★★ 2023年1月26日(木) 大阪ステーションシティシネマ7
父王を殺され母妃を攫われた子王子が復讐のために生き延び苦難辛苦を乗り越えて。っていう極めて真っ当な伝奇ロマンであったはずなんですが。
「ライトハウス」のロバート・エガースやから、そんな単線的な復讐アクションにはしないんやろ思ってましたが、結果凶と出ました。
もうちょっと、作家性の発露の前に物語の強度を信じて身を任せる柔軟性を持った方がいい。
だいたい、この男、成人したのち、復讐のことなんか忘れとるんちゃうかといった体たらくで、虚仮の一念岩をも通すなんて風情がない。魔法使いの婆あに言われてあっ、そやったと思い出す始末。そのあと、なんだかんだで復讐するやだけど、どうもなあ、久々に会った母の言葉は意外性こそあれ、単線的なカタルシスを遠ざけてしまうだけだ。壊すんやったら母殺しにまで踏み込んでカオスに塗れんかい思うんです。
ニコール・キッドマンも50代後半で、さすがに容色の衰えはあるんだろう。暗いシーンばかりで衰え隠しの疑念が生じます。
作家性の発露の前にもうちょっと単線的な復讐譚の強度を信じて身を任せる柔軟性を持った方がいい。キッドマンの顛末も意外性こそあれカタルシスを遠ざける。壊すというならいっそ母殺しにまで踏み込んでカオスに塗れて欲しい。画の暗さもメリハリを欠く。(cinemascape)