男の痰壺

映画の感想中心です

映画1960

ふたりの女

★★★ 2016年8月20日(土) プラネットスタジオプラス1 大戦末期の各国列強が侵攻する伊半島内陸部の混沌とその奔流に流されるしかない人々。中空からの掃射で目の前の人が倒れても構ってる余裕もない。そういう現実認識のリアリズムはある。ただ、輪姦描写の…

太陽がいっぱい

★★★ 1976年9月12日(日) 三番街シネマ2 虐げられた末の反逆なのであるから感情移入できそうなものだし、映画は技巧を尽くしてドロンに片寄せもする。実際ドカエのカメラが捉える瑞々しい心の揺らぎは海上や市場のシーンでスパークしてる。だが、奥底に横たわ…

太平洋の嵐

★★★ 2024年1月11日(木) シネヌーヴォ 「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦」なる副題が各データベースでは付いてますが本篇タイトルにはそんなもんありません。宣材段階でつけられたもんだろう。そういうのん結構拘る人間なんです。 見飽きた太平洋戦争序盤史…

荒野の七人

★★★★ 1973年9月2日(日) 伊丹グリーン劇場 世界を取り巻く厚みは減失したが粛々と仕事を遂行するプロ魂は倍加され胡散臭いリーダーのもとでもミッション遂行のエネルギーは十全。7人と言うより4+3のキャラ力学が頃合の配分でド真ん中を射抜かれた少年の夢…

独立愚連隊西へ

★★★ 2002年2月2日(土) 動物園前シネフェスタ4 ショットの冴えは随所にありノッてる感はある。どこという欠点も無いが佐藤允はワン・オブ・ゼムになり群像劇はダラダラしていて焦点が絞り切れてない。どうでもいいような軍旗奪還を骨子に置いたせいでゲーム…

オーシャンと十一人の仲間

★★★ 1992年8月25日(火) シネマアルゴ梅田 シナトラ一家というものに対しての慣れ親しんだ予備知識が無い分楽しめないのだろう。映画は犯罪のトリッキーさには殆ど依拠していない。従ってラストシークェンスの傑出に比して他は凡庸としか思えない。シャーリー…

恋をしましょう

★★★ 1992年9月13日(日) シネマアルゴ梅田 アクターズスタジオ経由で洗練と疲弊を得たモンローからトリックスターとしてのオーラは消えた。だから脳天気とはお世辞にも言えないモンタンとの調和は逆説的にあるのだが何か地味。キューカーとの親和もチグハグで…

ぼんち

★★★★★ 1991年1月26日(土) 毎日文化ホール 船場ブルジョワジーの凋落と時代のエネルギーを呑んで生きながらえる女たち。栄華を極めた60年大映の女優陣揃い踏みの圧倒を諧謔で受ける崑も雷蔵も鯔背だ。3人の女たちが高らかに談笑する入浴場面。ここに至って…

太陽の墓場

★★★ 1991年4月28日(日) トビタ東映 アナーキーなコンセプトは最高に良いのだが、寄せ集めの役者を散りばめた今村的混沌世界を理に勝った大島イズムが上滑りしていく。迎合し切れないそのギャップが面白いと言えば面白いが、やっぱ退屈でもあるし鬱陶しい。(c…

スパルタカス

★★★ 1991年11月4日(月) OS劇場 トランボの反骨も霞みハリウッドコードに蹂躙された形骸的キューブリック。濫作された有象無象の史劇映画と殊更には変わらぬ出来具合。ただ戦闘シーンだけは突出して美しい。『バリー・リンドン』で全編に渡ってリニューアル…

サイコ

★★★★★ 1990年10月8日(月) シネマアルゴ梅田 お上品ポーズをかなぐり捨て、エロスと殺戮の扇情ショーに特化し心行くまでの技巧を注ぎ込む。キャリア最高のタイミングで産まれた願望の完璧な具現。モノクロ撮影や構成の断裂という逸脱までもが映画を神格化。生…

暗黒街の対決

★★★ 1990年11月18日(日) 日劇シネマ 何がどうなっているのかどうでもいいような話が延々続いてしんどいところに、バタ臭い喜八演出が半端に遊んでしまって置いてけぼりを食い肩入れのしようがない。カルトだと言えばそうなのかも知れないが、少しは琴線に触…

アパートの鍵貸します

★★★★★ 1983年5月7日(土) SABホール インモラルと純情や下衆根性と誠実は表裏であることをワイルダーは最高に哀切なロマンティシズムを背景に呈示し、付与のキャラと正反なシャーリーの翳りとレモンの誠実を抽出した。イヴの狂騒を逃れてアパートへ向かう…

日本の夜と霧

★★★★ 1983年12月11日(日) 伊丹ローズ劇場 1990年9月29日(土) みなみ会館 反体制闘争を描くに製作も制約を逆手に取った体制打破気分を横溢させるいう前代未聞の戦略。大島の空気を読む山師才能が全開。2世代の闘争の総括が呈示されたとも思えぬが吉沢京夫の…

弥太郎笠

★★★★★ 2011年11月26日(土) 日劇会館 ダイジェスト感は拭えないものの、明朗で真摯な錦之助キャラが十全に炸裂し終始快感神経が心地よく刺激される。マキノ演出も闊達で流麗。丘との再会の場では溜めの効き具合に惚れ惚れ。東や千秋らが要所で絡む按配も粋…

秋日和

★★★★ 1983年12月16日(金) ビック映劇 1992年2月16日(日) 日劇シネマ 『晩春』から10年の歳月を経て一巡した原節子の役回りが物語構造と同期した侘びしさが胸を打つ。3人組サラリーマン親爺のコンビネーションと岡田茉莉子の艶も完璧な配合度合いだが、結…

青春残酷物語

★★ 1983年12月17日(日) 伊丹ローズ劇場 体制的な全てを破壊し殉死するような覚悟はもとより論理的な立脚点も見受けられず、美人局の挙げ句の痴話喧嘩では萎える。太陽族映画の理想的帰結が虚無的な『ろくでなし』であったとすればこれは虚しく自壊した変革願…

悪い奴ほどよく眠る

★★ 1982年7月14日(水) 新世界東宝敷島 黒澤流のポリティカルフィクションは結局大時代な復讐譚に卑小化せざるを得ず、しかも不味いことに気持ち悪いまでにセンチメンタルなのだ。最悪の結果になった。正は邪を正せず邪は互いに啖い合い自壊する。そういうピ…

ビリディアナ

★★★ 1982年7月21日(水) 三越劇場 素晴らしくロジカルに展開していく反カトリックなアンチモラリズム。ではあるが終盤の突発的カタストロフィに至る劇的緊張が明確に醸成されてるとは言い難い。それがブニュエルなのだとしても明晰な撮影と演出であるだけに惜…

若者のすべて

★★★★★ 1982年12月8日(水) 三番街シネマ2 1994年7月16日(土) ACTシネマテーク 上質の文学的大河巨編と同質の量感と感銘がある。ドストエフスキーの「白痴」からインスパイアされたというドロンを中心に完璧なキャスティングと陰影に富んだロトゥンノの撮…

僞大学生

★★★★★ 1981年2月21日(土) SABホール 加被虐のこういう尖鋭化は時代的に珍しくもないが、泥塗れのジェリーに対してのクールネス若尾と伊丹の配置がエロスと胡散臭さも兼務する重層。息をもつかせぬ脚本のスピードと構成。エッジ効きまくりの村井のモノク…

おとうと

★★★ 1981年2月21日(土) SABホール 暗黒波動が渦巻く家庭でも健気な姉弟はかく生きたという視点は無い。両者は乖離し相克を見ずドラマトゥルギー無きなか崑の歪な変質趣味と宮川の強固な偏執審美のみが際だつ。甘ったれた「おとうと」にも最後まで共感で…

勝手にしやがれ

★★★ 1979年6月3日(日) 大毎地下劇場 1983年5月27日(金) 三番街シネマ2 手持ちノーライトカメラに時間軸無視の繋ぎや既成曲の断片使用に数多の引用など全てはここから始まった起源的価値を剥ぎ取り残るのは青臭い男女の痴話。先駆者は常に陳腐化するの例えか…