男の痰壺

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煉獄エロイカ

★★ 2023年8月16日(水) シネヌーヴォ

実はこの映画、20代で見に行ったとき滅多にないことなのだが開始数十分で映画館を出た記憶がある。体調不良で難解さについていく気力が続かなかった。今回、捲土重来の思いもあって見に行きました。

 

「エロス+虐殺」と「戒厳令」の間に作られた本作を入れて吉田喜重の政治とテロル3部作ということになるのだろうが、大正アナーキズムに材をとった上記2作に対して本作は現代(1970年代)なのでテロの担い手は新左翼ブントとなる。この描写がチャチい気がしました。まあ、実際に彼らがやってることは本当にチャチかったのかもしれませんが。

 

長谷川元吉のモノクロ撮影が「エロス+虐殺」同様に超絶に構図にこだわったバリバリエッジの効いたもので移動撮影の最後が決めきめショットで締められる繰り返しに陶然となる。皮肉にも嘗て尻尾を巻いた最初の数十分が最も良かった。まだテロルの要素は出てこず夫婦と不思議女の話で、何が出て来るかの期待もある。そういう中では審美的映像も意味を為す。だけど、後半になって大使襲撃だスパイだとかやりだしてから底が割れる気がしました。

 

まっ、んなこと抜きにしても意味わかんないのも確かなんですがね。映画ってやっぱどっかに感情の寄せどころやエモーションの発露がないとしんどいなと改めて思いました。

 

超絶にエッジの効いた映像が続く冒頭数10分は衒学臭ふんぷんながら何某かの期待を抱かせるのだが、新左翼みたいな連中が大使襲撃の予行演習だスパイだ裁判だとやりだしてから底浅感が露呈する。エモーションの発露が吉田に望めぬから尚タチが悪いのだ。(cinemascape)

 

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