男の痰壺

映画の感想中心です

ロイ・ビーン

★★★★ 2018年11月11日(日) プラネットスタジオプラスワン
イメージ 1
一番秀逸なのはジョン・ミリアスの脚本だと思う。
ヒューストンの演出は縦構図とアップを縦横に駆使してストップモーションの遊びなど自在な感じでいい。
しかし、おそらくこの映画で最大のヤマ場であり、ミリアス渾身のシークェンスであったろう金と油と権力に支配蹂躙された街の崩壊と壊滅は描き方が物足りない。
巨視的な歴史観から生じるロマンティシズムという点で、「地獄の黙示録」級の逸品であって、それこそコッポラあたりに委ねても良かったろうと思われる。
 
それでも、愛すべき映画であって、それは各章を彩る配役が優れているからだと思う。
大殺戮で幕を開ける序盤にアンソニー・パーキンスの牧師。
ダレ場の中盤を一点で引き締めるステイシー・キーチアルビノガンマン。
終盤を主軸で牽引するジャクリーン・ビセットの娘。
そして、ラストを引き締めたエヴァ・ガードナーの女優。
 
そんなにエッジの効いた役者群ではなかったはずなのだが、この映画に限って蠱惑的な芳香を纏っている。
映画というものの不可思議な伝説性を感じずにはいられない。
 
酒場の大殺戮から始まり街を破壊し尽くし粉塵に帰すで終わるフォークロア。序盤のトニ・パキの浄化や終盤のジャッキーの清廉とエヴァの大見得と役者陣も伝説味を帯同しメフィストキーチが中盤のダレ場を救う。幸運な磁場が映画を支配してる。(cinemascape)