男の痰壺

映画の感想中心です

映画1967

まぼろしの市街戦

★★★★ 1980年10月11日(土) 毎日文化ホール 「何が正気で何が正気でないか」では如何にも生硬だが、 それを「こっち側に留まるかあっち側に行ってしまうか」にすり替えたのが堪らなく文学的なのだ。そして、留まっても越境しても孤独感は拭われない。そこが痛…

殺しの分け前 ポイント・ブランク

★★ 2025年7月14日(月) テアトル梅田3 昔からこの映画の評価が高いことは知っていたので、今回の再公開を大層に期待して見に行ったのだが、やはり経年劣化は避けられなかった。落胆した。 同じ原作が後年「ペイバック」のタイトルで映画化されて、あんまり…

自然の歴史(組曲)

★★★ 2015年3月28日(土) シネヌーヴォ 生きとし生けるものは、魚貝から人体までじっくり見ると須らく気持ち悪いことを生体・死体織り交ぜて再確認させるのだが、しかし、結局は物喰う口の租借ほど摂理に従順で恥知らずな行為は無いという人間嫌いのアイロニ…

喜劇 急行列車

★★★★ 2025年1月5日(日) シネヌーヴォ 渥美清の既に出来上がってる芸風が万全である。「寅さん」に於けるテキヤの口上や売の所作と同様に車掌としての立ち居振る舞いを完全にモノにした上で崩してくるので厚みが違う。これが彼の映画としてのブレイク作とい…

愛の渇き

★★★★ 2017年8月17日(木) シネヌーヴォ 「しとやかな獣」<「愛の渇き」<「家族ゲーム」<「テオレマ」 まあ、脈絡のない比較だが、そんなところか。 とにかく、蔵原繕惟の特集上映を見に行って拾いもんだと思った。 のっけから変態臭がむんむんしておりま…

ある戦慄

★★★ 2017年5月6日(土) プラネットスタジオプラス1 ことが始まる前にご丁寧に登場人物たちを紹介し、件の車両に順次乗り込む。 そして、ことは起こった…。 実に正しく律儀に正統派パニック映画の筆法だ。 確かに戦慄を描いたものであるが、凶事に遭って崩…

刑事マディガン

★★★ 2016年5月7日(土) プラネットスタジオプラス1 現場と女房の家庭と現場と愛人のアパートと現場といったのんべんだらりなマディガンの往還に切迫感がないので途中で何の事件だったかも忘れてしまうという、ある意味で仕事に追われる市井人のリアリズム…

残酷ドラゴン 血斗竜門の宿

★★★ 2017年3月18日(土) シネヌーヴォ まあ、なんと言うか、武侠映画としての殺陣はもう、まるっきりトホホレベル。 ブルース・リー登場でカンフー映画が世間を席巻する数年前の作品であります。 ワイヤーの始祖とのことだが、そんなんあったんかいなっちゅ…

俺たちに明日はない

★★★ 1976年4月18日(日) 伊丹グリーン劇場 南部の倦怠とドン詰まり感。行き場のない連中が吹き溜まりに寄せ集められたワイルドバンチの痛々しいカラ騒ぎは祝祭的に描かれる余り胸に迫らない。終盤の非情への一気の転調が揺らめき交錯する視線の刹那に結実する…

メイド・イン・U.S.A.

★★ 1999年11月7日(日) 扇町ミュージアムスクエア 政治的であらんとする真性ロマンティストゴダールが、その歪んだ断層を埋められずに諧謔に逃れようとしたが自己崩壊した愚作。カリーナとのコンビネーションも黄昏感濃厚で、60年代ポップアートの最良具現…

暴力脱獄

★★★ 2022年10月24日(月) シネリーブル梅田2 脱獄と銘打った映画っていうと大体みんな入所早々から脱獄のことしか頭にないみたいな感じで、そのプロセスが映画の見どころになるんだが、本作ではそのへん全く無頓着である。原題は「クールハンド・ルーク」…

007 カジノ・ロワイヤル

★★★ 1995年1月5日(木) 扇町ミュージアムスクエア 意図して壊れるのはあざといが、これは意図せぬのに完璧に壊れてしまった代物で今日日のマニュアル的な製作過程では絶対に生じない作品だということは認める。しかし、だから面白いかと言えば然に非ずと言う…

いつも2人で

★★★★ 2001年3月2日(月) 動物園前シネフェスタ2 甘さが微塵もないシニカルさに驚く。長い夫婦人生の極めて具体的な何局面かをモザイクみたいな錯綜話法でつなげて手法的オリジナリティがあるし、我が身に突き刺さるようなリアリティもある。惜しむらくはオー…

昼顔

★★★★ 2001年3月7日(水) 動物園前シネフェスタ2 妄想人妻のマゾヒスティック白昼夢はドヌーヴの上の空とブニュエルの冷めた諧謔が交錯して巧まざる可笑しみを表出する。貴族階級のインポも下賤な活力も等分に否定され嘲笑に晒され挙句に訪れる平穏。そんな中…

マルケータ・ラザロヴァ―

★★★ 2022年7月24日(日) シネリーブル梅田3 半世紀前の1967年作だそうで、チェコの国民的な文学をチェコヌーヴェルバーグの旗手であるフランチシェク・ヴラーチルという監督が映画化した巨篇て労作と言っていいだろう作品。でも、公開されなかったのも…

プレイタイム

★★★★ 1994年8月3日(水) 京都朝日シネマ1 正直相も変わらずの弛緩ギャグは間延びしつつクドいという救いの無さなのだが、無機的な完全潔癖統一世界でのリフレ-ンが神経麻酔の如く機能し心地よい。終盤のレストランでの混乱も破壊のカタルシスに至らない。そ…

冒険者たち

★★★ 1993年5月17日(月) 扇町ミュージアムスクエア 妙ちきりんで浮世離れな冒険マニアの反リアリズムに世知辛い世間の現実が介入する。アンリコのサディスティック視線がバランサーとして機能。レティシアの選択は男前ドロンのヒロイズムを弥増させるが餌にさ…

クレージー 黄金作戦

★★★ 1993年7月11日(日) 日劇シネマ シリーズを多く見てるわけでもないが、ベガス大通りでのロケも大して効果的でもなくやっただけ感がさもありなルーティーンの果ての間延び記念大作。定型にはめられたクレージーの面々の脇で要所でポイントゲットする浜美枝…

茂みの中の欲望

★ 1992年10月6日(火) テアトル梅田2 誰もが皆、青春時代なんて恥ずかくって忘却の彼方に葬り去りたい筈なのであるが、それを気づいてないふりしてバカやってるのは一応許せても実は気付いてないんじゃないかという疑念の果て、バカのフリする真性バカであっ…

解散式

★★★★ 2006年10月28日(土) 日劇会館 任侠世界から仁義のなき世界へと移ろいゆく時代の境界という言葉が文字通り湾岸に並び立つ石油コンビナートで示現される。そして、「創造社」の2人の役者が旧き侠道の破壊者として登場するのも象徴的。的確な作法で深作…

殺人狂時代

★★★ 1991年1月19日(土) ルネサンスホール 喜八が拘泥するのは、あくまで映画技法内の熟達であって真のアナーキズムとは遠くかけ離れていることを露呈してしまった。そのアクの強さは認めるが哀しいまでに幼稚な世界観。シーンを横断するアクション繋ぎも遣り…

華岡青洲の妻

★★★★ 1991年7月27日(土) みなみ会館 嫉妬と自己犠牲がスパイラルに昇華し某かの崇高さを獲得するドラマトゥルギーに於いて増村は有吉に勝てない。だが、その葛藤に躊躇しつつも希求は別ベクトルな雷蔵のスタンスの微妙。そこに同期する生理こそ納得もの。小…

コレクションする女

★★ 2021年7月19日(月) テアトル梅田2 イジイジと内向していく青春の悶々と自意識。 彼女のことが気になって仕方ないのに高踏的な言句に依って立つ振りをやめられない。おそらく、ロメールやシャプロル、ゴダールといったヌーヴェルバーグの面々の俺たちっ…

上意討ち 拝領妻始末

★★★ 1990年3月21日(水) 日劇シネマ 『人間の條件』的骨太作風でこそ描いてほしい、システムに翻弄される弱者の叛逆や、骨抜け人生を送った男の老後の目覚めや、息子や嫁への真摯な愛情なのだが、『怪談』風表現主義演出の小賢しさが興を冷めさせる。貧乏くさ…

昭和残俠伝 血染の唐獅子

★★★ 1990年4月1日(日) 日劇会館 『昭和残侠伝』の監督として佐伯清の凡庸なアナクロは後世に残らなかった。集団のコラボと叙情味で秀でるマキノの水準作。予想外に屹立してしまった『死んで貰います』を別格としてもこれはこれで退屈はしない。しかし、若干…

日本のいちばん長い日

★★★★★ 1990年4月7日(土) 日劇シネマ 怒涛の切迫の中、抗戦・終戦の軋轢が苦渋の汗と妄信の怒声と狂気の殺戮を伴い錯綜。喜八ピークの編集テクが俯瞰の視座に結実した映画史的僥倖。局面に埋れた史実に言及する大講談で庶民不在を誹るのは筋が違う。パノラミ…

モンフォーコンの農婦

★★★ 2021年7月15日(木) テアトル梅田2 エリック・ロメールがテレビ放送用に撮った短篇ドキュメンタリーで、とある1人の農婦の日々を追ったものだが、彼女自身のナレーションでナビゲートされるのがオモロい。 「農家なんかに嫁っこさくる女子は、めった…

博奕打ち

★★★★ 2009年10月10日(土) 新世界東映 任侠の閉じた世界の中の更にミニマムに限定された領域で鶴田・待田・山城VS河津・若山(快演)・小池のシンプル構図も心地よく、小沢演出もアップ使いの時宜を得てナイス。後の組織論的笠原世界とは違う味わいが又良…

卒業

★★★★ 1975年11月10日(月) 梅田地下劇場 SEX艶笑劇に皮肉と悲哀と意地を塗しだけでなく、モラトリアムの空虚をS&Gの感傷とサーティースの煌きで抽出した多元宇宙。権威を纏った世代間格差は抗すべきモノとの妄信的確信にはニコルズの心も揺らぐ。鮮や…

世にも怪奇な物語

★★★★★ 1986年1月3日(金) SABホール 暗黒が日常に介在する近世にそれを求めた2人に対し、一見無縁な退廃と人工灯のバリバリ現代の次元の狭間に予想外の地獄を見せるフェリーニ篇が発想の根源で勝っている。深夜の高速道路で佇む少女は時を越えて「童夢」…