男の痰壺

映画の感想中心です

映画2002

自殺サークル

★★★ 2002年○月○日 テアトル梅田2 3流なスプラッター描写も陳腐なサスペンス描写も辟易するが、一方で寺山映画のJ・A・シーザーを彷彿とさせる鎮魂歌のような音楽の吸引力。途方も無い絶望感に覆われた21世紀初頭の日本を描いて文句無く哲学ホラーとし…

スパイダーマン

★★★ 2002年5月11日(土) OS阪急会館2 遙か彼方より筋斗雲に乗った孫悟空よろしく飛来するゴブリンのスーパーナンセンスな素晴らしさには参ったが、そのゴブリンが私的な復讐に終始する物語世界の卑小さが致命的。スパイダーマンがビルの谷間を飛ぶ飛翔感に…

突入せよ! 「あさま山荘」事件

★★★★ 2001年5月14 日(火)~15日(水) ホクテンザ1 反体制への肩入れこそ良しとの亡霊が蔓延る業界内で官憲側から事件を描いた映画を撮るのは勇気が要ったと思うが原田は元々そういう自意識とは無縁だったのだろう。ショットの連結が産むリズムにこそ映画の真…

パニック・ルーム

★★★★ 2002年5月27日(月) 梅田ピカデリー3 『北北西』的タイトルも『フレンジー』的長廻しも今風なヒッチ風味で愉しく、ウィティカーの男気に50年代アメリカンノワールの匂いを嗅ぐ。「パニックルーム」という如何にもな設定は後方に追われオーソドックス…

KT

★★★ 2002年6月5(水) 動物園前シネフェスタ3 三島に心酔し石原を引用する極右将校が必ずしもファナティックである必要は無いとは思うが、やはり、この創造人物を歴史に割り込ませる必然性が希薄。そして何より主権を蹂躙されても弱腰外交な日本の官・軍・民…

荒ぶる魂たち

★★★ 2002年6月3日(月)~4日(火) ホクテンザ1 「若き狂犬」とも言うべきルーティーンキャラを逆手に取ったような熱いようで冷めてる加藤雅也と『柳生一族』の錦之助も真っ青な松方の大芝居が対極的で面白いが、対立軸を次々ずらしてダラダラ引っ張りすぎ。長…

模倣犯

★★★ 2002年6月13日(木) 梅田劇場 市井の人々に限りない思いを寄せる宮部に対し時代の先鋭をどうしても持ち込みたい森田の思惑の結果が山崎の部分が映え中居の部分が舌足らずというのでは原作にねじ伏せられた形だと思う。犯人側の描写が薄すぎ。(cinemascape)…

メン・イン・ブラック2

★★★ 2002年8月8日(木) 梅田ピカデリー3 ウィル・スミスが引っ張る非日常が常態である序盤の異空間が素晴らしかったのに、ジョーンズが出て来て予定調和の自己回復が主眼となり、おざなりとしか言えない涙を見せられるに至ってはシラけ気分が極まった。(cine…

OUT

★★★★★ 2002年10月21日(月) 梅田ピカデリー1 誰もが一線を越えたいと思っているし越えてしまえるのだということ、そして、その後には刹那であるにせよ人は解放される。日本版『テルマ&ルイーズ』めいてもディテールの巧さがカバーし切る。原田は良くて当り…

実録・安藤昇俠道伝 烈火

★★★★ 2002年11月5日(火) ホクテンザ2 『DOA』丸出しの出だしから舐めとるなあと思って見ていると、中盤までの予定調和を美木と山口コンビがぶち壊す。どこまで行くのかっちゅう逸脱ぶりは相変わらずでも程良く心地良い。志賀の親爺が久々に儲け役だしラ…

サイン

★★★ 2002年11月2日(土) 梅田ブルク7シアター7 世界の終末を田舎の1軒屋に限定して描くというのは思いつきそうな話だが、それにリンクさせた超常現象にアメリカンタブロイド的レトロチープさを持ってくるのは完璧に新鮮で巧い。しかし、信仰の回復にまつわ…

たそがれ清兵衛

★★★★★ 2002年11月11日(月) 梅田ピカデリー1 初時代劇への拘りの成果が殊更あったとは思えない。しかし、血糊や死体にたかる蠅等は、意外な抽斗とは思わないにしても、よくぞ踏み切ったものだと思う。男女の思い思われ恥ずかし世界と親子の情愛は同じような…

金融破滅ニッポン 桃源郷の人々

★★★★ 2002年11月5日(火)~6日(水) ホクテンザ2 どんなコンゲームを見せてくれるのかと思えば単なる株価操作で利幅も2000万とは何とも庶民的。まあそれも原作ありきと思えば納得するしかない。正直物足りないが、三池・相川コラボの逸脱作として乃至は室…

マイノリティ・リポート

★★★ 2002年12月16日(月) ナビオTOHOプレックス1 プリコグによる予知が、ああいう具体的映像になる発想をした時点で負けてる。それをパズルみたいに絵解きする様は子供っぽすぎて萎える。喪失感を薬で埋める虚無感がもっとハードに突き抜けて欲しいし、…

アレックス

★★★★★ 2003年2月10日(月) 梅田ブルク7シアター7 地獄絵図から遡行する閉じた時間軸がいつぞや折り返し、恒久の平安に至って開放される手法にアイデアではなく必然を感じた。圧倒的な筆力で語られる「劇」なる愛と怒りは表裏の関係であることを自問自答させ…

アカルイミライ

★★★★ 2003年2月15日(土) シネリーブル梅田1 暗喩としての「友人」や「クラゲ」は生硬と感じるが突然視野が開けて世界観が変わるのは解る気がする。前世代の屍を足掛かりに閉塞から殻を破って飛び立つ主人公は、やがて次なる世代に乗り越えられるだろう。そ…

刑務所の中

★★★ 2003年2月11日(火) 梅田ガーデンシネマ1 一種の諦念に彩られた諧謔の世界という意図があからさまで、しかも、演じるのが安易なる売れ線バイプレーヤーのオールスターとあっては余りに工夫が無さすぎ。画面造形も平凡。(cinemascape) kenironkun.hatenab…

マッスルヒート

★★★ 2003年3月10日(月) ホクテンザ1 どうにも甘ったるいおぼっちゃん顔で損しまくりのケインだが、さすが体技は半端じゃないね。オリジナリティ皆無だが米近未来B級アクションをそれなりに日本に移植して悪くない。哀川・加藤・金子3人のキャラも良く立ち…

ディレイルド 暴走超特急

★★ 2003年3月21日(金) ホクテンザ2 馬鹿レトロなオモチャの列車であっても、『カサンドラ・クロス』まんまであっても我慢はするが、思いつきでやっつけたかの如き編集の痴呆振りには我慢が出来ない。バン・ダムらしい当りキャラであったしローラ嬢の女泥棒…

スパイキッズ2 失われた夢の島

★★ 2003年4月18日(金) トビタシネマ 子供が主人公の映画が嫌いなわけじゃないが作り手の大人が子供に媚びた映画は反吐が出そうだ。葛藤というものがない迎合的な出来合のお子様ランチを嬉々として作る大人は気持ち悪い。1作目の不快部分の拡大再生産。ハリ…

戦場のピアニスト

★★★★ 2003年5月5日(月) 三番街シネマ3 ホロコーストへ移送される家族との別離をも瞬く間に流して行き1歩間違えればコメディになりそうな流される主人公の流転の果てが傍観者を経ての終末的孤独というオリジナリティある作劇。前半のゲットーが圧倒的なだけ…

8人の女たち

★★★★★ 2003年5月8日(木) 梅田ブルク7シアター5 大輪ドヌーブを囲んで3人の隠花が撒き散らす毒気は反応し合い、やがて度し難い美へと昇華するだろう。ヌーベルバーグの遺産を血流に残す最後の世代を新世代のオゾンが統合し仏映画の伝統と展望を感じさせる…

めぐりあう時間たち

★★★★★ 2003年6月3日(火) 梅田ピカデリー2 「痛み」を伴う「生」を描くのに絶妙な間を意識した演出。それが最高ランクの女優と噛み合うと、これほど濃密な空間を産み出せるのであろうか。主演3人とも良いがストリープのリアクション芝居には今更だが舌を巻…

トエンティマン・ブラザーズ

★★★ 2003年7月19日(木) 天六ユウラク座 弛緩した映画だとは思うが、その弛緩ぶりが好ましく思えるのは、3兄弟が切れそうで切れない「ええ奴」だからだろう。なのにガイ・ピアースの女房だけは余りに「どうもな女」であかんと思う。(cinemascape) kenironkun…

トーク・トゥ・ハー

★★★ 2003年8月5日(火) テアトル梅田2 同病相憐れむ男達の被虐の友情が帰結であったのなら、女闘牛士等という奇矯な設定が必要だったのかと思う。何より、こうも変態的且つ一方的な愛が正当化されるべくも無く、アルモドバルのどっちつかずのスタンスが映画…

HERO

★★★ 2003年8月19日(火) 梅田ピカデリー4 講談調語りに『切腹』、兵士と馬に『影武者』の影響を色濃く滲ませた極彩色武侠映画。殺陣は本職同士より出来ない役者のそれに誤魔化しの美を見る。チャンとレオンを削ってでも我欲を捨て死地に赴くリーの悲愴と達観…

ファム・ファタール

★★★ 2003年9月7日(月) OS劇場 ドーンとタイトル「ファム・ファタール」と構えた割には所詮デ・パルマに本質を衝いたものが出来るはずもなく、自走する女優に救われる可能性もあったろうがレベッカ嬢に魅力もオーラも無い。さすれば出歯亀バンデラスも全く…

鏡の女たち

★★★★ 2004年3月6日(土) リサイタルホール 途方もない喪失感や内向する静かな苦渋を描いて60年代のレネやアントニオーニ作品を想起させるし意識もしてると思う。細密に割られた編集技巧は粋を極め映画のダイナミズムとは視点の縦横な切り替えにこそあること…

ドッペルゲンガー

★★★★ 2004年3月11日(木) リサイタルホール ダークサイドの二重身と言うより抑圧から解放された者こそが生き延びると言うならばテーマとしては安直で、『回路』と同様に稚拙さを感じる。が、油断のならない男達が醸す緊張感にコメディエッセンスが絶妙に調和…

ぼくんち

★★★★ 2005年3月18日(金) トビタ東映 少年は故郷を棄て女は故郷に回帰する。寺山的或いは黒澤『どですかでん』的邑社会に纏わる出入りの物語は多分に形骸的だが特筆すべきは観月ありさ。生なピンサロ嬢も神々しき慈母性も同時に存在そのものが体現。これが要…