男の痰壺

映画の感想中心です

映画1999

シックス・センス

★★★★ 1999年11月5日(金) ワーナーマイカルシネマズ東岸和田5 第六感を持つ少年の遭遇する幽霊の超常現象描写が相当に陳腐な表現に終始するのがどうにも甘いが、全篇を遍く横溢する哀感を帯びた寂寥が夫と妻の二者二様の孤独へと急転直下に連結するラスト。…

ディープ・ブルー

★★★★ 1999年10月22日(金) ワーナーマイカルシネマズ東岸和田1 冒頭で一応の敬意を表した後、笑いに至る間際の寸止め的な地点まで極まった容赦無さの徹底ぶりで『JAWS』とは違う地平に立ち得ている。ゲスもゴアも臨界線上で高度なパランス感覚を見せ、キ…

金融腐蝕列島 呪縛

★★ 1999年10月11日(月) ホクテンザ1 『華麗なる一族』の時代じゃあるまいし、こんな大時代な銀行頭取を出す錯誤感覚の一方で絵空事めいた米映画ヒロイン風女性記者。現在認識の決定的欠如だけならまだしもアメリカかぶれの剽窃を直截に日本の風土で成立させ…

実録梁山泊 パチプロ列伝 浪花の哲

★★★ 1999年10月11日(月) ホクテンザ1 堅実にまとまってて好感は持てるが何せ余りに小さな世界の話すぎる。数万円勝った負けたのパチンコごときもんを映画館で金払って見たいと思わない。好事家の為のジャンルだし多分に梁山泊の自己弁明。まあ、本当のパチ…

菊次郎の夏

★★★ 1999年9月18日(土) 新劇会館シネマ2 極私的であることに異論はないが、普遍のフィルターを濾過しようと皆苦労する。ナマに投げ出された感情を受け入れろと言う姿勢は甘え。しけた風景の中でしけた連中がしけた話を展開するが音楽だけがやたらオーバー。…

マトリックス

★★★ 1999年9月13日(月) MOVIX六甲5 虚構に対するサイバーでメタな構造はクールではあるが、その解読過程をフィジカルなクンフーに委ねる愚劣。挙げ句には情緒的な任侠世界の住人の如く人質奪回の殴り込み。それは、最高沸点として配置されているのだが…

お受験

★★★ 1999年9月18日(土) 新劇会館シネマ2 お受験・リストラ・マラソンという3題噺で鮮度落ちの一色が肩力を抜いて仕上げたもので、何かにつけて詰めが甘いと思うのだが泣かされてしまったのも事実なのだ。言うことがまともで子役が良いからだろう。永ちゃん…

ペイバック

★★★★ 1999年8月29日(日) ホクテンザ1 殺したいほど憎くったって最後には神の如き寛容さを見せる伝統ヒーローよ糞喰らえとばかりのギブソンの呵責も容赦もないキャラが一級の出来で、ヘヴィな撮影がハードボイルド世界を全うしている。『ポイント・ブランク…

アイズ ワイド シャット

★★★★★ 1999年8月1日(日) 梅田東映パラス 最先端の過激度は無い替わりに極上の器が用意され、鬼面人を驚かすハッタリの替わりに揺れ動く心の襞の細部をも精緻を凝らして描くキューブリックの新局面と思われたのに…。クルーズとキッドマンのかけ合いには後期ベ…

のど自慢

★★★ 1999年3月22日(月) シネマアルゴ梅田 コクあるヘヴィな映像も新旧織り交ぜたキャスティングの妙も優等生的な達成度で予定調和の罠にはまっている。井筒に求めたいのは「もっと破壊を!」…って言ったって無理か…安直にマスメディアに露出し出した映画監督…

ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒

★★★ 1999年3月13日(土) OSシネフェニックス1 怪獣が当たり前のように日常に介在するパラレルな世界観が序盤の渋谷壊滅には文句無くあり意表を突く。しかし、恨みとか復讐とかの、どうしようもなく日本的な情緒が物語に投入されてくるにつれ失望感に覆われ…

共犯者

★★ 1999年5月2日(日) 新世界東映 題材と竹中主演でどうしたって石井隆映画の文脈延長上で見られる宿命に対して無自覚だと思う。エロティシズムを廃しバイオレンスに新境地を見出そうとしたが垢抜けしないこと甚だしい。唯一キョンキョンが勿体ないくらいの哀…

英二

★ 1999年5月2日(日) 新世界東映 TV「とんぼ」には垣間見えた寡黙な男の任侠美学の残照は映画前半ではまだしもあるかに見えた。しかし、終盤には驚天動地の次元に映画は突入する。それにしても凄い…凄すぎる。怒りを通り越し笑うしかないという境地に達せら…

39 刑法第三十九条

★★★★★ 1999年5月15日(土) アポロシネマエイト5 『砂の器』を参照したというのも成程な最果ての地から時間を遡行しての情念。テーマとして新しくも無いものを、あざとさを恐れぬ今風演出でゴリ押しする確信性。そして、コンセプトに沿った演技者達は垂涎の曲…

アドレナリンドライブ

★★ 1999年7月20日(火) 扇町ミュージアムスクエア ピードが決定的に欠如しているのでアドレナリンなんてこれっぽっちも噴出しないしドライブ感も全くない。メジャー仕様のお上品な余所行きで青臭さだけが強調される。暴力も欲も更なる過激を!だ。そうであっ…

リング2

★★★ 1999年9月4日(土) ホクテンザ1 中田絶頂期であっただけに、超弩級のショッカーは無いが足掻いてもどうしようもない絶望感を漲らせ、菜々子の登場あたりまでは撮影もムードも暗澹たる悲劇性を醸し出して秀逸だった、ただ、終盤がチャチすぎる。形象化さ…

双生児

★★ 1999年10月2日(土) みなみ会館 大正時代をこういう前衛的モダニズムで描くやり方にウンザリ。『天国と地獄』を悪方向にカリカチュアしたかのような貧民街など最低の解釈。メイク・衣装を含めた表層的虚仮脅しは見る者を入れ替りのもたらす恐怖の本質から…

黒い家

★★★★ 1999年12月9日(木) ユナイテッドシネマ岸和田8 ありきたりな風景を異化させるフレームの切り方とロケーション選定の眼力。過度にカリカチュアした人物造形。そういったコンセプトが『家族ゲーム』以降の森田作品中で最も成功している。正味惚れ惚れす…

皆月

★★★★ 1999年11月20日(土) テアトル梅田1 失踪した妻を追うという魅力的コンセプトは放置され、奥田の主人公は共感出来なく面白みも無い。一方で、それを補って余りある北村一輝と吉本多香美。規格外の暴力と狂気。予想外のエロスと開き直り。2人が全篇を統…

御法度

★★★★★ 1999年12月18日(土) 梅田ピカデリー4 時に自走に任せつつ下すべき裁断は怜悧に。物語内の組織統御論と大島自身の映画製作に於けるそれが理想的に同期する。画面に漂う緊迫感は久しく無かったものだ。嘗て反駁した筈の先世代のイズムに長い道のりの果…

白痴

★★★★ 1999年12月11日(土) 梅田ガーデンシネマ2 長屋を取りまく環境描写のリアリズムが秀でており、その基盤の上でスーパーポップでサディスティックにカリカチュアしたTV局の虚妄か辛うじて成立している。清順や寺山的に空襲に仮託されたバブル崩壊の残滓…

ブレア・ウィッチ・プロジェクト

★★★★ 2000年1月17日(月) ユナイテッドシネマ岸和田1 主観カメラ2台に限定する手法的制約を如何に切り抜けるかという幾何学的な興味。往々にして妥協と凡庸の陥穽に陥るところだが全く針はブレなかった。こういうのは、ノータリンか強固な意志を持つ者にし…

どこまでもいこう

★★★ 2000年1月29日(土) 扇町ミュージアムスクエア 少年時代は大抵の事に落とし前をつけられないままに、どんどん時間が過ぎていってしまうもので、リアルと言えばそうなのかも知れぬが、たとえ虚構だと言われるにせよ映画は矢張り落とし前をつけて欲しい。唐…

プリズナー・オブ・ラブ

★★ 2000年1月15日(土) 天六ユウラク座 主人公が余りに受け身で場当たり的な為に物語が生半可にしか転がらずもどかしい。監禁・飼育といった扇情的題材ながらナオミ・キャンベルへの遠慮からか、そっち方面の期待も充たされず、となれば残るは映画スターとし…

DEAD OR ALIVE 犯罪者

★★★ 2000年1月29日(土) ホクテンザ1 対決構図が描きこまれておらず2大スター競演の意味が無いし物語が収斂するラストの反則技もとってつけた感が拭えない。単なる自棄糞の公開オナニーだ。寧ろ既存セオリーを破壊したのは冒頭の短縮戦術で遣りたい放題。勢…

雨あがる

★★★★ 2000年2月4日(金) ワーナーマイカルシネマズ東岸和田6 如何にもな黒澤的教条臭が鼻につく一方、主演2人の醸し出す夫婦の間に流れる空気の裏も表もなく互いを思い遣る気持ちの清々しさに心深く打たれる。ただ、小泉演出には1級の贋作を見たかのような…

ファイト・クラブ

★★★ 2000年2月19日(土) ナビオシネ5 聞いたこともない殴り合いによるセラピーとは斬新で全く読めない展開に期待が膨らみ続けたが終盤ネタが割れた途端に一気に退いてしまった。破壊すべきは虚構ではなくリアルな何かであるべき。脳内世界に収斂される物語は…

極道血風録 無頼の紋章

★★★ 2000年1月29日(土) ホクテンザ1 保守に抗する反動のアナーキズムという構図を描けていないから表層的にしかならないし、ガチガチの保守肩入れ姿勢が救いようもなく大時代なのだ。大体に的場が決定的にミスキャストな気がする。力ともどもに立ち役の柄じ…

マグノリア

★★★★★ 2000年3月19日(日) アポロシネマエイト5 日常の営為の中で人は皆悩みを抱えて生きているが、それだからこそ愛おしいのだということを高らかに宣言してるかのよう。寓話的体裁に挟んだ錯綜する数時間という構成の妙もさることながらカメラワークの高度…

救命士

★★★ 2000年3月25日(土) ワーナーマイカルシネマズ東岸和田7 主人公の安らぐ間もない日常と憔悴、その合間に訪れる過去の幻影。2重構造の表と裏が不可分に作用反作用をもたらしクライマックスへと…という『タクシー・ドライバー』的破壊のカタルシスは無く…