男の痰壺

映画の感想中心です

映画1978

ディア・ハンター

★★★★ 1980年2月29日(金) フェスティバルホール 青から緑へ、静寂から狂騒へとの鮮やか過ぎる転調の基底には狂気が通低する。 ベトナムは彼らの運命を狂わせたか?潜んだ狂気が表面化しただけだ。圧殺の移民史 の反アメリカ賛歌。(cinemascape) kenironkun.ha…

鬼畜

★★★ 1978年10月29日(日) ダイニチ伊丹 冒頭のタイトルバックのセンスは音楽の良さも相まって野村らしからぬ世界観の提示を期待させるが、後は普通。題材をボカさず徹底して突き詰めた気概は買いはするが正直凡庸な表現力だと思う。子役の無表情は誤魔化しと…

ラスト・ワルツ

★★ 1994年5月3日(火) みなみ会館 コンサート設計までして周到な準備をしたと言う割には映画的興奮がない。寧ろドキュメントのもたらす意図せざるものまでも画面から放逐させ沈滞ムードで雁字搦めになったみたいな印象さえある。8人の名キャメラマンにあるが…

逃げ去る恋

★★★ 2022年7月11日(月) テアトル梅田2 アントワーヌ・ドワネルものの最終章だそうだが、トリュフォー自身は第4作「家庭」で帳尻をつけたつもりだったので、如何にもな蛇足感がある。大して面白くない。 多分、全篇の半分くらいが第1〜4作「大人は判っ…

赤穂城断絶

★★ 1993年2月28日(日) トビタ東映 何でもありの『柳生』の次に「忠臣蔵」とは企画力が圧倒的に貧困で約束事の名場面集を寄せ集め俳優を使って深作流の或る意味バタくささで形成しただけに過ぎない。東映が狼煙を上げた時代劇復興の掛け声は2作目にして夢の…

柳生一族の陰謀

★★★ 2003年4月18日(金) 千日会館 普通の芝居をする人達の中で1人大芝居を貫く錦之介に拮抗し得るのはバカ熱い千葉のみで、この父子の相克に収斂するラストは正に傑作。時代劇であろうがナレーションとスチルで相変わらずの『仁義なき』演出を展開する深作節…

最も危険な遊戯

★★★ 1993年11月7日(日) トビタ東映 大の大人の殺し屋ごっこ的全篇に蔓延するチャチさ・イーカゲンさを一周回して優作映画なのだからと納得させるカリスマは解ったことにしても尚けっこうダルい。有名な病院の階段に於ける手持ちの長回しは相米的に凄いけど、…

ダイナマイトどんどん

★★★ 2007年1月6日(土) トビタ東映 明らかに深作演出を意識した前半がパロディだと言うなら汁がしたたる位の本気が欲しい。設定が甘すぎ。東映実録常連組と岡本組とのコラボも食い足りなく岸田にもう1枚天本が欲しいところ。辛うじての終盤の狂騒がなけれ…

木靴の樹

★★★★ 1980年7月9日(水) 大毎地下劇場 農民が搾取される立場を受け入れてた時代にも小さな喜びや悲しみや思いやりや勇気はあった。その在り様の総体を可能な限りのリアリティで再現する試み。撮影まで手掛けたオルミ渾身の叙事詩でありミラノへの新婚旅行が…

殺人遊戯

★★★★ 2009年11月21日(土) 日劇会館 ハメット的世界に馴染む原田芳雄風口跡の松田優作はジグモンド的望遠使いの仙元カメラ世界の主人公としても又座りがいい。「ルパン」な大野音楽も含め混然とした模倣の確信的世界は統一のある完成形にまで至る。予想外で…

ユキがロックを棄てた夏

★★ 1982年4月29日(木) 大阪府立文化情報センター 映画屋のふりをするのではなくトコトンに映画屋であろうとするということはアンダーグランドでは異彩を放ってもプロに混じると凡百に塗れる。日活ニューアクションへのオマージュだけでは世間は通らない。批…

秋のソナタ

★★★★ 1982年9月26日(日) 三越劇場 透徹された表現主義は影を潜め自然主義的表現だからこその火花散る演技合戦に圧倒され、ショッキングなディテールも冴える。そして、カメラの前後の葛藤にも。対極の映画史を背負った2人のBergman。絶望の深淵からしか得ら…

星空のマリオネット

★★★ 1982年10月31日(日) 関西学院大学1号別館1号教室 虚無をポーズで終わらせることなく生真面目に内向する青春の黄昏。ただ、生真面目すぎてミニマムな閉じた世界に耽溺したままで終わるのでは今いち映画的とも思えないが、私小説世界と切って棄てるのも…

炎の舞

★★ 1981年1月7日(火) 伊丹ローズ劇場 隔絶された世界で燃え上がる恋人達。の筈が全く燃え上がってるように見えないので、妙にしんねりむっつりしただけの代物になった。百恵の能面からは愛の炎は終ぞ表出されず、表面ずらだけストーリーをなぞってみたの誹り…

ブラス・ターゲット

★★★★ 1981年1月25日(日) 伊丹グリーン劇場 大戦秘話として目新しいものではないが、ハフ演出が一貫してカットを細分化してテンポが抜群に良い。燻銀とも言えるカサベテスを主軸に添え、途中から絡んでくる殺し屋フォン・シドーも又拮抗し得る渋さ。スイス…

アシャンティ

★★ 1981年3月21日(土) トビタシネマ 顔見せ程度にちょっと出ては消えていくロートルスター達が緩すぎる。ユスティノフは全然怖くないしホールデンは柄じゃない。一方で砂漠で光るアラブの男ベディは嘗てのシャリフをも髣髴とさせ光る。冷えた好食材は親爺…

ゾンビ

★★★ 2019年12月25日(水) シネリーブル梅田2 全てのゾンビ映画の頂点に立つといわれている本作だが、バージョンアップされた後年の作品群を見た目でみると、やっぱどうなんでしょうね。 だって、最近のは噛まれたら30秒もせんうちにゾンビになるし、高速…

インテリア

★★★★★ 1979年10月14日(日) 大毎地下劇場 神の不在と女の性というベルイマン2大要件から神学的前衛を除いたエピゴーネンだとしても姉妹、親子、そして夫婦の確執は腰が据わってドラマラスな醍醐味を満喫させる。自分本位の基準による統御は周囲を歪ませる。…

ダブル・クラッチ

★★ 1978年4月29日(土) ダイニチ伊丹 時代の上澄みのような軽佻浮薄なる山根と郷の資質を秋吉の先鋭が補完していた事を思い知らされた作。松坂のベタベタな演技はコンビの弱点を決定的に露呈させた。本質が晒された旧時代の形骸とも言うべき駄作。 (cinemasca…

帰らざる日々

★★★ 1980年7月31日(木) 毎日ホール リアルタイムの青春は苦しみと不安の連鎖であるにしても、回顧の中では輝きだけが残像のように残り続ける。そういう自明の理を平易化されて出されても何がどうとも思えない。どうしようもなく不幸な連中ばかりで泣けるが若…

犬笛

★ 1978年4月2日(火) 伊丹ローズ劇場 平凡な男が娘を取り返す為にみせる凄まじい執念が泣かせる話なのに文太じゃ平凡な男でないから駄目なのだ。そしてキラ星のごとく出てくるチョイ役の面々の救いがたい1.5級感。リアリズムの欠片もない予定調和を中島貞…

赫い髪の女

★★★ 1980年8月22日(金) 毎日ホール 過去になぞ興味無く未来なんてどうでもいい…と言うのは解る。性欲世界に埋没していきそうに見えて、しかし結構リアルな生活者であったりする。その匙加減の問題なのだと思うが生活臭のある台詞から、かえって作意が垣間見…

ピンク・パンサー4

★★ 1980年9月22日(月) 伊丹グリーン劇場 アイデアが枯渇し主役を凌駕してきたドレフュスのマゾキャラも最早飽きられる。自棄のやんぱちでクルーゾーの変装と生き返りアイデアをひたすら繰り返す一種のバラエティショーにしてみたが如何せんエドワーズでは生…

フューリー

★★ 1980年10月3日(金) 毎日文化ホール 冒頭の誘拐劇からアーヴィング登場くらいまでがサスペンスフルで期待を抱かせるのだが、物語が2人のサイコキネストを往還し出すと全くの停滞感に見舞われる。そもそも元ネタ自体が超能力という題材に寄りかかりすぎな…

ふたりでスローダンスを

★★ 1980年11月18日(火) 大毎地下劇場 冴えない親爺の話というならそれはそれでいいのだが、良識的なる仮面の下のおっかなびっくりの下心を爆裂もさせぬままに曖昧に温く物語りは進行するだけ。いくらなんでも地味すぎ。『ロッキー』ヒットの余波で日の目を見…

男はつらいよ 噂の寅次郎

★★ 1978年12月28日(木) ダイニチ伊丹 シリーズには間違いなくバイオリズムがあって、不調期に奇を衒ったものを連発して みたものの益々病状が悪化し、ヤバイと思ってオーソドックスに回帰したもののルー ティーンワークにしかならなかったという冴えない作品…

愛の亡霊

★★★★★ 1979年2月10日(土) 伊丹ローズ劇場 大島が政治的・社会的メッセージを枠外に置いて狂気や煩悩からも遥かな地点に咲かせた人間の絶対善性。しかし、無垢であることはそうでないものを狂わせていく。人間の救い難い性を撮影所システムの残り香を駆使して…

曽根崎心中

★★★★ 1979年2月10日(土) 伊丹ローズ劇場 浄瑠璃言葉をハイで一本調子な木訥さで朗ずる2人。怨み節を思い詰めた目力に昇華させた梶芽衣子が一世一代の美しさで宇崎竜童の一生懸命のヘタレと絶妙な噛み具合。左・橋本・井川のサポートも強固極まりない。(cine…

オーケストラ・リハーサル

★★★ 1980年12月27日(土) 三越劇場 映像ハッタリ翁フェリーニも目眩く虚仮威しを封印されたワンセット劇でなんとなく冴えない。そもそも描かれるべきエモーションは映画には存在せず場当たりな帰結で誤魔化すのであれば破壊のカタルシスは生じようがない。ポ…

サード

★★★★ 1979年4月2日(金) 伊丹ローズ劇場 1980年8月16日(土) 毎日ホール 閉塞世界に穿たれた風穴から見える幻影の「九月の町」は蜻蛉のように儚いが、一方で確固たる現実世界は劇画チックに暑苦しい。モラトリアムということの平熱での表現。底流では通暁する…