男の痰壺

映画の感想中心です

映画1960

からっ風野郎

★★★★ 2025年7月2日(水) シネヌーヴォ 三島由紀夫がヘタレ演技であることは、何かで読んで知っていたが、想像よりは幾分かちゃんとしていた。まあ、そうは言っても、台詞を間違えないとかのレベルで、増村が相当に厳しく扱き、扱き下ろし、ダメを何十回出し…

処女の泉

★★★★★ 1980年12月16日(火) 関西学院大学学生会館201号室 1992年12月19日(土) ホクテンザ1 残酷童話として完璧な世界の構築により神の在不在の問いかけは物語に包括され意義さえ失うかのよう。『羅生門』直下の演出は縦構図を完璧にモノにしニクビストの…

勝手にしやがれ

★★★ 1979年6月3日(日) 大毎地下劇場 1983年5月27日(金) 三番街シネマ2 手持ちノーライトカメラに時間軸無視の繋ぎや既成曲の断片使用に数多の引用など全てはここから始まった起源的価値を剥ぎ取り残るのは青臭い男女の痴話。先駆者は常に陳腐化するの例えか…

ふたりの女

★★★ 2016年8月20日(土) プラネットスタジオプラス1 大戦末期の各国列強が侵攻する伊半島内陸部の混沌とその奔流に流されるしかない人々。中空からの掃射で目の前の人が倒れても構ってる余裕もない。そういう現実認識のリアリズムはある。ただ、輪姦描写の…

太陽がいっぱい

★★★ 1976年9月12日(日) 三番街シネマ2 虐げられた末の反逆なのであるから感情移入できそうなものだし、映画は技巧を尽くしてドロンに片寄せもする。実際ドカエのカメラが捉える瑞々しい心の揺らぎは海上や市場のシーンでスパークしてる。だが、奥底に横たわ…

太平洋の嵐

★★★ 2024年1月11日(木) シネヌーヴォ 「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦」なる副題が各データベースでは付いてますが本篇タイトルにはそんなもんありません。宣材段階でつけられたもんだろう。そういうのん結構拘る人間なんです。 見飽きた太平洋戦争序盤史…

荒野の七人

★★★★ 1973年9月2日(日) 伊丹グリーン劇場 世界を取り巻く厚みは減失したが粛々と仕事を遂行するプロ魂は倍加され胡散臭いリーダーのもとでもミッション遂行のエネルギーは十全。7人と言うより4+3のキャラ力学が頃合の配分でド真ん中を射抜かれた少年の夢…

ひばり十八番 弁天小憎

★★★★ 2022年12月12日(月) 新世界東映 弁天小僧は男であり、それが女装し娘に化けて悪徳商人相手に一芝居という歌舞伎の舞台でしか成立しない倒錯劇だが、その弁天小僧を女のひばりが演じることで倒錯2段重ねのヘンテコな趣きがある。楽しかった。 約束事…

切られ與三郎

★★★ 2000年8月5日(土) シネヌーヴォ 転落人生を生きざるを得ない与三郎に切羽詰った被虐感は感じられず、折にふれて邂逅を果たすお富との間にも何かありそうで何もないという、何ともすっきりしない話で、何かようわからん。ただ淡路恵子が結構クールで良い…

裸の島

★★★★★ 2000年12月11日(月) シネヌーヴォ 設定が如何にもな形式主義を纏うのだが、それを感じさせぬ細部のリアリズムに満ちている。そういった器と中身が渾然として昇華した果てに生きとし生ける哀しみと歓びが現出するあたりプロパガンダ臭の欠片もない。仰…

独立愚連隊西へ

★★★ 2002年2月2日(土) 動物園前シネフェスタ4 ショットの冴えは随所にありノッてる感はある。どこという欠点も無いが佐藤允はワン・オブ・ゼムになり群像劇はダラダラしていて焦点が絞り切れてない。どうでもいいような軍旗奪還を骨子に置いたせいでゲーム…

赤い夕陽の渡り鳥

★★★ 2002年10月26日(土) トビタ東映 白木マリを軸にした三角関係の横っちょで旭とルリ子はあくまで明朗に光輝く。正統派のヒーロー・ヒロインってのはそういうものなのだろうけど、穢れどこ吹く風情は感情移入の余地なく何となく物足りない。磐梯山の雄大な…

赤坂の姉妹より 夜の肌

★★ 1992年6月13日(土) みなみ会館 落日の寂寥も伸し上がりの活力も決定的に欠ける。東宝的硬質さでは大映的艶やかさが要件の物語を御しきれないので、所詮はブラジルや北海道といった新天地に希望を見出す民青的終焉に帰結してしまう。男を手玉に取ってなん…

★★★★ 1992年6月24日(水) シネマヴェリテ とにかく堅い…気が遠くなりそうな位…。ブレッソンもかくやという常道の映画時制を逸脱したコンクリートに穴を穿つ描写。鏡に集約された敗北の自虐感。突出した幾つかの描写はベッケルの歪さを際だたせる。(cinemascap…

オーシャンと十一人の仲間

★★★ 1992年8月25日(火) シネマアルゴ梅田 シナトラ一家というものに対しての慣れ親しんだ予備知識が無い分楽しめないのだろう。映画は犯罪のトリッキーさには殆ど依拠していない。従ってラストシークェンスの傑出に比して他は凡庸としか思えない。シャーリー…

恋をしましょう

★★★ 1992年9月13日(日) シネマアルゴ梅田 アクターズスタジオ経由で洗練と疲弊を得たモンローからトリックスターとしてのオーラは消えた。だから脳天気とはお世辞にも言えないモンタンとの調和は逆説的にあるのだが何か地味。キューカーとの親和もチグハグで…

地下鉄のザジ

★★★★★ 1992年12月10日(木) シネマアルゴ梅田 少女の都会での1昼夜の冒険譚をスラプスティックな技法を駆使してお茶目に描くと見せかけつつ大人世界の陰影と狂気を散りばめる2重底のような視線を現出させアナーキーな破壊の饗宴の果てにヌケヌケと物語を収…

ぼんち

★★★★★ 1991年1月26日(土) 毎日文化ホール 船場ブルジョワジーの凋落と時代のエネルギーを呑んで生きながらえる女たち。栄華を極めた60年大映の女優陣揃い踏みの圧倒を諧謔で受ける崑も雷蔵も鯔背だ。3人の女たちが高らかに談笑する入浴場面。ここに至って…

太陽の墓場

★★★ 1991年4月28日(日) トビタ東映 アナーキーなコンセプトは最高に良いのだが、寄せ集めの役者を散りばめた今村的混沌世界を理に勝った大島イズムが上滑りしていく。迎合し切れないそのギャップが面白いと言えば面白いが、やっぱ退屈でもあるし鬱陶しい。(c…

いろはにほへと

★★★★ 2008年4月5日(土) 日劇会館 どうみたって立派な詐欺師の話をどっかピカレスクなダーティヒーローみたく橋本忍が描き佐田啓二が演じるのが時代を思わせ笑える。まあいい。終盤の伊藤の涙は紛れもなく本物だし、何と言っても役者力のガチンコ味。三井で…

スパルタカス

★★★ 1991年11月4日(月) OS劇場 トランボの反骨も霞みハリウッドコードに蹂躙された形骸的キューブリック。濫作された有象無象の史劇映画と殊更には変わらぬ出来具合。ただ戦闘シーンだけは突出して美しい。『バリー・リンドン』で全編に渡ってリニューアル…

去年マリエンバートで

★★ 1980年10月5日(日) 大阪中小企業文化会館大ホール 何が本当で何が妄想なのかというテーゼは皮相なことにこの映画を観たこと自体が妄想だった気がするという締まらない帰結に拡散する。難解なのは望むとこだが終始ゆっくりトロトロ移動するカメラの動き…

サイコ

★★★★★ 1990年10月8日(月) シネマアルゴ梅田 お上品ポーズをかなぐり捨て、エロスと殺戮の扇情ショーに特化し心行くまでの技巧を注ぎ込む。キャリア最高のタイミングで産まれた願望の完璧な具現。モノクロ撮影や構成の断裂という逸脱までもが映画を神格化。生…

黒い画集 あるサラリーマンの証言

★★★★ 1990年11月11日(日) 日劇シネマ 清張を橋本忍が脚色という正に王道的正調推理人間劇であり誰が監督したって面白くなっちまいそうな気がする。ただ一方でどれも同じに見えてきちまうのが辛い。寧ろ主題が今のアンチモラルな時代には最早、風化したと感じ…

暗黒街の対決

★★★ 1990年11月18日(日) 日劇シネマ 何がどうなっているのかどうでもいいような話が延々続いてしんどいところに、バタ臭い喜八演出が半端に遊んでしまって置いてけぼりを食い肩入れのしようがない。カルトだと言えばそうなのかも知れないが、少しは琴線に触…

アパートの鍵貸します

★★★★★ 1983年5月7日(土) SABホール インモラルと純情や下衆根性と誠実は表裏であることをワイルダーは最高に哀切なロマンティシズムを背景に呈示し、付与のキャラと正反なシャーリーの翳りとレモンの誠実を抽出した。イヴの狂騒を逃れてアパートへ向かう…

日本の夜と霧

★★★★ 1983年12月11日(日) 伊丹ローズ劇場 1990年9月29日(土) みなみ会館 反体制闘争を描くに製作も制約を逆手に取った体制打破気分を横溢させるいう前代未聞の戦略。大島の空気を読む山師才能が全開。2世代の闘争の総括が呈示されたとも思えぬが吉沢京夫の…

弥太郎笠

★★★★★ 2011年11月26日(土) 日劇会館 ダイジェスト感は拭えないものの、明朗で真摯な錦之助キャラが十全に炸裂し終始快感神経が心地よく刺激される。マキノ演出も闊達で流麗。丘との再会の場では溜めの効き具合に惚れ惚れ。東や千秋らが要所で絡む按配も粋…

秋日和

★★★★ 1983年12月16日(金) ビック映劇 1992年2月16日(日) 日劇シネマ 『晩春』から10年の歳月を経て一巡した原節子の役回りが物語構造と同期した侘びしさが胸を打つ。3人組サラリーマン親爺のコンビネーションと岡田茉莉子の艶も完璧な配合度合いだが、結…

青春残酷物語

★★ 1983年12月17日(日) 伊丹ローズ劇場 体制的な全てを破壊し殉死するような覚悟はもとより論理的な立脚点も見受けられず、美人局の挙げ句の痴話喧嘩では萎える。太陽族映画の理想的帰結が虚無的な『ろくでなし』であったとすればこれは虚しく自壊した変革願…