★★★ 2023年11月9日(木) シネリーブル梅田3
女スパイのアクションものなんだとしたら物足りない出来であり、じゃあそれ以外に何かあるのか、ということだが、ロウ・イエの頭には嘗ての演劇場や演劇人たちへの郷愁があったようである。で、女スパイを上海から消えていたトップスターとして演劇を物語に組み込む。でも、それが大して巧くいってないと思いました。
太平洋戦争前夜の日本統治下の上海で、女スパイのミッションは日本軍の暗号を解くことで、その為に日本の武官に接触する。じゃあ、その日本武官との間に何かドラマが発生するかといえば大してなくって、結局は拉致って薬の力で吐かせるだけ。
一方、演劇の監督の男とも、かつては恋愛関係があったようだが、そもそもに上海に帰ってきた理由がスパイとしての本分を果たす為だから2人の間には何にも起こらない。消えていたスター女優という設定も、大向こうを唸らせる演技するとか全然ありません。
まあ、言わば舞台と登場人物が揃ったことで満足して、話を転がす手管が全くなっていない映画とでも言いましょうか。美術や撮影のパートは健闘しているんですけど。
スパイとしての或いは女優としての立ち位置が曖昧で、どっちも薄味で物足りない。大戦前夜の上海租界という舞台設定はモノクロ撮影も相まりある程度良いがオダギリとの絡みも希薄では何しとんのやであり、女優設定を放逐してでもサスペンスに特化すべき。(cinemascape)