男の痰壺

映画の感想中心です

映画1972

夕陽の群盗

★★★ 2017年6月24日(土) プラネットスタジオプラス1 ロバート・ベントンのデビュー作で、撮影が「ゴッドファーザー」のゴードン・ウィリスだが、更にカメラオペレーターとしてが「タクシー・ドライバー」のマイケルチャップマンがクレジットされている。 …

候補者ビル・マッケイ

★★★★ 2024年5月4日(土) プラネットプラスワン 「大統領の陰謀」が鳴物入りで公開された1976年にそれまで4年間お蔵入りになってた本作はその2ヶ月後に漁夫の利を狙ってひっそり公開された。でも興業的にも批評サイドからもほとんど無視されてた記憶が…

爆走!

★★ 1974年6月2日(日) 伊丹グリーン劇場 邦題『爆走!』とつけた割にはワンシーンしかないショボいカーチェイスで、よくもまあってのが御愛敬ではあるが、アリステア・マクリーンの錯綜した原作を相当に未整理で展開するので意味わからない。主演2人もニュー…

おかしなおかしな大追跡

★★ 1976年5月16日(日) SABホール スラプスティックはシテュエーション・コメディより難易度が高いことをマザマザと見せつけられる。命を張らんばかりの芸のみが感銘を与え得るのに坊ちゃん嬢ちゃんのママゴト芸を頭でっかちが撮ったって小賢しさしか覚え…

アルフレード アルフレード

★★★★ 1976年8月29日(日) 元映 この世の異界に引き込まれてしまったかの如きシチュエーションは伊映画界にひとり放り込まれたアメリカ人のホフマンだからこそ醸し出せた味だったかも。女難と離婚のジェルミ自家籠中題材への執念を感じるしサンドレッリの可愛…

ゲッタウェイ

★★★★★ 1974年6月2日(日) 伊丹グリーン劇場 逆境下で強まる夫婦の絆がロードムービーの芯を成す。ゴミに埋もれて額に傷を負ったマッグローの愛おしさが2人の道行をドキュメンタルに基底。モンタージュもこなれて粋の極みだ。素晴らしく魅力的なシークェンス…

キャバレー

★★★★★ 1976年10月14日(金) ビック映劇 1981年11月1日(日) 関西学院大学5号別館4号教室 ボーイソプラノが扇動するファシズムの勃興を斜眼で捉まえながらの舞台上と袖で交錯するライザとグレイの視線が全てを見透かすかのように錯覚させる作劇のクールネス…

ゴッドファーザー

★★★★★ 1974年5月5日(日) 伊丹グリーン劇場 1980年8月7日(木) 大毎地下劇場 マフィアによる殺戮連鎖もファミリー結束への拘泥もシチリアでの刹那な愛もそのパッションはギリシャ悲劇めいた悲愴とロジックが上塗りする。しかし、その厳格な統御から突出するブ…

ポセイドン・アドベンチャー

★★★★ 1974年5月5日(日) 伊丹グリーン劇場 「モーニング・アフター」の調べと豪華客船での新年のカウントダウンという設定があるからこそ急転直下に始まる地獄行が帯びる一種の哀切味や、キャラクターが外見と正逆な内面を露呈し始める巧さは、先を急ぐだけの…

J&S さすらいの逃亡者

★★★ 1995年9月9日(土) みなみ会館 見かけはもとより遣ること為すことド汚なく且つええかげんな主人公の70年代マカロニ末期テイストの佳品。演出にはハッタリとケレンが垢抜けなくも窺え一応の訴求力はある。ひとことで言って変な映画だが例によってのんべ…

新兵隊やくざ 火線

★★★ 2002年2月14日(木) トビタ東映 全くもっての在り来たり展開ではシリーズ末期的症状にいくらカラー化や増村再登板をもってしてもリストラクトは適わない。相変わらぬ勝新の暴れっ振りを見てるだけで退屈はしないとは言えホモセクシュアルを匂わす描写は覚…

一条さゆり 濡れた欲情

★★★ 2002年9月26日(木) 東梅田日活 図太い女の成り上がり列伝めいてるのがどうにも川島・今村映画みたいでオリジナリティがあまり感じられない。女優賞を総なめした伊佐山を圧倒する一条さゆりの風格はほんまもんでその点では感銘。脇にまわった白川がこれ又…

男はつらいよ 寅次郎夢枕

★★★★ 1993年5月5日(水) 日劇会館 マドンナに言い寄られて寅が逃げるパターンの初作だが、このパターンの方が切ない。橋の上での煮え切らなく遣りきれない会話が明晰なストーリーを要求する観客の思惑とは逆説的に山田洋次の真骨頂を表出してしまう。『口笛』…

軍旗はためく下に

★★★ 1993年6月13日(日) 日劇シネマ フレームに拘泥しない深作の演出技法が現代パートのドキュメンタリータッチに即応しており寒々とした寂寥が非情を際だたせる。しかし、過去に遡った戦場シーンでは一転ステロタイプな形骸に堕した。これは逆でも面白かった…

約束

★★★★ 2002年12月23日(月) 扇町ミュージアムスクエア 恋愛の成立過程がお世辞にも精緻とは言えないが、冬の山陰の薄暗さの中で展開されるド演歌模様がルルーシュばりのカメラとレイばりのムードミュージックにのって展開されるミスマッチに心揺さぶられる俺は…

純子引退記念映画 関東緋桜一家

★★★ 2003年8月21日(木) トビタ東映 「引退記念映画」と銘打つからには頭からケツまで純子べったりであるべきなのに、いつしか比重は健さんと鶴田の毎度の渡世の義理の世界へ。恩人マキノを立てた為『緋牡丹博徒』で花道を飾れなかったのが気の毒だが復帰した…

私のように美しい娘

★★★★ 2003年10月14日(火) 梅田ガーデンシネマ2 デ・シーカ・ジェルミからフェリーニ・パゾリーニへと連なるイタリア艶笑譚の血脈を完璧にトレースしたトリュフォーの職人芸。狂騒と泥臭さまで堂に入ったものだが、ギイ・マルシャンの歌だけでも見る価値はあ…

株式会社 ザ・カンパニー

★★★★ 1992年11月14日(土) キリンプラザ大阪 モノクロームの折り目正しい画面から昭和30年代の日本映画にあったようなモラリズムが感じ取れる。得るものがあれば失われるものもあるというメッセージは真っ当すぎるにしても、突き放すがごときラストの余韻が…

新座頭市物語 折れた杖

★★★ 1991年5月19日(日) 日劇シネマ 変わりばえしない物語だが、勝のシリーズ初演出にマカロニウエスタンを手本にしたと思しきケレンがあって悪くない。寒村のムードも輪をかける。しかし、手本にしすぎて、ラストはまんま『続荒野の用心棒』みたいになっちま…

故郷

★★★★ 2007年8月18日(土) 日劇会館 諦観にも見える時代の推移へのメッセージを伝えようとしたのではない。緩い『裸の島』じみた夫婦の無言の居ずまいの作業の連続はやがて新たな生活への不安をも払拭する。『家族』では浮いた疑似リアリズムが板につき渥美…

海軍特別年少兵

★★★ 1991年9月29日(日) 日劇シネマ これからだという人生を戦争という大義の為に散らしていった少年達。というのは今井のなかで『ひめゆりの塔』の少女達と対を為す撮らねばならないものだったのだろう。しかし残念だが戦時下に於ける青春といったアプローチ…

★★★★ 2021年8月15日(日) シネヌーヴォX 8分の短篇だからこそ狭雑物ゼロで禍々しさが強烈だ。 実の息子を喰らおうとするまで堕ちる暗黒鬼道の深淵が一切の説明もなく提示される。 憐れみや同情や言い訳などない堕ちた者は朽ちるべしのハードボイルド。 蒔…

現代やくざ 人斬り与太

★★★ 2010年2月20日(土) 日劇会館 結構、状況に迎合する主人公が今いち生半可で、安藤・諸角と西の勢力が拮抗するマクロな構図の前で矮小化される。腐れ縁の渚まゆみと同衾する文太の部屋での呟きが電車の音にかき消されるドン詰まり感。こういう深作節には…

ブルジョワジーの秘かな愉しみ

★★★ 1986年3月9日(日) SABホール 強固な意志で鋭利に階級を撃つのではなく、後の『自由の幻想』に連なる諧謔趣味が顔を出すことによって冴えたシーンもあるにせよ総じて緩慢になった。大体、悪いことしてる奴らが撃たれるってんでは捻りもクソもなくそう…

ピンク・フラミンゴ

★ 1986年9月7日(日) SABホール アナーキーであること自体に価値がある訳ではなく社会や体制や階級や思想や風化した固定観念や言語や法律や似非モラリズムや流行や懐旧や楽観や諸々の取り巻く何某かとの関連性に於いて語られるべきもの。だから、してやっ…

男はつらいよ 柴又慕情

★★★ 1983年3月16日(水) 伊丹ローズ劇場 1992年8月2日(日) 日劇会館 吉永小百合が頑固親爺に悩まされる素直な娘を好演しているものの、素直に相談相手として寅を慕うだけで色恋は何にもない。寅も約束事としてふられては見せるが如何にもとってつけたようだ。…

ルードウィヒ 神々の黄昏

★★ 1981年1月30日(金) 阪急文化 とち狂った王を描くのに演出者までとち狂ってはどうしようもなく、大根なバーガーを取り巻く無秩序なカメラワークと無神経な音楽の被せ方…挙げ句に自身も昇天しかけたと言う。そっちの方がおもろそう。指揮官は醒めてないと…

ウディ・アレンの誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいSEXのすべてについて教えましょう

★★★1981年6月21日(日) 池田中央第二映劇 俎上に乗せられたのが数多あるオムニバス形式のイタリア製艶笑コメディだとは推察されるが、充分に咀嚼し薬味を加味して出てきたものとも思えない。要はパロディにもなってないし、ストレートに見るなら大して笑えな…

旅の重さ

★★★ 1980年6月11日(水) 毎日ホール 思い込み少女の一夏の経験は万事作り事めいて白々しく、こっ恥ずかしいこと甚だしいが、一応三国や高橋悦史が大真面目に脇から締めているので見れるものにはなっている。高橋洋子の瑞々しさも救いではあった。(cinemascape)…

着流し百人

★★★ 2014年8月14日(木) 新世界東映 一応は目的意識のある水島翁に対し気風はあるが実質フーテンな鶴田がバランスを欠くのに、その男気質に惚れた若山・丹波・北島・川地・南の面々は尚締まらないことこの上なく、それより大体どこが百人やねんという話でも…