男の痰壺

映画の感想中心です

映画1951

銀座化粧

★★★★ 2025年10月24日(金) シネヌーヴォ 男運の悪い女の遣る瀬無さがたまらない。それを不幸顔が板についた田中絹代が一身に現しているのだが、微かな希望の曙光は瞬く間に潰える。それが子どもの失踪解決の安堵と錯綜・連鎖する終盤の畳み掛ける作劇は見事…

白痴

★★ 2014年11月9日(日) シネヌーヴォ フィルムを切られた不運より、この地に足のつかぬ大芝居の小っ恥かしさを4時間見せられずに済んだ幸運を味わいつつ観た。胡散臭い白痴森が照射する汚濁は好演する原節子から一応は透けてきそうな気がするが凡庸で退屈…

ウンベルトD

★★★★★ 2016年5月5日(木) プラネットスタジオプラス1 矜持だけは残存するが最早生き抜く術を失した老人に対するデ・シーカのサディスティック視線は冷めた世間の衣を借り十重二十重に炸裂する。それでも愛犬依存な能天気ぶりがブラック。しかし少女の心折…

愛人ジュリエット

★★★ 2023年1月19日(木) シネリーブル梅田2 これぞおフランス正調ロマン主義といった趣きで、煎じ詰めれば「色男金と力はなかりけり」ってだけの話であり、男は女々しくもフラれた女のことをいつまでも思っている。それだけの話なんです。 夢や幻想を映画…

めし

★★★ 1995年5月21日(日) ACTシネマテーク 倦怠とは、こう言う画に描いたようなアンニュイで現されるものかという思いがある。平素を装った表面づらの陰に忍び寄るものじゃなかろうか。夫婦のちょっとしたすれ違いや誤解を描いてそれなりではあるが、描くべ…

麥秋

★★★★★ 1994年2月26日(土) ACTシネマテーク ルーティーンから半歩外したキャストの仄かな新風も完膚なきまでの手法の絶対世界で牛耳られる快感。編集リズムの極致的快楽のみでも個人的には全き小津ベスト。豊穣な侘び世界は辛らつな寂びの詠嘆に連なる。そ…

ホフマン物語

★★ 2001年7月24日(火) 扇町ミュージアムスクエア 色男とも思えぬホフマンが恋の思い出を語っても全く入り込めず、結末はシニカルなのに篇中では作り手のスタンスが伝わらず居心地が悪い。3話とも幻想譚なのだが、同時代のコクトー等の作と比べても表現が稚…

巴里のアメリカ人

★★★★ 2022年2月26日(土) シネリーブル梅田2 子どもの頃にテレビで放映されてるのを見て退屈した覚えがあるのだが、さすがに今回はそれはなかった。 ガーシュインの楽曲はメロディアスではあるがビートが効いてるわけじゃないので趣味でもないし、モダンバ…

オーソン・ウェルズの オセロ

★★★★ 1993年12月12日(日) 京都朝日シネマ2 カメラマンの交替を余儀なくされ間断しながら4年に渡った撮影と挙句に短縮カットされ喪失されたフィルムの怨念が歪な画面から滲み出ているようだ。統一感を欠いたしっくり来ない出来なのだが、随所て突出する多く…

黄昏

★★★★ 1992年10月7日(水) シネマアルゴ梅田 『嘆きの天使』から扇情性と加虐味を取り除き親愛と矜持を加味した。最後の一線ギリギリで持ちこたえた男のプライドが泣ける。重厚なワイラー演出も良いが、やはり2大名優オリビエとジョーンズが凄いの一言。(cine…

夏の遊び

★★ 1992年12月19日(土) ホクテンザ1 ひと夏の思い出と言うには鬱屈を内包したものであり、そういうものを如何様に描くかの作者のスタンスへの戸惑いが拭えなかった。露悪的であることと、それを研ぎ澄まされた鋭利さで断罪する後のベルイマンと比較すると如…

見知らぬ乗客

★★★ 1991年7月29日(月) シネマアルゴ梅田 ムード身上のチャンドラーが当然の如く機能せずプロット主導のヒッチが統御した映画は物語のロジックを喪失し寄る辺ない凡庸に陥る。出演者にも華が無い。極言すれば「メリーゴーランド」と「テニスの観客席」と「サ…

白衣の男

★★★ 2021年8月1日(日) プラネットプラスワン *プラネットでは「白いスーツの男」のタイトルで上映されましたが、ここでは流通している「白衣の男」を採りました。 「イーリング喜劇」という言葉を初めて知ったのだが、1950年代のロンドンの片隅にあっ…

紹介、またはシャルロットとステーキ

★★★★ 2021年7月22日(木) テアトル梅田2 習作といっていいんでしょう。 男はシャルロットが好きなんですが、彼女はその気はないみたい。でも、なんだかんだで彼女の家までついていく。 汚れるから上がんないでと言われて玄関でボーっと立っている。 シャル…

ベリッシマ

★★★★★ 1983年12月22日(木) 伊丹グリーン劇場 思いこんだら視野狭窄に陥りひたすらに猪突猛進するが何時か気付いて一気に退いてしまう。しかし間をおけば又ぞろ同じ事を繰り返すだろう…そんな女の愛しき性を肉体と魂で叩き付けるアンナ・マニャーニが最高。ヴ…

探偵物語

★★ 1982年12月18日(土) SABホール 際限なく模倣され陳腐化していくオリジナルについて出来るだけカバーリングして見ようとは努めてみるが、この分署内の人間模様は多くの刑事ドラマを見た今ではどうしようもなく退屈。ワイラーの演出も雑然とした事態を収…

カルメン故郷に歸る

★★ 1981年1月31日(土) SABホール 歴史に残ることが確定された日本初総天然色映画の祝祭的記念碑に敢えてストリッパーを主人公にしたことに偽善的な臭いを感じる。だから、彼女たちがバカ陽気にお人好しぶりを発揮すればするほど、あざとく思え嫌悪感が…

2ペンスの希望

★★★★ 1981年1月11日(日) 大阪府中小企業文化会館 美人に追い回されるという男の願望充足と不景気下でも一生懸命頑張っていればいずれ道は開けるというイタリアンな楽天主義が程良いテンポで描かれる。働けど働けど楽にならない時代の妬みや拗ねや諦めとは…