男の痰壺

映画の感想中心です

映画1998

フルスタリョフ、車を!

★★★★★ 2015年4月21日(火) シネヌーヴォ 脇かと思えた絶倫ハゲ親爺が主役と解るころ猥雑と過剰のカオスに巻き込まれ脳内マヒ状態に陥るが、一方ハイキー&エッジ効いたモノクロカメラ使いの想外の手管に幻惑させられる。物語の騒乱のあとの諦観的帰結は見て…

美しき仕事

★★★★ 2024年7月27日(土) シネヌーヴォ サイト&サウンドで映画史上7位に選ばれたことがある傑作と聞いてもクレール・ドゥニの映画という点で食指が動かなかった。そらくらい「ハイ・ライズ」のフェミニズムが澱んだ残滓に食当たりした俺なのであった。 だ…

フォロウィング

★★★★ 2024年5月23日(木) シネヌーヴォX クリストファー・ノーランの処女作だそうだが想像よりずっと良かった。低予算ゆえのモノクロ、オールロケの制約によって奇しくもヌーヴェルバーグやフリーシネマや或いはカサヴェテスを思わせるフォルムの即物感を獲…

海の上のピアニスト

★★★ 2024年3月27日(水) 大阪ステーションシティシネマ6 俺はトルナトーレの「ニュー・シネマ・パラダイス」の情に浸るだけの作風が嫌いな人間なので本作も敬遠してたのだが,今回再映されるのを機にどんなもんやろかと見てみました。で、やっぱこのおっさ…

リング

★★★★ 1998年5月30日(土) 第七藝術劇場 「呪いのビデオ」の出来がキーポイントだったと思うが、剣呑なササクレ感が横溢し、見せ切らないを良しとした時代を終焉させ怒涛のような悪意の奔流を現出させた。それを今更の安価な心霊ネタ都市伝説のプロトタイプに…

蘇える金狼

★★★ 1998年4月13日(月) ホクテンザ1 低予算を逆手に取ったような侘びしくも暗い情念が相当に良い味わい。大風呂敷を広げる前にその余地もなかった箱庭世界で充足している。だが、時代に即応しようとしたシステム攻略になると馬脚を現し低予算のショボさが際…

蜘蛛の瞳

★★ 1998年5月16日(土) ホクテンザ1 念入りに構築された『蛇の道』の姉妹篇として何かを・乃至は何ものをも構築し切れない未達感が横溢する。挙句にお手盛りの「虚無感」を前面に出してみたもののダンカン・寺島を迎えてタッチまでも北野イズムめいたのがう…

らせん

★★★ 1998年5月30日(土) 第七藝術劇場 喪失感と哀しみに満ちた主人公の設定が良いし、佐藤も屈託十全。手堅い演出にも好感を持ったが、何分、同時上映された『リング』の恐怖の余韻をブチ壊す安易な「貞子」の解釈で、それが必要以上に本作を不人気にした点は…

シンプル・プラン

★★★★ 1999年12月11日(土) 天王寺ステーションシネマ ライミらしからぬ抑制されたノーブルな語り口。欲望に絡めとられた類型的な破滅譚が何時しか同心円を描くように設定された兄弟愛の話へと中心軸が移行して行くのが秀逸でありキャスティングも計算し尽くさ…

卓球温泉

★★★ 1998年7月11日(土) ホクテンザ1 温泉の卓球という見え透いたニッチ狙いの設定と確信的に周防映画のエピゴーネンたらんとする矜持の無さという2重の過ちを犯したが、辛うじて中年太りの松坂の二の腕の酸いも甘いも弁えた世捨て人の如き迫力に救われた。…

Hole

★★★★★ 1999年10月14日(木) パラダイスシネマ1 世紀末・疫病・雨と1歩間違えればあざとさキワキワのキーワードのオンパレードだがダサ直球を混じえて巧くすり抜けた。シュールな意匠は純なハートと表裏を成し、人は孤独地獄から救済されねばならないという…

犬、走る DOG RACE

★★★★ 1998年10月24日(土) シネマアルゴ梅田 ストーリーは最早どうでもいい領域に突入するカオス。その中で各シークェンスごとの艶と凄惨と笑いが立ちまくる。無軌道は臨界を軽く超えて不眠がもたらすアッパードラッグな混濁した快楽が訪れる。ええじゃないの…

スネーク・アイズ

★★★★★ 1999年9月11日(土) 天六ユウラク座 忘れた頃にやってきた純正デ・パルマ印100%。縦横無尽に動きまくるカメラと固定のズームイン。2つの超弩級長回しに挟まれればチンケな軍需謀略話も特上のマクガフィンと化する。そして、そうなるかならぬかは監…

時雨の記

★★★★ 1998年11月14日(土) ホクテンザ2 小百合のカマトトは見飽きていても哲也兄いの超絶カマトト振りには涙を禁じ得ないであろう。新味無きストーリーとキャスティングを絵葉書みたいな綺麗なだけの画面で縁取った映画であっても真摯な姿勢は心を射るのだ。…

ラストサマー2

★★ 1999年9月11日(土) 天六ユウラク座 前作を見てないので主人公のトラウマに感情移入できず、お定まりの密閉舞台での殺人趣向も凡庸で面白味も無く、途中から出て来た犯人らしき連中が何者なのかもさっぱり判らず、ラストに至っては最早陳腐としか思えぬ展…

ビッグ・リボウスキ

★★★★★ 1998年12月26日(土) テアトル梅田2 コーエン的ファクターが純粋結晶として顕現し『バーンアフター』へと延伸した傑作。ゲラ笑い必至の阿呆連中の与太話の背景に横たわるベトナム由来湾岸経由の戦争後遺症的病巣が不穏な緊張を注入し続ける。その錯綜…

マイ・スウィート・シェフィールド

★★ 1998年12月23日(水) シネマアルゴ梅田 荒野の高圧線のペンキ塗りという絵画の旨みまずありきが見え見えで、肝心のドラマはダラに煮え切らぬまま垂れ流される。何より年の差ある男と女の話なのにポスルスウェイト親爺に若い女が惚れるような何も見いだせず…

ベルベット・ゴールドマイン

★★★ 1999年8月28日(土) 西灘劇場 最後まで見れば御伽噺としての世界観は貫徹されてるにしても少女趣味的な導入からして脱力。結局は業界ものの常套構成は背景にすぎず語り部の半端な自分語りに収束する。どっちつかずだ。マクレガーとベールの屋上シーンは詩…

踊る大捜査線 THE MOVIE

★★★ 1999年8月7日(土) 祇園会館 平成無責任男的なキャラ付けと刑事ドラマがリミックスされたシリーズ根幹を鮮やかに提示したオープニング。そのオリジナルアイテムで自走すればいいのに『羊たち』をパクったような設定が安い。土台キョンキョンでは意外性だ…

RONIN

★★★★ 1999年7月20日(火) ホクテンザ2 金で雇われるプロが身ひとつで渡り歩く孤独の中にも依って立つべき連帯意識はある。欧州ムードが孤独を際だたせる中デ・ニーロとレノが抑制された演技で中心軸を形成する仄かな友情。描くべきが決まればマクガフィンも…

コキーユ 貝殻

★★★★ 1999年4月17日(土) パラダイスシネマ2 記憶の深層に畳み込まれた思い出が時を経て切ないまでに醗酵した後に引きずり出されたようだ。節度ある中年の男女の越えられない一線は一度限りのリプレイできない思い出として再度仕舞いこまれる。ラストの小林…

TOKYO EYES

★★★ 1999年4月3日(土) 第七藝術劇場 どういう訳か世紀末に復刻された70年代ATGアートフィルムの匂い。なので感情の不整合は感性で補ってチョーってな具合の良い塩梅での適当と風景の異郷性が懐旧感を煽る。吉川ひなのの天然なカリスマ性も緑魔子的フシ…

がんばっていきまっしょい

★★★★ 1999年3月22日(月) テアトル梅田1 竹中直人不在が象徴する周防的ギミック偏重の邦画潮流からの決別と、芸が無いとも言える典型スポ根にも拘わらず全くベタじゃないという奇跡の混在。その奇跡の結露としての澄み渡ったような透明感が良い。調和的なノ…

愛を乞うひと

★★★★ 1999年1月30日(土) 新劇会館シネマ2 原田の2役は成人した子の演技に1万メートルを全力で走りきったランナーのような透徹した悟りと自信を限りなく静かな佇まいに滲み出させ怒涛のサディスティック感情の発露は反転し母性の慈愛へ還流する。凄まじい…

学校Ⅲ

★★★★ 1999年1月30日(土) 新劇会館シネマ2 リストラに絡む部分は山田の現実認識の甘さが露呈され形骸の誹りを免れないが、中年男女の恋愛描写になるとさすが絶妙に巧い。大竹しのぶも自閉症の子を持つ母と女を往還するこういう役だと本当に独壇場。そして、…

バッファロー '66

★★★ 1999年9月21日(火) パラダイスシネマ2 カサヴェテスや小津へ尻尾を振れば欧州発NYインディーズの一丁上がりとでも言いた気な浅薄さ。ギャロが天然なら可愛げもあるのだが。どっちにしても、ナイーブ野郎が真の愛を得るまでのお話ってか?…甘ったれて…

蛇の道

★★★★ 1998年5月16日(土) ホクテンザ1 ひと昔前のインディペンデント感を濃厚に漂わせたいかがわしさがある。哀川の塾講師が1歩間違えれば陥る脳内構成な稚戯から辛うじて逃れ得たのは黒沢お得意の終末感がこの程度の物語容量に最もフィットするからだ。復…

絆 きずな

★★★ 1998年7月11日(土) ホクテンザ1 ブレイク前の青白い殺気がガチで互いを呑んだろか的な役所と渡辺のがっぷり四つの演技の相克が全て。錯綜する展開も中盤までは予断を許さず刺激は維持されるが謎解きを急ぐ終盤できっちりしぼんだ。ありきたりな物語なら…

プライベート・ライアン

★★★★★ 1998年10月10日(土) 北野劇場 『列車の到着』から100年。俺もスクリーン内の上陸艇内で跳弾に身を退いた。未体験の臨場感。黒澤へのオマージュでは済まない剽窃の終盤を割り引いても戦闘シーンの劇場体験はは激賞するしかない。そして、中盤のダレ…

あ、春

★★★★ 1999年1月23日(土) テアトル梅田2 父子の邂逅の物語が枝葉の部分が立ってラストに至り父と女達との物語にすり替わってしまう構造が不均衡とも思えぬほどに役者たちの充実度が目を見張る。委ねる境地に至った相米の懐で形成された山崎と富司・藤村のト…