男の痰壺

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ブルージーンズジャーニー

★★★ 2024年3月18日(月) プラネットプラスワン

地に足つかない感じが如何にも70年代アメリカンニューシネマの裾野の隅っこ映画らしい。それは、長期化したベトナム戦争により疲弊し行き場を失った男たちを取り巻く気分とリアルだったんでしょう。本作の主役アラン・アーキンの役も20年間の兵役帰りだ。

 

彼が仕事の休憩中、公園でフリスビーしてた女性の2人連れに声をかけられる。適当に応じて帰ろうとすると拳銃で脅され車に同乗してきて発進。仕事があると言っても受け入れられず目的地まで同行するはめに。でも、アーキンも仕事どうでもいいやって風情。女2人は「M★A★S★H」のホットリップスことサリー・ケラーマンと「アメ・グラ」のマッケンジー・フィリップスで、ああニューシネマやなーと思うわけです。ちなみにチャーリー・マーティン・スミスも1シーン出てきてマッケンジーと絡みます。その後の「アメ・グラ」みたい。

 

彼女たち、ケラーマンは歌手夢見て家出中、フィリップスは孤児院脱走中で、ケラーマンが実家の牧場に帰るシーンがあるが、親父からクソミソに言われるだけで行き場は所詮ない。アーキンも失業してみーんな根無草。それもまた良しみたいな道中はそれでもいつかは終わる。まあ、誰かが死ぬみたいな劇的はことも起こらないんですが。その何も無さも味わいと言えばそうなのかもしれない。

 

篇中、パブでマッケンジーハリー・ディーン・スタントンとビリヤード勝負をするシーンがあるんですけど上手いのに驚きました。

 

ベトナム戦争が人々にもたらした確固たる日常神話の崩壊を背景に地に足つかない浮遊感で旅を続ける3人。仕事にも女にもそこまでの執着を持てない男だが虚無を気取る見識もない。それでも70年代を覆った霧の中の旅路は何時かは終焉を迎える。地続きの過去。(cinemascape)

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