男の痰壺

映画の感想中心です

映画1958

最後の歓呼

★★★★★ 2024年5月13日(月) プラネットプラスワン 庶民派で絶大な支持を得てきた老市長の最後の選挙を描いたものだが、ジョン・フォードらしいリリシズムとユーモアが心地よく適合して驚くほどに良い。こんな映画全く知りませんでしたが、映画史の底知れぬ奥…

真昼の欲情

★★★★ 2023年12月11日(月) プラネットプラスワン アンソニー・マンの映画だそうだが全く聞いたこともない作品だった。映画史の底知れない奥深さを思い知ります。コールドウェルの原作ということで「タバコ・ロード」と似たようなダメ一家の話です。 親父か…

水の話

★★ 1995年6月24日(土) みなみ会館 インスピレーションを頼りに行きゃあ何とかなるだろの戦略のなさが帰結した素材の残骸。料理は俺に任せろの意気も空転し素人芸と50歩100歩の体たらく。2人が名前を連ねた若気の至りモニュメントとして記録に残してい…

結婚のすべて

★★★ 1995年9月15日(金) ACTシネマテーク 昔も今も結婚への夢と打算が錯綜する乙女心は変わらないってことが解るわけだが所詮は安全領域へ着地する定番イズム。喜八演出は枠組みを破壊するには至らない。メフィスト三橋がこれこそ最先端風俗ですと新珠を連…

女狐風呂

★★★★ 2001年7月22日(日) テアトル梅田2 婿養子でありながら女房を女中呼ばわりして憚らない雷蔵の泰然自若さに嵯峨の陽性な姐御肌気質がかみ合い、日本映画には珍しい本音で戯れ合う理想の夫婦像が現出。その有り様の心地よさの前では推理劇としての出来は…

女俠一代

★★★★ 1994年7月10日(日) 日劇会館 東映任侠映画の様な題名だが、実は松竹お家芸の女性の一代記であり、しかもスタッフとキャストに東宝色も混じるというどっちつかず感があり、大長編を端折ったような印象も拭えないが、にもかかわらず実に骨太で堂々として…

無法松の一生

★★★★ 2003年2月4日(火) トビタ東映 日本映画黄金期の贅を尽くしたセット美術の奥行きの深さを堪能。ミディアムショットはマキノを彷彿とさせる安定感があり、多くのシンボリックなショットに加藤泰を想う。お話は勿論良い。尚阪妻版は未見。(cinemascape) ke…

黒い罠

★★★★ 1993年11月6日(土) 京都朝日シネマ2 冒頭はじめ長廻しが効果的に機能したとも思えないが、それでも仰角で捉えられたウェルズの巨躯が画面を制圧し一貫したフォルムが維持される。メキシカンヘストンの佇まいやチョイ役ディートリッヒのオーラ。ギリ圏…

熱いトタン屋根の猫

★★★ 1992年2月5日(水) シネマアルゴ梅田 凄まじい閉塞状況をこれ又閉塞的な一本調子のハイトーンで綴られるものだから酸欠状態になりそうなしんどさ。AS仕込みのニューマンは押しつぶされて埋没したがテーラーの濃厚なフェロモンだけが状況に風穴を開けて…

大樹のうた

★★★★★ 1992年11月15日(日) キリンプラザ大阪 3部作と銘打っているが前2作とは別物の手練れ感があり絶頂期のイタリア映画のような良質な芳香を感じる。アジア的なるものを欧州的な技巧の水準で書き直した幸福な融合。生きとし生けるものの悲喜交々と悲しみ…

炎上

★★ 1991年1月26日(土) 毎日文化ホール この薄暗い画面の連続の中に反俗世の象徴たる主観的絶対美としての驟閣寺は一片たりとも垣間見えないので、主人公の懊悩がどうにも説明不足で薄っぺらい。結果、それを消滅させ自らも消えるという滅びの美学は陰々滅々…

大怪獣バラン

★★ 1991年11月17日(日) 日劇シネマ 攻防戦に徹したと言えば聞こえが良いが、こうも安易な出来合いニュースフィルムを連チャン使用されるとシラけるだけだ。自衛隊のPR映画かと思うくらいで、それはそれで構わないのだが、そう思って観ても出来が良いもので…

めまい

★★★ 1985年7月6日(土) 新世界国際 ノバクの美貌とサンフランシスコの景観で何となく見せはするが、この因襲話はヒッチお家芸の「マクガフィン」のいいかげんさとは最も対極的位置にあり彼のストーリーテラーとしての弱点を露呈させる。正直、前半はだるく後…

シャルロットとジュール

★★★ 2010年11月20日(土) 第七藝術劇場 結局、そんなことならさっさと済ませて失せやがれということなのだが、弄ぶかのようなシャルロットのお茶目さの執拗な過剰感は見てて不快ではない。男の未練や強がりと親和し呼応してるからだろう。ラストの決めはベ…

彼岸花

★★★ 1983年12月16日(金) ビック映劇 1992年2月9日(日) 日劇シネマ 頑なに自我を通す親父佐分利信が、後期小津作品の中ではとりわけ融通の利かない男で、枯淡の域には未だ遠く、小津の「赤」を偏重するカラーへの異様な拘泥と合いまり息苦しい。山本富士子が…

大いなる西部

★★★★ 2013年2月14日(木)TOHOシネマズ梅田10 笑ってしまうくらいな大構えがお茶目。新旧や東西の対立軸を錯綜させた構成は見事だが、旧世代の終焉による収め方が性急過ぎ。シークェンスの頭に何度か置かれたカウボーイ達のダラな日常。ワイラーのこう…

隠し砦の三悪人

★★★ 1978年11月5日(日) 伊丹ローズ劇場 瞬時の判断で騎乗追走しの鮮やかな3人斬りの挙句に冗長な藤田との申し合い。決定的な個の脅威が存在せぬ状況で内輪揉めに終始する世界観は余程の芸どころ不在では厳しい。上原美佐の学芸会は突き抜け笑えるが【黒澤】…

清水港の名物男 遠州森の石松

★★★★★ 2014年10月11日(土) 新世界東映 「恋する」ことの喜びを全篇むしゃぶり尽す展開で、これを明朗な錦之助口跡で謳いあげられる嫌味無さが心地よい。花街一夜の翌朝の猿芝居な至芸。近江での志村一世一代の名演。長谷川裕見子鉄火肌の点睛。マキノ流山…

張込み

★★★★ 1979年8月25日(土) SABホール 精緻な設計図を基に徹底した撮影現場のコンテクストを描いて臨んだと思しき一点一画を忽せにしない職人仕事の趣がある。拘りを感じさせるアバンタイトルの異様な長さが意識の程を表出。しかし、設計図を突き破るものも…

コンクリート作業

★★ 2017年9月23日(土) プラネットスタジオプラス1 ゴダールの処女作である短篇ドキュメンタリーであるが、その歴史的価値のみで何ら見どころは無い。 見たところに相当な大規模ダム工事であり、映像のスペキュタリティを追及するに過不足ない題材だと思う…