男の痰壺

映画の感想中心です

真昼の欲情

★★★★ 2023年12月11日(月) プラネットプラスワン

アンソニー・マンの映画だそうだが全く聞いたこともない作品だった。映画史の底知れない奥深さを思い知ります。コールドウェルの原作ということで「タバコ・ロード」と似たようなダメ一家の話です。

親父から聞いた本当かどうかも疑わしい金貨が埋蔵されてるという話に縋り付いてロバート・ライアンは何年間も穴を掘り続けている。彼の長男はバカバカしいと家を出たが次男・三男は親父の作業に付き合わされてる。一応信じてるみたい。

この当てもない話が延々続くので見てる方もしんどくなる。一方で次男の嫁と長女の亭主が昔なんやらあったらしく、そのへんの痴話喧嘩や臆面もない未練話がやり切れなさに輪をかける。

 

ただ、アーネスト・ホラーの撮影がモノクロームの粋と言っていい出来で随所の縦構図の決まり具合とか何だか名作然としていて、このお先の見えない話をマンはグイグイ引っ張る。ある意味カルティックに秀でた映画のように見えてしまう。

 

ジョン・フォードによる「タバコ・ロード」を俺はものすごく好きなのだが、同工異曲とも言える本作を割り引いた点にせざるを得なかったのは、ユーモアと叙情性の差だと思います。

それでも、終局の雲が晴れたような帰結は溜めた鬱屈があるからこそだと思えるのです。

 

当処ない埋蔵金探しと恥もへったくれもない浮気話がずーっと続いてしんどいのだが、ロバート・ライアンは好人を演じて映画の軸を支えるしアーネスト・ホラーの撮影は時に縦構図のエッジを効かせてシュア。そして全てが無に帰して世界は晴れ渡るのだ。(cinemascape)

 

kenironkun.hatenablog.com