男の痰壺

映画の感想中心です

映画1984

ストップ・メイキング・センス

★★★★★ 2024年2月5日(月) 大阪ステーションシティシネマ6 正直、トーキング・ヘッズにほとんど関心もなかったし、故に楽曲も全く知りません。にもかかわらず、この映画には興奮した。噂に違わぬ傑作だと思います。 「博士の異常な愛情」が印象深いパブロ・…

ときめきに死す

★★★ 2023年9月15日(金) シネヌーヴォ 見逃していてずーっと見たかった作品だが、やはり40年も経ってしまうと鮮度落ちは拭いがたかった。 【以下ネタバレです】 暗殺者の話で、決行までの時間を描いている。殊更に準備するでもなく、ダラダラとした時間が…

エレメント・オブ・クライム

★★★ 2023年7月7日(金) シネリーブル梅田3 見てから3週間も経ってしまってどんな映画だったのか殆ど忘れた。粗筋を読んでみたがそんな内容だったのかい、と今更思ったり。体調も悪くて1/3くらい半覚醒状態だった気もします。 始まってしばらくは、いま…

ゴダールのマリア

★★ 1994年2月24日(木) テアトル梅田2 ミエビユ篇はフランス映画らしい少女期のひとコマをすくい上げた愛らしさがあるのだが、ゴダールの本篇は聖書の現代翻訳というアイデアのみが先行した上、音と映像のコラージュで解体されまくり殆どひとりよがりとしか…

男はつらいよ 寅次郎真実一路

★★ 1992年8月15日(土) 日劇会館 浮世離れた世界の住人だから成立する物語も証券会社の会議室でバナナのお土産ってんじゃ太平楽過ぎで痛々しい。これがサラリーマンについての山田流一考察だとすれば現実との認識ギャップに欠伸でも出そうだ。甘っちょろ過ぎ…

風の輝く朝に

★★★ 1992年8月1日(土) アクア文化ホール 伝説には熱狂をもって形成される過程と時代の変遷とともに上澄みが剥落していく課程がある。俺は後者に於いて作品に遭遇したわけだ。香港映画の愛しくも悪しき似非主義はロマンティシズムの形成にはベタ以外の何者で…

インドへの道

★★★★★ 1991年9月8日(日) ホクテンザ2 性的な抑圧と異文化との邂逅という余りに隔たった命題を、これ程にてらい無く品と格式を横溢させて誰が描けるだろうか。クライマックスをスッパリ切った演出を筆頭に今更と思ったリーン14年ぶりの遺作は、これこそが…

ストレンジャー・ザン・パラダイス

★★★★★ 1988年1月10日(日) 大毎地下劇場 1992年5月9日(土) テアトル梅田2 1993年11月14日(日) ACTシネマテーク ドラッグもSEXも銃も無い殺伐とは無縁な安寧なる寂寥。一方で、無意味な日常を受け入れる寛容。流れ行く2人の男は意図せぬが如くに、物質…

パリ、テキサス

パリ、テキサス★★★★★ 1986年2月15日(土) 大毎地下劇場 寄り添って生きることは苦しいが、喪失は更に耐えようがない。しかし、自己完結な放浪では傷は癒えず、直面し相対することでしか状況は打破できないのだ。そして、少年は大人達を後目に成長を続ける。一…

満月の夜

★★★★ 2010年3月24日(水) 梅田ガーデンシネマ1 身勝手なクソ女と底浅の凡夫どものグダグダ芝居ではあるが、見果てぬ欲望の果てに虚無しか無いことに気づく満月の夜以降、依るべなき生き地獄に叩き落とすロメールの非情。断罪とも言える突き放しは『酒とバ…

ホテル・ニューハンプシャー

★★★★ 1986年12月7日(日) 梅田ロキシー 異質であることの生き難さや死を始め災厄が降りかかるが成るようになるさという大局観が基底にあって、そこを信じられる限り奇矯さはあざとくない。リチャードソンの視線は怜悧だが好対を為す編年記『ガープ』と同様に…

Wの悲劇

★★ 1985年2月3日(日) 友楽会館大劇場 新派劇のような大時代な設定と台詞の数々にパロディを透過して周回し本物としてのエモーションを発動させるに澤井演出は生真面目過ぎ。チープで少女漫画的な女優という虚構が素で晒し出されてとてもじゃないがついて行け…

コットンクラブ

★★ 1985年3月21日(木) 観光会館地下劇場 暗黒と華やぎ。2重の重心が互いを相殺した。『ゴッドファーザー』のエッジの半値で『ワン・フロム・ザ・ハート』の実験性の8割引という廉価版複合体で、コッポラ神話にとどめを刺した。同系ジャンルの成功作には「…

天国にいちばん近い島

★★ 1985年2月3日(日) 友楽会館大劇場 少女は独力で物語を切り開くべきであって爺さん婆さんの出る幕ではないだろう。ニューカレドニアという夾雑物を廃した純粋世界を舞台に選びながら、やってることが不純なのだ。知世は健気にいいけど、やっぱ彼女には太陽…

海燕ジョーの奇跡

★★ 1985年2月16日(土) 観光会館地下劇場 モラトリアム身上の藤田が撮るには徒に劇的であったりするものだから、どっちつかずで主人公の逃亡劇から何を浮かび上がらせたかったのか皆目わからない。鈴木のカメラもマニラを同化も異化もし切れず結局は何の魅力…

ボディ・ダブル

★★★★ 1985年6月15日(土) 大劇名画座 ヒッチコックから気取ったユーモアや英国風厳格を取り除き欲望のままの悪趣味な嗜好を抽出した合せ鏡のようなパロディ。しかもデ・パルマにはテクニックもあるから本気のフリをしても様になる。サバけた世界に、どっぷり…

ターミネーター

★★★ 1985年6月9日(日) 友楽スカラ座 小学生でも考えそうな未来図とタイムパラドックス。典型的B級のウソ寒さに冷えた画面が、しかし、ひとりの俳優のマッチョな肉体の破壊力に帯電し始める。警察署襲撃シークェンスはA級を凌駕し弩級。一世一代の当たり役…

プレイス・イン・ザ・ハート

★★★★★ 1985年7月6日(土) 新世界国際 黒人が虐殺され銀行は搾取しハリケーンは全てを破壊し身内はドン詰まりの不倫に身を窶す。救われぬ時代に生きる術を閉ざされた彼女は寄る辺ない人を受け入れて必死に生きる。そういう母を見て育った子供たちに託す希望。…

恋におちて

★★★ 1985年6月23日(日) 友楽スカラ座 私らこんなんもできるんですって声が聞こえそうな性格俳優たちの3役揃い踏み。肌理細やかな感情表現連発だが柄じゃない感が先に立つ。ベーシックなキャラクタリゼーションでミスった。行き場ないコンプレックスが研ぎ澄…

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー

★★★★ 1984年2月15日(水) 伊丹ローズ劇場 非日常である原漫画を日常に引き寄せた後強引に捻って非日常へ解き放ち驚異的力業で隙間から浸食させる異世界。凝った映像で特に前半の夜のシーンは秀逸ではある。主要キャラを置き去り脇キャラ「メガネ」らをフィー…

風の谷のナウシカ

★★★★★ 1984年4月21日(土) 渋谷東急 1994年4月29日(金) つかしんホール 地政学的広がりと歴史的時間軸を精緻に設定して巨大なクロニクルの一端を垣間見たようなロマンティシズムが発生。清冽な風吹く空と澱む腐海の高低差の表現とそこを縦横に飛翔するダイナ…

男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎

★★ 1984年8月30日(木) 観光会館地下劇場 浅丘ルリ子や岸本加世子といった同系列の女フーテンに比して世荒びの疲弊感も天与の楽天思考も無いマドンナ。寅が加担する意味も理解不可能。加えて渡瀬の役回りなど最後まで煮え切らない展開にも唖然。総じて低調な…

名探偵ホームズ 青い紅玉の巻/海底の財宝の巻

★★★ 1984年4月21日(土) 渋谷東急 割り切って見れば悪いものでもないが、擬人化された犬の温さに宮崎の本気度合いも疑うお仕着せ企画の挿話の接ぎ木で、ド本気作『ナウシカ』の露払いとしても煩わしいだけのカップリング。ただ、地上と中空の絶妙な距離獲得へ…

晴れ、ときどき殺人

★★★ 1984年9月16日(日) トビタ東映 1軒の屋敷で繰り広げられる密室劇を、とにかく1画面内に多くの登場人物をギュウ詰めにひしめかせて見応えはある。しかし、角川第三の新人渡辺典子が非個性的で重く弾けない。ただ、その弾けなさが嫌いじゃない。(cinemas…

いつか誰かが殺される

★★ 1984年10月21日(日) 奈良東映 言うたら酷だが作家としての矜持を売り渡した挙句にヤル気なさで一矢を報いる…なわけなかろうが、そう思わずにはおられぬ気相乗りの無さ。3人娘末妹典子の幸薄き運命とリンクした居たたまれなさだ。多分、彼女が一番聡明で…

ポリスアカデミー

★★★ 1984年10月31日(水) 友楽会館大劇場 破壊のアナーキズムもハートに突き刺さるシチュエーションも気の利いた風刺も無いから食い足りない。只管に多彩なキャラを造形することで突破しようとしているがあんまり面白くない。拳銃狂のタックルベリーが敢えて…

伽倻子のために

★★★★ 1984年12月23日(日) 三越劇場 在日であることのアイデンティティは寧ろ物語の方便としてのみ機能してると見るべきで、特化して描かれるのは社会から孤絶した静謐な世界での恋人同士の時間の絶対的至福。北海道という地勢が生む清涼感と水道管検査人を始…

逆噴射家族

★★★★ 2018年9月9日(日) シネヌーヴォ あー…やっぱ今更見る映画じゃなかったかも。 と見始めて、そんなことを思ったりもした。 色褪せ感というか救い難いズレ感が横溢する。 ATG大全集という企画で見たのだが、むしろ製作に長谷川和彦と高橋伴明がクレジッ…