男の痰壺

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太平洋の嵐

★★★ 2024年1月11日(木) シネヌーヴォ

「ハワイ・ミッドウェイ大海空戦」なる副題が各データベースでは付いてますが本篇タイトルにはそんなもんありません。宣材段階でつけられたもんだろう。そういうのん結構拘る人間なんです。

 

見飽きた太平洋戦争序盤史だが、見終わったあと暗澹たる救いの無さに見舞われる。ハワイで大戦果をあげてイケイケムードで次のミッドウェイに臨んで完膚なきまでにやられる。このミッドウェイ海戦の描写が情緒を排して負けるべくして負けたことを淡々と綴っているのがいい。結果もう勝敗は見えた感が横溢して、それでも辛うじて生き残った兵士たちはお先真っ暗な南方戦線へと再び駆り出されていく。犬死にしにいくようなもんだ。

 

そういった戦争の成れの果てが描かれた点で特異性を放っている。松林宗恵の「連合艦隊」を昔見て情緒的な描写にウンザリした覚えがありますが、橋本忍のロジカルな構築力はある意味で非情緒的に戦史を捉えてると思いました。

 

ミッドウェイに於ける索敵の失敗や魚雷→爆弾への積み替え判断ミスが的確に描かれ最悪の結果に繋がっていく様は後の『八甲田山』を思わせる橋本の構築だが、どのみち無理筋だった太平洋戦争が兵士たちの無駄死にと家族の不幸へと繋がっていく悔恨の強度。(cinemascape)

 

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