構図の充足感とドレスの少女を始め充血眼のゲンズブールに至る…
★★★★ 1993年4月25日(日) トビタシネマ 深夜の片田舎の駅の風情など列車ものの情緒が過不足なく織り込まれ、ほぼノンストップで突っ走るアクション映画の佳作。ハックマンの安定感で物語の重心も素晴らしく据わる。撮影も兼務し全てを弁えたハイアムズの娯楽…
★★★★ 2002年12月13日(金) 扇町ミュージアムスクエア 閉塞状況から逃れ得なくば人は逃避し破壊し、さもなくば自壊する。自壊男に殉教する男が縋る「透明ランナー」は所詮幻影。妹が「ざけんじゃねえ」と街の喧噪に突き進むのが救い。青臭くてたまらん部分も多…
★ 1993年6月26日(土) 天六ユウラク座 それしかないから稼業に身を窶すのであってフリーター感覚で何時でもおさらばなぞと冗談も大概にしさらせ。柄でもない今風2枚目2人が腰の座らぬ稼業風を吹かしうざったいことこの上なく挙句に純情恋のトライアングル芝…
★★★★★ 1993年8月6日(金) みなみ会館 隔絶された虚空間で、或いは夜の静寂で決してクロスしない5人の男女の想い。登場人物たちの息詰まりそうな閉塞感を亜熱帯林に舞台を移して解放するかに見えた語り部の視座が突如、神の視座に飛躍するかのようなラスト。…
★★★ 1993年7月11日(日) 新世界東映 「実録」的題材なのだが、あくまで筋を通そうとする中井貴一の立姿は「任侠」のそれであり安定感がある。組織もへったくれもない個のドラマツルギーに矮小化されゆく90年代実録路線の端境期に位置する70年代の残り香。…
★★★★★ 1993年8月5日(木) ゆやホール 極めて日本的私小説世界を描いても他の同系作品から遙かな地平に到達し得たのは渡辺文樹作であったという1点に尽きるとは思うが、とにかく腹を抱える事請け合いの抱腹絶倒ムービー。全てを曝け出すこいつの前で小手先の…
★★ 1993年8月8日(日) みなみ会館 民族史的アイデンティティを問うのに母娘の確執に集約するのであれば、いっそのことベタな情感に流れても良かったのではないだろうか。静謐にクールであることで何も浮かび上がってこないし見えてもこない。良い題材だとは思…
★★★★★ 1993年12月27日(月) ACTシネマテーク こういう芸当が出来るのであればカウリスマキも閉じた自家籠中の世界に拘泥せずに、もっと芸域を広げられる筈とも思わせる。神経症的な緻密さと縦移動を始めとした技巧が冴えわたる珠玉作。(cinemascape) kenir…
★★★★★ 1992年4月21日(火) シネマヴェリテ 予想を超えた不幸の連鎖に対するに、生態観察するが如き視線の冷淡だが、そこはかとない微妙なユーモアが感じられる。そこがブレッソン的冷徹と差異化する。日常的地獄を越境して達する更なる次元。そのことを描くこ…
★★ 1992年3月28日(土) シネマヴェリテ アメリカの片田舎の黄金色の麦畑と猟奇的な子供殺しや、あくまで明晰な陽光と悪魔儀式めいた室内描写等、解像度の良すぎるフィルムの中の2項対立が全く心に沁みて来ず、これ見よがしにしか思えないのは、アイデア先行…
★★★ 1992年8月9日(日) 日劇会館 寅どころか満男さえも脇役に甘んじるゴクミシリーズ2作目にして彼女1本かぶりのお話なのだが、それが又何ともありきたりのファザコン内容で、狼狽するだけの唐変木満男に鬱憤が蓄積し寅は寅で夏木マリから歯牙にもかけられ…
★★★★★ 1992年5月15日(金) 毎日文化ホール 愛の儚い残滓を観念で希求しても、結局その不在を確認する道行でしかない。相手の死により終焉するどころか、最果ての砂漠の深遠に埋没し、その先の行くところまで行く。この感覚が堪らない。『ラストタンゴ・イン・…
★★★ 1992年9月12日(土) 毎日文化ホール マッチョで愚直で体制的なのと腺病質で不真面目で反体制な2項対立が配置されるが、どっちもどっちで相当に嫌な野郎なのが新味とも言える。ペレストロイカがもたらす自由とデカダンの萌芽が生硬な図式を氷解させても困…
★★ 1991年2月24日(日) 新世界国際劇場 『アフリカの女王』製作裏話的なケレンとハッタリが全く無いところを良いと思うか物足りないと思うかだが、50年代ハリウッドの豊穣さを期待するとうそ寒い。撮影そっちのけで象ハンティングに没頭する映画監督の心の…
★★ 1991年3月17日(日) 天六ユウラク座 過去に縋るしかない敗残者たちが1人の少女の為に今一度戦うわけだが、若松には余りに真っ当すぎるドラマトゥルギーで、何を間違ったかダサい情緒に支配された救いがたい展開。論理に基づいた筈の闘争の行き着く果てが…
★★★★ 1991年3月21日(木) 新世界国際劇場 何事も極めることで善悪の彼岸を越え透徹した境地に至る。グレイという低能毒まみれのエグキャラが統御されこれほどの佳作に仕上がったのは同レベルのバカハーリンと何かがシンクロしたからだ。そういう意味で映画史…
★★★★ 1991年4月7日(日) トビタシネマ 停滞の80年代を経たルメットの90年初頭に出た快打。であると同時にブクブクに増量したノルティ乾坤一擲の気合いに一気に引き込まれる。単純な善悪論から多重な問題提議に及ぶかに見せ、鯔の詰まりベタに収束させると…
★★★ 1991年4月21日(日) シネマアルゴ梅田 漫画だから成立するストーキングに近似な行為を延々と繰り返すキャラクターの支離滅裂は生身の人間が演ずるが為に程良い案配に収められ少し出来の良い青春映画以上のものではなくなった感じがするが、高岡早紀のおっ…
★★★★★ 1991年5月8日(水) 北野劇場 新世代を担うガルシアの弱さとバチカンを相手に設定し無力感が横溢する点を割り引いても、キートンやシャイア始め出演者達各様の風月を思わせる歳のとり方が14年の歳月の重みをドキュメンタルに表出する。そしてオペラの…
★★ 1991年5月4日(土) 天六ユウラク座 シュレンドルフのダメさが露呈。ハリウッドトップの役者陣にピンター脚本坂本音楽と布陣だけは豪華だが、形式主義的な衣裳や美術がオリジナリティ皆無。骨子のストーリーラインが陳腐なのは元から知れてるのに挿話の付加…
★★ 1991年5月25日(土) トビタ東映 石田えりがミスキャストと言う以前に、これは相当なメイクアップ技術を前提に企画されなければならなかったものの筈である。安易な企画と妥協は、こうも惨憺たる結果を招くということだ。山田太一の自らを晒した切なる思い…
★★★★ 1991年6月2日(日) トビタシネマ 弁護士・FBI捜査官・主婦と主要な3人の女性がチミノ流に逸脱の気配を纏わせるがラウレンティスに抑え込まれたのだろう。結果、テンポが良く切れ味も予想以上の好篇となった。世間から徐々に忘れられつつあった男達が…
★★ 1991年7月7日(日) 祇園会館 『スタ誕』の昔からめんめんと語り継がれる食傷気味なハリウッド内幕再生物語に何ひとつ新味ある解釈を加えずに御用監督に成り下がったニコルズ演出も黄昏の醜態を晒す。せめて、リアリズムかコメディか位は明確にしてほしかっ…
★★★★★ 1991年8月16日(金) テアトル梅田2 極楽恋愛道を往く2人の地獄巡りは「ラブ・ミー・テンダー」で強引に帳尻を合わせたが屹立してるのは地獄の方であった。怖いヤーさんが退いた後を締めるイザベラとデフォーの変態的存在感。マッチの炎とバダラメンテ…