男の痰壺

映画の感想中心です

映画1975

祭りの準備

★★★★★ 1977年8月12日(金) 毎日ホール 1980年8月16日(土) 毎日ホール 中島の私小説ミニマム世界が実験心ある黒木のフィルターを通すことで神話的に拡張した。凡庸な主人公の周りのキャラクター達は追憶の中で濾過され永遠なる切なさに封印されるだろう。旅立…

バリー・リンドン

★★★★★ 1977年7月10日(日) ビック映劇 物語は方便に過ぎず、役者は単なる装置である。兎にも角にもロケハンと衣装とメイクを含めた映画美術と臨界超えF値による幽玄の室内と観光的薄さと対極の歴史を内包する屋外の光。それら技術への過度の傾倒が周回した挙…

キラー・エリート

★★★ 2024年7月8日(月) プラネットプラスワン 中盤でジェームズ・カーン一派がサンフランシスコのチャイナタウンに亡命台湾人一族を救出に行く件がある。阻もうとする一派とは別に屋上で待ち構えるロバート・デュヴァルと他1人。この構図に「ワイルドバン…

アデルの恋の物語

★★★★ 1977年9月23日(金) 大毎地下劇場 叙情的で随筆的なトリュフォーの特質は強固な物語に引きずり回され神がかり的なアジャーニに身を委ね影を潜めるが、それは、映画史に於ける一つの神話の創造への敬意を思わせる。文豪の娘という設定に従ずる手紙という…

実録 阿部定

★★★ 1980年10月1日(水) 毎日ホール 出るものが半透明になっても絞り尽くされるという或る意味で地獄を、『コリーダ』がまだしも持っていた時間空間的な延伸感が低予算の為ほとんど無い為に映画として高純度に濃縮されたとも言えるのだろうが矢張りしんどい。…

ナッシュビル

★★★★ 1977年9月11日(日) SABホール カメオ実名人を虚構に混在させたノンフィクションもどきのフィクションは50人以上の主要人物群の悲喜交々な寸景を一所にぶち込み掻き混ぜ泡立てる。包括的にカオスを狙った編集が成功し祝祭と音楽が形成するグルーヴ…

サンチャゴに雨が降る

★★ 1977年10月22日(土) ビック映劇 『アルジェの戦い』に自戒を篭めた仏映画人達の叩き潰された南米左派政権への共振。なのだろうが多分に時流追従めいている。叙情過多のスローモーションの垂れ流しはセンチ過ぎでポリティカルなことの本質から映画を遠ざけ…

ブレイクアウト

★★ 1976年3月20日(土) 伊丹グリーン劇場 ブロンソン主演でテキトーに筋あつらえてソッコーで1本臭が滲み出ており、展開の場当たりさが突き抜ければ味と化するのだろうが、その領域には達していない。キャラも生煮え硬軟半ばの半熟卵のようなもんだし相変わ…

ジャン=ポール・ベルモンドの 恐怖に襲われた街

★★★★ 1976年9月5日(日) 伊丹グリーン劇場 アメリカ製ポリスアクションに一歩も引けを取らない活劇の連鎖。飄々とスタントをこなすスターベルモンドが醸す余裕とユーモア。朴念仁的相棒デネとのコンンビネーションの味わい。それらを統べるベルヌイユの演出の…

ブルージーンズジャーニー

★★★ 2024年3月18日(月) プラネットプラスワン 地に足つかない感じが如何にも70年代アメリカンニューシネマの裾野の隅っこ映画らしい。それは、長期化したベトナム戦争により疲弊し行き場を失った男たちを取り巻く気分とリアルだったんでしょう。本作の主…

イナゴの日

★★★★★ 1977年12月11日(日) 元映 兎に角、嫌らしい奴と情けない奴しか出て来なく、悪が弱者を駆逐していく構図の先端に少年を配するという徹底振りが突き抜けている。スペクタキュラーな要素も織り込んでハリウッドへの憎悪を込めた退廃ムードが出色。(cinema…

Tommy トミー

★★ 1976年8月29日(日) 元映 ザ・フーの曲は好きだが、今で言う引きこもり青年の他力本願な救済願望には辟易する。主人公が、たらい回しに回される各ロックスターに余りオーラが感じられない。演出的にもエルトン・ジョンのシーンのみが突出。(cinemascape)…

アダプション ある母と娘の記録

★★★★ 2023年6月5日(月) シネリーブル梅田3 アニエス・ヴァルダやケリー・ライカートら女性監督からリスペクトされてるらしいハンガリーのメーサーロシュ・マールタの1975年作でベルリンで金熊賞を取っているものだそうだ。 描きたいことが明確にあっ…

デルス・ウザーラ

★★★★ 1999年10月16日(土) 動物園前シネフェスタ3 異文化との邂逅や親和を描くことに於いてリーンの2番煎じ化する危険を孕むが、黒澤にはそこまでのアイロニーは無い。純粋無垢を描き真っ当に胸を打つ。加えて活劇描写の独自性がブリザードと激流の2大クラ…

資金源強奪

★★★ 2000年12月27日(水) 日劇会館 肝心の襲撃計画なぞが「絶対に成功する訳ない」と思えるぞんざいなものでクライムアクションとしては最低なのだが、梅宮の極道デカが出てきて俄然、画面は躍動を始める。汚い奴らの騙し合いを、もっとスマートに描けていた…

動脈列島

★★★ 2002年7月8日(月) トビタ東映 何事もド真ん前からしか描けない増村にはハッタリやケレンを要するこの手の題材は向いてなかった。特に凝ってるとも思えぬ攻防戦がひたすら淡々と進み淡々と終わってしまう。田宮VS近藤よりも山村VS近藤に魅力があるの…

仁義の墓場

★★★ 1993年6月6日(日) トビタ東映 倫理道にもとるヤクザ道からさえ更なる逸脱の果てのアナーキズムを描くに深作の話法は規定化された己の実録路線から1歩も逸脱しない。ディープ大阪でのヘロイン地獄にザラついた高感度フィルムと芹の投入が更にわざとらし…

新幹線大爆破

★★★ 1992年9月27日(日) トビタ東映 爆弾撮影の為、深夜のガード下で陣取るカメラマンたちのプロ根性を始め異常時に対処する男達の無言の所業は全部良い。反逆の構図に囚われた犯人達も米パニック映画のルーティーンに塗り込められた社内乗客の描写も未だ70…

新仁義なき戦い 組長の首

★★ 1991年8月4日(日) 新世界東映 やりすぎとも思える山崎努のシャブ中演技。最早、自虐を通り越し暗黒の深淵に見る者を引きずり込むようだ。正直、こういうのが出てくるとしんどい。シリーズのネガティヴな暗部を拡大したかのような異色作。(cinemascape) ke…

日本暴力列島 京阪神殺しの軍団

★★ 1991年8月25日(日) 日劇会館 『仁義なき戦い』シリーズで最強のオーラを発していた武田(小林旭)と岩井(梅宮辰夫)が、ここでは何故か中年の「渡り鳥」と「不良番長」に見えてしまう。実録ものに於ける在日朝鮮人への切り込みも2人のデブが走り回るだ…

県警対組織暴力

★★★ 1990年11月12日(月) トビタ東映 警察機構を体制的に描く訳もなく所詮は似たり寄ったりの強欲と暴力の集団とならざるを得ず、ならば結局一緒やんという話だ。寧ろ構図は図式化し蠱惑のカオスは存在しない。拓ボンがドMチック熱演ったって徒花にすぎず、…

迷宮譚

★★ 1984年12月8日(土) 千日会館 映画とはフィルムに内包された世界で完結はしないという趣旨は同意するが、それがドアというメタファーで表象されるのがピンとこないし安易で稚拙だと思う。無味乾燥な主題が天井桟敷風味のグロとエロで味付けされただけで、…

旅芸人の記録

★★★★ 1981年1月15日(木) 三番街シネマ3 姦通と復讐が主題のギリシャ神話を基底にし超絶長回しと1シーン内の時空錯綜をもって語られる難攻略な近代史なのだが、曇天狙いの沈鬱な画面内を目紛しく変転する為政者を遠くに見つつ歩き続ける彼らを通して虐げ…

金環蝕

★★★ 2019年10月6日(日) シネヌーヴォ 子供の頃にTV放映で見て、とんでもなくオモロイと思った記憶がある。 それは、多分に宇野重吉の歯抜けメイクが醸すいかがわしさと仲代のクールで怜悧な佇まいのガチ対決によるもんだったと思う。 何十年も経ってよう…

昭和枯れすすき

★★★★ 1981年10月10日(土) 今津文化 2時間ドラマと大差ないストーリーと配役なのだが新藤・野村ラインは熟達のコクを映画に付与する。分けても秋吉久美子のノンシャランを高橋の硬質と同一画面上で均衡させたのは演出の為せる技。他の出演者も総じてベストワ…

オーソン・ウェルズの フェイク

★★ 1980年4月12日(土) SABホール フェイクをめぐるフェイクドキュという入れ子構造が何かの化学反応を呼び起こすわけでもないしウェルズ自身が自身について言及するに大ぼらこいてシャレのめしても今更感が拭えない。多分にテキトーだし何と言ってもネタ…

同胞

★★★★ 1980年12月15日(月) 伊丹ローズ劇場 中央にオルグられて地方が問題意識を持つという民青的ムードと力を合わせればことは成るという今更の題材に退く部分があるが、つまらん題材だからこそ逆説的に徹底した農村の細密描写のリアリティで保たせる或る意味…

男はつらいよ 寅次郎相合い傘

★★★ 1978年3月17日(金) アサヒシネマ お嬢さん女優浅丘ルリ子の演じる裏街道ヒロイン「リリー」のキャラは評価が高いが何だか作り物めいて見える。コテコテすぎるのかも知れない。同じ道往く者同士の連帯愛はシリーズの決め事を破壊させかねない。そういう苦…

男はつらいよ 葛飾立志篇

★★★ 1978年3月17日(金) アサヒシネマ 1992年8月9日(日) 日劇会館 シリーズで再三サブテーマのように取り上げられる「教育」が決して教条的にならないのが山田の上手いとこだと思う。中年勉強バカ同士の恋を描いて本線から離脱ぎみだが小林桂樹が巧く飽きない…