男の痰壺

映画の感想中心です

映画2010

アンジェリカの微笑み

★★★★ 2016年1月9日(土) シネリーブル梅田4 怪異譚表現に於いてスラブ的・サイレント的な味わいという以上のもは大して無いのだが、農夫のおっさん集団への偏執や朝食時の婦人客の強固な目力や各種ノイズの底深い剣呑さとかがオリヴェイラ自身の意図や思惑…

ミークス・カットオフ

★★★★ 2021年10月24日(日) シネヌーヴォX 開拓期のアメリカて新天地を求めて荒野を彷徨する3家族と案内人。 なのだが、妻たちの1人、ミシェル・ウィリアムスのドレスがピンクっつーのがなんか違和感ありますな。まあ、どうでもいいけど。 こういう時代だ…

おとうと

★★ 2010年2月5日(金) 梅田ブルク7シアター1 若い2人やホスピス周辺など多くの点描される脇キャラは相変わらず素晴らしいが、肝心の鶴瓶が可愛くないのが救いがたい。それを又今更の寅次郎のトレースとして出す山田には慢心した権威臭さえ感じた。シスコ…

パレード

★★★★★ 2010年2月23日(火) 梅田ブルク7シアター2 行定演出が手慣れてエッジが効いてない感もあるが、この混沌の呈示の仕方には惹かれる。今という時代を冷徹に照射する為には、此岸に立ち返った帰結に凡するより彼岸に埋没しゆく地獄をこそだ。役者たちの…

人の砂漠

★★★ 2010年3月6日(土) 梅田ブルク7シアター7 真摯さは認めつつも、40年前のルポを今さら映画化する意味を呈示し得ていないし、更に4人の監督が撮った各挿話のテイストの近似ぶりが気持ち悪い。深夜枠のTVドラマが関の山の優等生のデジカメ金太郎飴…

バレンタインデー

★★★ 2010年4月24日(土) 新世界国際劇場 凡庸な主軸ストーリーを多くのサイドストーリーの小粋さでカバー。スクリーンの若かかりし自分の前で大見得を切るマクレーンも微笑ましいが、ジュリア・ロバーツとアン・ハサウェイの挿話が図抜ける。2世代女優の橋…

ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲

★★★ 2010年5月6日(木) 梅田ブルク7シアター4 ゴッサムシティならぬゼブラシティのゼブラタイム論理に少々耳を傾けてはみたが、何時しか白か黒かの意味不明葛藤が、緑インベーダーの再登板で瓦解され惰性に身を委ねる体たらく。むかつく所業の三池節だが…

ヒーローショー

★★★★★ 2010年6月2日(水) 梅田ブルク7シアター2 些細なリアリズムの積み重ねによるミクロな小競り合い。そのド本気の錯綜だけでも見応えはあるが、混沌と拡散の果てに、そこには留まらない俯瞰的な時代観のようなものが現出してくる。『ガキ帝国』への本…

告白

★★★★★ 2010年6月9日(水) TOHOシネマズ梅田1 現代の混沌と閉塞を論じるには終盤の安易とも言える解題的展開には疑問を覚えるが、一方で冴え渡る巧緻な技巧と詩情は絶頂の森田や市川準をも凌駕する。そして、浮上するトリアー的破壊神松たか子と反転し…

鉄男 THE BULLET MAN

★★★ 2010年5月31日(月) 梅田ブルク7シアター5 CGの時代の張りボテな手作り感とグチャグチャ編集で何とかしようというレトロな根性は買うが、「アンドロイド」とか意味を付与してしまえば底が割れるのだ。外人野郎でメタル感を補強しても美味しいところ…

アウトレイジ

★★★ 2010年6月12日(土) 梅田ブルク7シアター2 群像劇の形骸化した骸。深作・笠原が10倍に凝縮し広大な背景を垣間見せたジャンルを10倍に希釈した模造品。語るべきドラマが無いから殺しの趣向に依存する怠惰。わけても終盤の既視感には心底うんざりし…

瞬 またたき

★★★ 2010年6月23日(水) 梅田ブルク7シアター3 喪失された記憶をめぐるサスペンスな味付けは、中途から大塚寧々を必要以上にピックアップすることで拡散し強靱なベクトルは消失された。半端と言うしかない脚本だが磯村演出は端正で抑制されている。尚景子…

アデル ファラオと復活の秘薬

★★★ 2010年7月9日(金) 梅田ブルク7シアター6 冒頭の叙述的語り口から19世紀ロマン主義的展開を見せ始めるあたりが悪くもなく、米映画の低位な取り込みも目を瞑る。ギャグかと思えるオチが結構マジそうなのもベッソンの天然たる所以で今更何も言うまい…

座頭市 THE LAST

★★★★ 2010年7月9日(金) TOHOシネマズ梅田5 渡世の非情と無縁の優しき「市」の造形に香取のがむしゃらで無垢な様が合っており、対峙する仲代・豊原・ARATA達の巧緻な悪との噛み合いに大いなる醍醐味があり、全体を統べる阪本の冷めた無常観が一貫…

必死剣 鳥刺し

★★★★ 2010年7月29日(木) 梅田ブルク7シアター2 藩主・側室・別家の三つ巴の相克の圧倒に対し主人公の関わり方が浅くて脚色の甘さを感じた。終盤の殺陣も相対試合は魅せるが集団戦には新味を感じない。ルサンチマンが不足。ただ平山演出の丁寧さと役者陣…

インセプション

★★★ 2010年7月29日(木) 梅田ブルク7シアター1 不可能作戦を遂行するプロ集団のリーダーが個人的事情に拘泥してウジウジして展開が間延びし、どっちつかずで尺だけ長い。夢だから何でも有りとは言え4段階の夢中夢の舞台設定に伏線のかけらもない。あるの…

キャタピラー

★★★★ 2010年8月27日(金) テアトル梅田1 乱歩的SM世界へ傾倒せず、制度から解き放たれる女性自立映画としても喰い足りなく、多くのテーマは表層で流されるのに、若松は大して拘らず、節目での字幕化されたラジオ戦況放送でリズムを付与し強引に物語を綴…

十三人の刺客

★★★★ 2010年10月8日(金) TOHOシネマズ梅田3 場数を踏んだ者のみが成せる長丁場の戦闘の緩急と構成の妙は素ん晴らしい。だが、序盤で提示された「みなごろし」のルサンチマンは今いち解消されぬまま、ヒロイズムやニヒリズムに置換され、どうにも糞詰…

ダブル・ミッション

★★★ 2010年9月17日(金) 新世界国際劇場 本気度に欠け全てがお座成りな劣化版ジャッキー映画には一抹の侘しさも禁じ得ない。仕事と家庭という2つのミッションで成功することは、そんなに生半可じゃない筈だと思いつつ、ジャッキーのフヤけた笑顔と跳躍を眺…

ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う

★★★ 2010年10月8日(金) テアトル梅田1 相も変らぬ情緒過多のグダグダ劇なのだが、少なくとも以前の石井映画では強烈な男達の個性が情緒の何割かを相殺していた。受身な竹中のみでは取り込まれるだけでしんどい。デジカメの即物感は終盤で良い味を出すが全…

乱暴と待機

★★★★ 2010年10月15日(金) シネリーブル梅田1 下手にやればあざとくて見てられない奇矯世界のリアクション芝居を見せ切ってしまう明確なコンセプトの存在が演出にも演者にもあった。ただ、この過剰性が拠って立つ拠点が凡庸なので今一歩の根本構造自体を変…

死刑台のエレベーター

★★★ 2010年10月15日(金) 梅田ブルク7シアター3 唐突にキレた状況から物語に差し込まれる玉山の描写。その脚色の冴えは買うし又絡む景子ちゃんも超ノーブル。問題は吉瀬のパートで、1夜の不安と焦燥と嫉妬の彷徨芝居はジャズ抜き外タレ加味で学芸会風味…

行きずりの街

★★★★ 2010年11月20日(土) 梅田ブルク7シアター4 人生街道から堕ちたと思い込んでるダメ男の復活譚なのだが、通り一遍ではなくダメなままで煮え切らない丸山節。それが最高に昇華する中盤の女のマンションでの2人芝居には泣けた。凡庸な本筋サイドは窪塚…

マチェーテ

★★★ 2010年11月20日(土) 梅田ブルク7シアター1 『キル・ビル』の裏返しで始まった物語は、導入はゴアな描写も冴えて絶好調であるのだが中盤以降は『デスペラード』的に急速に停滞していく。越境ネタを描くにロドリゲスは「こっち側」に居るべきじゃない…

ばかもの

★★★ 2010年12月25日(土) シネリーブル梅田2 SEXやアルコールや宗教などへの多くの依存に言及されるが、それは物語の骨子として捉えられず編年体の再生説話の背景でしかない。そこが物足りぬし散漫でもある。とは言えラストは泣かされた。内田は力演だ…

KISS&KILL キス&キル

★★★★ 2010年12月11日(土) TOHOシネマズ梅田5 申し訳に南仏から発端された物語世界が、結局はご近所戦争的ミニマム世界に限定されちまう半端さも、ヘイグル嬢の熟女的ケツの座りの良さに誘われる不条理の快楽に委ね雲散霧消する心地よさ。ローアングル…

キック・アス

★★★★★ 2010年12月25日(土) テアトル梅田1 少年が感化・触発されても超人になったりせず、あくまで身の丈に合った成長にとどまるのが良い。一方で虚構を担う少女がウルトラサディスティックにヴォーン掌中の男騒ぎを粉砕する。その構図のマゾヒスティック…

ロビン・フッド

★★★ 2010年12月11日(土) TOHOシネマズ梅田4 圧政王VS義賊という対立構図が確立する前の混沌の前史だとしても、最大クライマックスの対仏攻防戦でその確執のピックアップが弱すぎなのでピンボケ感が甚だしい。自己模倣に流れるスコット演出はウンザ…

アンストッパブル

★★★ 2011年1月8日(土) TOHOシネマズ梅田1 優れた音響と細密なモンタージュによる『激突』アプローチで序盤では「怪物」として君臨していた重機関車だが、後半は当たり前の列車に成り下がっていく。実話の枷に縛られるのならTVの再現ドラマで充分。…

海炭市叙景

★★★★ 2011年1月8日(土) 第七藝術劇場 夜間撮影の暖色感あるライティングが特筆の侯孝賢や市川準の仕事の高度な追随作だとは思う。全ての挿話は孤絶にまみれ崇高の域にまで達しているが、終盤に若干シンクロしかける仕掛けを施すなら何らかのカタルシスへ集…