男の痰壺

映画の感想中心です

1999年の夏休み

★★★ 2018年8月18日(土) シネリーブル梅田3
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女性漫画家の描いた少年同士の愛憎。
っていえば典型的やおい系で、それに対して門外漢である俺はどうこう言うすべもないのだが…。
そもそも、女性がボーイズラブに興味を覚える心理は不可解である。
だって、自分を仮託する余地がないじゃん。
であるから、それは観念的で空虚な戯言だと思うんです。
 
で、しかも、この映画は少年を少女が演じてるという2重の虚妄構造になっている。
そうなると、もはや何が何だかの世界であって、それを見て倒錯的にレズビアン的な興趣を覚えるしかない。
 
で、脚色が寺山の共闘者であった岸田理生なのだが、観念世界が全開する。
 
これだけのひねり技が動員されて、とんでもない化学変化が映画にもたらされたかというと…。
どうにも食い足りない。
でも、好きかきらいかっていうと、けっこう好きだったりするんですなあ。
 
黒澤の「八月の狂詩曲」で親類の女の子を演じていた大寶智子が男前。
腕白坊主キャラの深津絵里はこんなんだったんですなあ。
 
近未来・やおい・男装少女と3拍子そろえば茶番に成り下がりそうなもんだが踏み止まったのは岸田理生の観念世界が映画を統御したからだろう。異界・外界から列車で2度侵入する少年は静謐世界を攪拌するが何も変わらない。そして夏休みは永遠に続くのだ。(cinemascape)