男の痰壺

映画の感想中心です

早春

★★★★ 2018年2月25日(日) シネリーブル梅田2
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同級生の女の子ではないし、もちろん年増おばさんでもない。
年上のお姉さん。
このピンポイントの異性に憧れる童貞の性欲。
ってのはわかるし、多分にそれは自己完結した観念世界で成立しているのだ。
であるから、いざ本番となると出来なくなったりする。
 
まあ、そういう話は今さら目新しいもんでもないし、正直おっさんになった今見たいとも思わない、
 
公衆浴場という絶妙にニッチで場末で猥雑で尚且つ空虚という舞台設定が素晴らしい。
この映画の成功は、8割方この異世界めいた環境による。
そこでは何が起こってもおかしくないと思わせる。
臨界すれすれの何かが充満しているようだ。
スコリモフスキーはその何かを丹念に拾い集めてスクリーンに焼き付ける。
 
灰褐色の世界で浮き上がる血の赤色・レインコートの黄色・ワンピースのオレンジ。
そういうポップな色彩は虚無と絶望を際立たせるのだ。
 
公衆浴場の場末でニッチで猥雑で尚且つ空虚であるという環境設定が異世界めき、そこでは何が起っても必然という臨界間際の剣呑が充満しているかのよう。童貞少年の年上お姉さんへの憧憬は終に暴走せずインポテンツに自閉するが幽界が侵食し破綻へと誘うのだ。(cinemascape)