男の痰壺

映画の感想中心です

映画1970

小人の饗宴

★★★ 1980年11月1日(土) 関西学院大学第4別館309号室 虐げられし者は、実は簡単に虐げる者になる。傷ついた駱駝や鶏への嘲笑は我々の日常に潜む本質への痛烈なアンチテーゼと解釈したい。ヘルツォークは全く呵責無い現実認識を観る者に突きつけるだろう。…

座頭市と用心棒

★★★ 2015年3月28日(土) トビタ東映 「ばけもの」「けだもの」と呼び合う両雄ががっぷり四つに対峙するわけでもない。痴話喧嘩程度の抗争が眠く展開も遅滞。喜八演出は出涸らしの形骸だ。文子・三船のレア絡みも生煮え。只ラスト10分だけは撮影と美術が演…

早春

★★★★ 2018年2月25日(日) シネリーブル梅田2 同級生の女の子ではないし、もちろん年増おばさんでもない。 年上のお姉さん。 このピンポイントの異性に憧れる童貞の性欲。 ってのはわかるし、多分にそれは自己完結した観念世界で成立しているのだ。 である…

真昼の死闘

★★★ 2025年4月14日(月) プラネットプラス1 子供の頃にTV放映で見て大して面白くもない印象だったが、今回見直して何割かはその頃より面白く感じた。それは概ねシャーリー・マクレーンの印象が何割か上乗せされたことに依る。 少年時代、TV放映で見た…

ハネムーン・キラーズ

★★★★ 2017年12月16日(土) 新世界国際劇場 犯行に及ぶ際、心地よいくらいに感情的な足跡は全く描かれないし究明しようともしてない。 迷いとか躊躇とか罪悪感とか、そういうものだが、かといって冷酷を強調しようとの意図もなさそう。 シークェンスからシー…

エロス+虐殺

★★★ 1979年9月2日(日) SABホール 時制の錯綜にせよハイキーなモノクロ映像の徹底にせよ一貫した手法へのポリシーの下で成されたという拘りは感じるが、高名な大正のアナーキストを描いて男女の愛憎に終始するのでは方途として使われた者は浮かばれないの…

アッと驚く為五郎

★★★ 2025年1月5日(日) シネヌーヴォ 俺が子どもの頃に「ゲパゲバ90分」というコント番組があって、そのコントの幕間繋ぎにハナ肇のヒッピーおじさんが押入れから出てきて「アッと驚く為五郎〜」て言うショートギャグが挟まれて流行りました。これは、そ…

雨の訪問者

★★★★ 2024年11月17日(日) シネヌーヴォ 決して幸せとはいえない女がいて、その彼女が危機に見舞われ、ふらりとやって来た男に救われる。という女性の白馬の王子様願望を取り入れた鉄板の売れ線ストーリーであります。セバスチャン・ジャプリソはフランスの…

パンと裏通り

★★★ 2017年2月18日(土) シネヌーヴォ タイトルバックがビートルズ(オブラディオブラダ)? っていうかイージーリスニング使用ってことなんやろう。 そういう、手近のもんで済ませた、まあ習作ですわ。 俺も子供のころに、犬に追っかけらえてトラウマにな…

フェリーニの道化師

★★★★ 1977年12月11日(日) 元映 1980年5月11日(日) SABホール 少年時代の回想は『アマルコルド』へ、監督自身が登場するフェイクドキュは『ローマ』へと伸延されて結実する。幼少時の記憶の中の残像は得てして主観に装飾された虚像なのだ。これは老いて消…

ひまわり

★★★★ 1976年5月30日(日) 阪急文化 1976年8月3日(火) SABホール 序盤の笑劇的導入が温いなりに効き悲劇への転調を際立たせる。絶望の中から見出した微かな希望を胸に1人行く異国。沈む気持ちに突き刺さる広大な向日葵畑と煽情的音楽は大向うを唸らせるこ…

さよならを言わないで

★★★★ 1976年11月23日(日) 大毎地下劇場 行き場のない刹那感に思い出はあくまで美しく縁取られ、やがて確実に来る終着点に向かって愛は昇華されていく。そして、美しい2人を、これ又圧倒的に美しく哀しい秋の佇まいが包み込むのだ。世の規範に背を向けてひ…

博徒一家

★★★ 2016年10月22日(土) 新世界東映 自分より能力・人格的に見劣りすると衆目も一致する者が親分になるという跡目相続を描いて「総長賭博」のエピゴーネンだとの声も仕方なにのだが(というより笠原和夫のやっつけ仕事だろう)、これはこれで面白…

煉獄エロイカ

★★ 2023年8月16日(水) シネヌーヴォ 実はこの映画、20代で見に行ったとき滅多にないことなのだが開始数十分で映画館を出た記憶がある。体調不良で難解さについていく気力が続かなかった。今回、捲土重来の思いもあって見に行きました。 「エロス+虐殺」…

砂漠の流れ者

★★★★ 1991年○月○日 テアトル梅田2 天涯孤独の復讐鬼が荒野で癒されていくのが娼婦と牧師という2葎相反な触媒によるという図式的構図はハマるが、結局、全ては時代の移ろいに押し流されちまうんじゃズルいと思う反面ペキンパーの思いが行きつくのは最後はそ…

仁義

★★★ 1998年11月7日(土) シネヌーヴォ 思い入れ過多のムードノワールとして前半は良い。ドロンとヴォロンテの2人に軸が定まり安定しているからだが、モンタンとペリエが絡み出すと均衡されたバランスは崩壊し物語は停滞していく。大体肝心の強奪シークェンス…

家族

★★★ 1994年2月2日(水) テアトル梅田1 列島を縦断するだけで犠牲にせざるを得ないものがあったが、一方計り知れない希望もあった。清潔や安全と引き替えにユートピア幻想が崩壊した今、時代の記録として感慨を覚えるが、ただ机上の設計を旨とする山田にロー…

WANDA ワンダ

★★★★ 2022年8月3日(水) テアトル梅田1 夫にとって良き妻であり、子どもにとって良き母であるということができない女性の話で、男にとっては赦し難いことだったんでしょう。ヴェネチアで受賞したにもかかわらず50年前のアメリカの守旧的価値観のなかで黙…

家庭

★★★★★ 2022年7月11日(月) テアトル梅田2 正直、アントワーヌ・ドワネルものが性に合わないって思ってます。なんか、いいかげんな野郎がフラフラするだけの映画やんかと。まあ、これも、幸せな夫婦に子どもができて夫が浮気して女房が三行半突きつけてみた…

ライアンの娘

★★★ 1993年2月7日(日) シネマアルゴ梅田 予めの画枠に当て付けされた底浅三角関係が陳腐で、キャストも弱い。補うべく配置されたクセある傍系人物たちも機能不全。アイルランド独立という歴史的乃至政治的背景は必然ではなく後付け的に浮いている。あたら気…

やくざ絶唱

★★ 1993年4月10日(土) 日劇シネマ 変態たることを自覚すればこその哀感が、この映画の勝新は狂的な部分のみがクローズアップされ過ぎて、自覚しているのかどうかもおぼつかない始末。辛気臭い話を田村・川津の2大辛気臭俳優が倍加させ唯一太地喜和子がまと…

緋牡丹博徒 お竜参上

★★★ 2002年11月23日(土) 扇町ミュージアムスクエア 『花札勝負』で完成された世界の残滓。前半の凝りまくりのショットの数々は美学的完成形を思わせるが独善の兆しも漂う。毎度の阿部徹のズルくて悪い様が度を超しており文太も健さんや鶴田に比べ未だ頼りな…

激動の昭和史 軍閥

★ 1992年6月28日(日) 日劇シネマ 「軍閥」と構えてみたものの大した力学的究明がある訳も無い。日中戦争から太平洋戦争まで総花的且つ駆け足で描こうとするから薄くなり、どこかで見たような配役、エピソードの羅列ばかり。尚且つ安易なニュースフィルムの使…

男はつらいよ 望郷篇

★★★★ 1992年8月29日(土) サンポードアップルシアター 渡世人稼業の哀感を描く前段と、後半の東京でのルーティーン失恋譚が各々しっくり調和して完成度と言うならシリーズ中1・2を争うのであろうが、大きな破綻もなく完成され過ぎてる一方突出したものもな…

昭和残俠伝 死んで貰います

★★★★ 1992年10月25日(日) 新世界東映 全部を見てるわけでもないがシリーズ最高作の謳い文句は多分本当なんだろう。しかし加藤泰みたく媚びたケレンは要らなかったのじゃないか。小津ほどスタイルを固辞しないでも全体の統制力を軽やかに堅持したマキノだから…

影の車

★★★ 1992年11月21日(土) 日劇会館 高度成長期真っ直中の市井の片隅で生きる一般庶民の平々凡々たる日常の緻密な積み重ねの連続には或る種の既視感を覚えて堪能したのたが、今更のトラウマ話に映画が踏み込み始めると、どうでもよくなった。現像処理でのハイ…

クレールの膝

★★★★★ 2021年7月19日(月) テアトル梅田2 ほっといても女性の方から声かけて寄ってきて、自分の話に耳を傾けてくれる。何だか万能感半端ないおっさんのこの世の春。 それは、1人の新たな少女の登場で打ち砕かれるのでありました。 得意のオヤジの魅力光線…

無頼漢

★★★ 2009年3月21日(土) トビタ東映 爛熟江戸文化の頽廃を表した撮影・美術・音楽のコラボの成果には或る程度魅せられるが、寺山の形骸的反体制イズムと仲代のルーティーン芝居には可成りうんざりさせられる。水野VS河内山の傑物対決に庶民小沢の絡みが鈍…

日本女俠伝 鉄火芸者

★★★ 2009年3月28日(土) トビタ東映 所詮は芸者が侠客の斬った張ったの世界に介入できる術はなく、笠原のロジックも整合性への道筋は見出せていない。純子は傍観者で脇文太で締めざるを得ない煮え切らなさ。羽織会の締め舞くらいではアドレナリンを滾らせて…

ずべ公番長 夢は夜ひらく

★★★★ 2009年10月24日(土) 日劇会館 内向的イジケ度ゼロの前向きエロス炸裂。超ミニで緩パン丸出しを物ともしない大信田礼子の規格外の健康美に釘付けで、1人任侠に浸る梅宮も悪乗り金子も蹴散らす女たちには文句無しの感動を受けた。勿論、主題歌も良いよ…