男の痰壺

映画の感想中心です

映画1987

デ ジャ ヴュ

★★★ 2024年4月16日(火) シネヌーヴォ 17世紀の人物を調査している男が、日常に戸ば口を開いた過去の世界に迷い込み、その人物を目撃する。 たまたま今「異人たちの夏」の再映画化版を上映してるけど(見てませんが)、似たような話だと思う。現在の日常…

BU・SU

★★ 1996年8月24日(土) 萩スカイシネマ 大体、芸者になろうとする女子高生という奇異な設定の必然性が感じられない。そんなものが無くても疎外感とか焦燥感は描ける筈だと最初に思うと結局最後まで乗れない世界。結局富田靖子ありきの作品であり内館脚本に本…

アメリカの惨劇 188人を私刑した男

★★ 1994年2月12日(土) 新世界国際劇場 数人殺したそのあとは殊更の葛藤もなかったのだろう。過ぎたるは無きに帰する。でも、だから何だって言うのか。これを再現ドラマで描く動機を理解できないし理解したくもない。ローバジェッドの泡沫フィルムの一群の中…

エリザとエリック

★★★ 1994年4月9日(土) ACTシネマテーク 隔絶された世界を客観的にどう認識するかの視点を欠いてるので、他人のオナニーを見てるような味気なさしか感じない。嫉妬はあるが肉欲はない姉と弟の「おままごと」遊びは、何故に2人が充足しているのが理解しか…

友だちのうちはどこ?

★★★ 1994年8月3日(水) ゆやホール この少年の1日の顛末のささやかなサスペンスにエールと共感と微笑みをもって対するに些かも吝かではないのだけど、ミクロな視点からの展開が何時しかマクロな世界観に何処かで連携していく気配も見えてこない。その程度の…

ザ・デッド 〈ダブリン市民〉より

★★★★ 1994年10月29日(土) みなみ会館 雪降りしきる屋外と対照される屋内の料理と人いきれの暖かさに目頭が熱くなる慎ましやかな一夜のアイルランド小話。そういう世界では起動した悔恨や嫉妬さえも悠久の時間軸に包まれてゆく。善意と謝意と幾ばくかの諦念で…

ゆきゆきて、神軍

★★★ 1994年11月5日(土) みなみ会館 この映画は奥崎の滅茶苦茶さを傍観しているだけであり、一緒になって騒ぎ立てるか、とことん否定して映画そのものを崩壊せしめるかどっちかに依るべきだった。とんでもないおっさんに良く付き合って御苦労さんだけではつま…

男はつらいよ 知床慕情

★★★★ 1993年1月31日(日) 日劇会館 当書きされたと思しき三船が有りそうで実は映画で余り見ない日本親父のスタンダードを体現して絶妙。そう来れば寅が後景に退くのも戦略的にも納得できるが、常連竹下のマドンナ起用が奥ゆかしく後景感を払拭しているのも良…

殺人に関する短いフィルム

★★★★ 2003年4月29日(火) シネリーブル梅田1 青年の殺人に至る背景が解き明かされるにつれ感情移入を強制される居心地の悪さを感じたのは事件と社会構造とのロジカルな因果関係を解き明かせてはいないからだろう。にしても、このフィルター駆使による閉塞感…

グッドモーニング・バビロン!

★ 1993年8月5日(木) ゆやホール 兄弟愛や家族愛や夫婦愛らしきものが並列されてはいるが何一つ沁みてこず、サッカリン入りの駄菓子のように甘っちょろい。大風呂敷を広げて『イントレランス』という神話の領域に拠って立つにしてはスペクタクルが不足で紙芝…

ワールド・アパート

★★★★ 1992年4月18日(土) 毎日文化ホール 枠外にある隔てられた世界が自分の世界と不可分だと感じられるようになる。反アパルトヘイトを謳うに少女の身の丈に合う視線で静謐に居丈高じゃない内省的スタンスに徹している。戦略臭を感じつつもこういうのに弱い…

子供たちの王様

★★★ 1992年4月18日(土) 毎日文化ホール ど素人先生奮闘記というほどの腑に落ちる何かがある訳でもなく主人公の内実にもそれほど踏み込まない。その割にテーマは教育の在り方という一元的なものに見え単調。ときたま象徴性を帯びた表現も見られるが、それ程に…

スルー・ザ・ワイヤー

★★★ 1992年4月21日(火) シネマヴェリテ 気の利いたミュージック・クリップではあるが、逃亡する脱獄囚ってのが如何にもな設定で無常の中に有情を見出すカウリスマキの愛すべき資質が発揮されたとは言い難いだろう。ズレた諧謔は未だ見出せず流された感が払拭…

エンゼル・ハート

★★ 1992年5月24日(日) パルシネマしんこうえん 確信的にムードに埋没して自走すれば開ける地平もあろうが計算尽くの小手先で表面ずらをなぞっただけの薄皮めいたペラさに全篇被われてる気がする。であるから悪魔なんですと言われた時点で「さよか」で終わり…

男はつらいよ 寅次郎物語

★★★★ 2005年3月18日(金) トビタ東映 疑似家族形成の過程が性急で少し嘘臭いが、子供の親探しとマドンナとの絡みが巧みに配置された展開が極めてバランス良い。刺身の端に甘んじた秋吉ではあるが正面から寅に迫る女っぷりには山葵が利いている。受けた渥美も…

モスクワ・エレジー

★★★ 2021年10月3日(日) シネヌーヴォ ✳︎今回の上映では「タルコフスキーに捧ぐ」の副題がついてましたがオリジナルでの表記としました。 ソクーロフは若手の頃、自作が上映禁止の憂き目にあった時、擁護してくれたタルコフスキーに感謝の思いがあったらし…

ラストエンペラー

★★★★ 1991年9月1日(日) ホクテンザ2 ベルトルッチが全てを手中に入れた上で構築したとは思えない。妖怪支配の退廃異世界が投げ込まれた幼児に形成を及ぼす過程には納得するが、後半の重層的史観には自己範疇のエッセンスしか窺えず薄っぺらい。論外の坂本は…

神経衰弱ぎりぎりの女たち

★★★ 1991年9月7日(土) 毎日文化ホール 地中海的彩色と地中海的骨格が氾濫したアメリカンソープオペラなシチュエーションコメディ。神経衰弱という日本語感とは余りにかけ離れた逞しい女達により演じられる喧噪は彼女達が思う程の切実味を訴求しないので全く…

カンフー・マスター!

★★★★ 1991年10月19日(土) 毎日文化ホール 抑制の効いた逆ロリータであるにしても、一種清々しいまでのこのさばけ方は生半可ではない。それがヴァルダやバーキンの生き方をこそ投影している点で通常の物語よりリアリティは一段の高みに達している。身内総出演…

必殺4 恨みはらします

★★★ 1991年10月20日(日) トビタ東映 ルーチンワークの原TVシリーズに映画界に於けるルーチンワーカー深作が得意の傾いた意匠てんこ盛りの骨太さを織り込み対価に見合うものにはなっている。見合わないクソ劇場作があっただけに、やけに上作にも見えるが実…

偽りの晩餐

★★★ 1990年2月4日(日) セントラル劇場 良い題材なのだが、ブルジョワを描くにブニュエルのような徹底したアイロニーにもフェリーニのような大仰なカリカチュアにも欠けるのでどうにも歯痒い。かと言って少年たちに寄ったポジションでもない。オルミ自身によ…

ペレ

★★★★ 1990年3月4日(日) セントラル劇場 『木靴の樹』もかくやの農村の四季をとらえたカメラと美術のリアリズムを緻密な計算で完璧に支配し得た驚嘆の完成度の農村少年旅立ものだが、完璧すぎて無駄も破綻も無くさくさく判り易すぎて少し物足りない。あかんた…

紅いコーリャン

★★★★ 1990年8月4日(土) アクア文化ホール 明確な色彩設計と剛腕な筆致が融合し苛烈な生き様を際立たせる。見たこともないようなものを叩き付けられた感じはしないが、後に形式に拘泥しゆく藝謀の未だ荒削りな原初の資質が剥き出しの情念とマッチング。只管に…

光る女

★★★★ 1990年8月11日(土) みなみ会館 相米のことだからクドいまでのダメ出しをした筈にもかかわらずのド素人カップル武藤と秋吉のヘタレで木訥な演技がモチーフの「純愛」にフィットし涙を誘う出来。クラブジョコンダの意匠は借り物臭いがシャープな撮影とフ…

男たちの挽歌 Ⅱ

★★★ 1990年7月22日(日) みなみ会館 ジョン・ウーは撃ちまくり破壊しまくる銃撃戦だけを撮りたかったようで、結果、堪え忍んで最後にブチ切れる任侠世界が後方に追いやられ、何故か獲得したのが80年代アメリカ映画の1系譜たるベトナム帰還兵ものの厭世観だ…

恋恋風塵

★★★★★ 1990年9月1日(土) 京都コマゴールド 劇的な何事もないのに充ち満ちる郷愁。計算も多少はあるのだろうが清冽な映像は見たことのない域に達している。野外上映のスクリーンに代表されるストーリーと直に連携しない風景のフレームの切り方が巧く、そうい…

建築家の腹

★★ 1990年9月30日(日) 毎日文化ホール 何でもかんでもモノマニアックに左右対称にするアイデアが主人公の精神的葛藤とリンクしてる訳でもないのでアイデア倒れとしか見えない。映画的ハッタリの欠如した演出のもとでヴィエルニ撮影は完璧の域といっていいの…

バグダッド・カフェ

★★★ 1990年11月24日(土) みなみ会館 太ったおばはんが空気を和らげ、ささくれた人間関係を緩和する。殊更目新しくもない上に、如何にもな設定があざとさキワキワ。1歩間違えば見れたもんじゃなかったと思うが、女2人の掛け合いの妙味が真実味を付与。気障…

チャイニーズ・ゴースト・ストーリー

★★★ 1989年1月16日(月) 長崎東映パラス 腑抜けな優男が恋い焦がれて自ら越境し行くならともかく、最後まで強者の手を借りてと言うのでは物語のカタルシスは生まれない。であるから悲恋めいた造作は徒にイライラ感を増幅するのみだ。ジョイ・ウォンの圧倒的美…

インテルビスタ

★★ 1989年1月22日(日) セントラル劇場 『ローマ』や『道化師』で遣り尽した筈のドキュメントとフィクションの融合を今更ながらに又も繰り返し尚且つ先鋭さを失い弛緩している老醜ともいうべき作品。ここには光明の欠片も無い。同じことを繰り返す老人の自慢…