男の痰壺

映画の感想中心です

映画2002

美しい夏キリシマ

★★★★ 2015年8月22日(土) シネヌーヴォ 地方のコミューンのエロスとタナトスの混在を描いて『祭りの準備』姉妹篇の趣があるが、男が不足する世界で枯れた原田が色気を抑え基軸となり世界をこちら側に繋ぎとめている。総じて女優陣も素晴らしいが、それ以…

ギャンブル・プレイ

★★★ 2004年○月○日 ○○劇場 骸骨めいたノルティと髪型不似合いのカリョの『ルパン三世』的共感は類型的だが、少なくとも前半に関しては『クライング・ゲーム』的裏街道ムードも多少は感じられた。しかし、うっちゃられたような最後はカタルシスの欠片も無く徒…

自殺サークル

★★★ 2002年○月○日 テアトル梅田2 3流なスプラッター描写も陳腐なサスペンス描写も辟易するが、一方で寺山映画のJ・A・シーザーを彷彿とさせる鎮魂歌のような音楽の吸引力。途方も無い絶望感に覆われた21世紀初頭の日本を描いて文句無く哲学ホラーとし…

スパイダーマン

★★★ 2002年5月11日(土) OS阪急会館2 遙か彼方より筋斗雲に乗った孫悟空よろしく飛来するゴブリンのスーパーナンセンスな素晴らしさには参ったが、そのゴブリンが私的な復讐に終始する物語世界の卑小さが致命的。スパイダーマンがビルの谷間を飛ぶ飛翔感に…

突入せよ! 「あさま山荘」事件

★★★★ 2001年5月14 日(火)~15日(水) ホクテンザ1 反体制への肩入れこそ良しとの亡霊が蔓延る業界内で官憲側から事件を描いた映画を撮るのは勇気が要ったと思うが原田は元々そういう自意識とは無縁だったのだろう。ショットの連結が産むリズムにこそ映画の真…

パニック・ルーム

★★★★ 2002年5月27日(月) 梅田ピカデリー3 『北北西』的タイトルも『フレンジー』的長廻しも今風なヒッチ風味で愉しく、ウィティカーの男気に50年代アメリカンノワールの匂いを嗅ぐ。「パニックルーム」という如何にもな設定は後方に追われオーソドックス…

KT

★★★ 2002年6月5(水) 動物園前シネフェスタ3 三島に心酔し石原を引用する極右将校が必ずしもファナティックである必要はないとは思うが、無用に内省的に過ぎ敢えて史実に挿入する蓋然性が希薄。そして何より主権を蹂躙されても弱腰外交な日本の官・軍・民を…

荒ぶる魂たち

★★★ 2002年6月3日(月)~4日(火) ホクテンザ1 「若き狂犬」とも言うべきルーティーンキャラを逆手に取ったような熱いようで冷めてる加藤雅也と『柳生一族』の錦之助も真っ青な松方の大芝居が対極的で面白いが、対立軸を次々ずらしてダラダラ引っ張りすぎ。長…

模倣犯

★★★ 2002年6月13日(木) 梅田劇場 市井の人々に限りない思いを寄せる宮部に対し時代の先鋭をどうしても持ち込みたい森田の思惑の結果が山崎の部分が映え中居の部分が舌足らずというのでは原作にねじ伏せられた形だ。犯人側の描写が薄すぎ。デジタルの安さも戦…

スター・ウォーズ エピソード2 クローンの攻撃

★★★★ 2002年7月20日(土) 北野劇場 次々と繰り出される戦闘機械やクリーチャーの圧倒的な物量が素直に素晴らしく、終盤30分のバトルは目眩く圧倒感。しかし、所詮は解ってる結末に向かい整合性を付けるべく展開されるアナキンの変容が、どうにもヒネリなく…

メン・イン・ブラック2

★★★ 2002年8月8日(木) 梅田ピカデリー3 ウィル・スミスが引っ張る非日常が常態である序盤の異空間が素晴らしかったのに、ジョーンズが出て来て予定調和の自己回復が主眼となり停滞する。おざなりとしか言えない涙を見せられるに至ってはシラけ気分が極まっ…

トータル・フィアーズ

★★★ 2002年8月19日(月) 梅田スカラ座 現実はそんなものだとしても、世界の終末の到来を余りお手軽には描いて欲しくない。米も露も簡単にゴーサイン出しすぎ。それがジャック・ライアンの色恋に割かれた為ならバランス感覚の欠如と思う。その瞬間を爆風のみで…

インソムニア

★★★★ 2002年9月12日(木) 梅田ピカデリー4 冒頭の氷雪世界からして映画の魅力とはストーリーもさることながらムードの醸成であると再認識。諸刃の剣のアップ多用をパチーノの味でモノにし、稚拙なフラッシュバックへの不満も遠のいた。ウィリアムスの抑制も…

バイオハザード

★★★ 2002年9月20日(金) 梅田ピカデリー2 原ゲームテイストを踏襲した洋館から研究所への入口設定にはかなり心躍る。『マタンゴ』や『ゴケミドロ』を彷彿させる終末ラストも久々の決まり具合。だが対AI攻防後の中盤のゾンビ展開に関して目新しいものはない…

OUT

★★★★★ 2002年10月21日(月) 梅田ピカデリー1 誰もが一線を越えたいと思っているし越えてしまえるのだということ、そして、その後には刹那であるにせよ人は解放される。日本版『テルマ&ルイーズ』めいてもディテールの巧さがカバーし切る。原田は良くて当り…

実録・安藤昇俠道伝 烈火

★★★★ 2002年11月5日(火) ホクテンザ2 『DOA』丸出しの出だしから舐めとるなあと思って見ていると、中盤までの予定調和を美木と山口コンビがぶち壊す。どこまで行くのかっちゅう逸脱ぶりは相変わらずでも程良く心地良い。志賀の親爺が久々に儲け役だしラ…

ロード・トゥ・パーディション

★★★★★ 2002年11月4日(月) 梅田ブルク7シアター6 この親爺のような生き様を息子に見せたく、このガキのように逞しく生きていって欲しいと息子達には思う。正直ツボにはまってしまった。コンラッド・ホールの撮影が良く見えるとしたら、今のプラスティックな…

サイン

★★★ 2002年11月2日(土) 梅田ブルク7シアター7 世界の終末を田舎の1軒屋に限定して描くというのは思いつきそうな話だが、それにリンクさせた超常現象にアメリカンタブロイド的レトロチープさを持ってくるのは完璧に新鮮で巧い。しかし、信仰の回復にまつわ…

たそがれ清兵衛

★★★★★ 2002年11月11日(月) 梅田ピカデリー1 初時代劇への拘りの成果が殊更あったとは思えない。しかし、血糊や死体にたかる蠅等は、意外な抽斗とは思わないにしても、よくぞ踏み切ったものだと思う。男女の思い思われ恥ずかし世界と親子の情愛は同じような…

金融破滅ニッポン 桃源郷の人々

★★★★ 2002年11月5日(火)~6日(水) ホクテンザ2 どんなコンゲームを見せてくれるのかと思えば単なる株価操作で利幅も2000万とは何とも庶民的。まあそれも原作ありきと思えば納得するしかない。正直物足りないが、三池・相川コラボの逸脱作として乃至は室…

マイノリティ・リポート

★★★ 2002年12月16日(月) ナビオTOHOプレックス1 プリコグによる予知が、ああいう具体的映像になる発想をした時点で負けてる。それをパズルみたいに絵解きする様は子供っぽすぎて萎える。喪失感を薬で埋める虚無感がもっとハードに突き抜けて欲しいし、…

ピンポン

★★★★ 2003年1月21日(火) サンケイホール 「卓球」と「CG」と「窪塚」…食指のわかない3題話みたいだし、王道的スポ根ものを逸脱するものでもない。しかし、「スマイル」と「アクマ」という脇キャラの造形が頭抜けて良く、ありがちな天才と凡人の構図を多重…

アレックス

★★★★★ 2003年2月10日(月) 梅田ブルク7シアター7 地獄絵図から遡行する閉じた時間軸がいつぞや折り返し、恒久の平安に至って開放される手法にアイデアではなく必然を感じた。圧倒的な筆力で語られる「劇」なる愛と怒りは表裏の関係であることを自問自答させ…

アカルイミライ

★★★★ 2003年2月15日(土) シネリーブル梅田1 暗喩としての「友人」や「クラゲ」は生硬と感じるが突然視野が開けて世界観が変わるのは解る気がする。前世代の屍を足掛かりに閉塞から殻を破って飛び立つ主人公は、やがて次なる世代に乗り越えられるだろう。そ…

壬生義士伝

★★★ 2003年1月28日(火) 梅田ピカデリー4 家族への深い思いと義を通すということ。前者は過不足無く中井の熱演もあり正直号泣ものだが、構成的に後者に転回していく部分が詰めが甘く舌足らず。『御法度』という曲者揃いの新撰組を見たあとでは今回は何となく…

刑務所の中

★★★ 2003年2月11日(火) 梅田ガーデンシネマ1 一種の諦念に彩られた諧謔の世界という意図があからさまで、しかも、演じるのが安易なる売れ線バイプレーヤーのオールスターとあっては余りに工夫が無さすぎ。画面造形も平凡。(cinemascape) kenironkun.hatenab…

新 仁義なき戦い 謀殺

★★★ 2003年2月18日(火) ホクテンザ1 縮小再生産の感も時代の変遷と置換可能な高橋に文太・旭の、渡辺に松方・千葉の、小林に金子の、そして新人監督に深作・笠原の精魂が憑依したかの如き正統的『仁義なき戦い』の嫡子。白昼の市街戦が即物的なのも良。(cin…

呪怨

★★ 2003年2月25日(火) テアトル梅田1 この監督の頭には「決め」の絵はあったかも知れないが物語の構築には興味が無かったらしい。起と承を御座なりにした転と結だけの串団子が侘しく、古今東西の映画の物真似オンパレードも情けなく恥ずかしい。女優が皆可…

ごめん

★★★★ 2003年2月28日(金) リサイタルホール ああ…俺も今一度小六に戻り中学生のお姉さんに恋したい。少年が異性を意識し始める極めてヴィヴィッドな瞬間を最強の設定ですくいあげた佳篇。やむにやまれぬ気持ちで走り続ける彼には誰もが重ね合わせる自分を持っ…

ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔

★★★ 2003年3月7日(金) 梅田ピカデリー1 絶対悪を設定し厭戦論者も消極派をも戦いに駆り立てる構図に時節柄キナ臭いものを感じた。キャラや背景の造形に腐心する余りに展開はおざなりで多分に予定調和。空撮多用もフレームで切るという可能性を閉ざす。パラ…