男の痰壺

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怪物の木こり

★★★ 2023年12月17日(日) MOVIXあまがさき8

シリアルキラーVSサイコパスと聞いて「エイリアンVSプレデター」とか「貞子VS伽倻子」とかの最恐対決もんを連想するが、そういうのって大方面白くならないのは、どっちかに見る者の気持ちを仮託させる為に最恐度を弱めざるを得ないからなのだろう。まあ、本作の場合、そもそもに謳い文句自体がウソやんって話でして、それは物語を語る上で仕方ないとも思わせる。

 

三池崇史も歳なんやな思った。かつては、この手のジャンルで観客の何人かが退場せざるを得ないようなエグいことやってきた男なのだが、もうエグいとこあまり見せません。頭割って脳味噌持ち帰るシリアルキラーっていっても理解不能の嗜好でそうするから怖いのであって、ちゃんとした目的があるとわかると怖さは半減する。そもそも脳味噌取り出すシーンも一切ない。情緒的な決着つける終盤なんかは随分迎合的になっちまったなと思います。

 

それでも役者陣の力踏ん張りには惹かれるものがあった。特に警察サイドを担う渋川清彦と菜々緒がいい。非情緒的なプロフェッショナリズムを纏った組織の描写ってのに長けてるように思います。「藁の盾」とか。そっち方面でのきっちりした作品をやってみて欲しいなと思わせます。

 

如才ない筆法とも言えるが嘗ての振り切れが性に合わなくなった三池のお歳なりの現在。それは悪くもないが、パラノイアを脳障害と規定して治療可能としてしまうと底は一気に浅くなる。挙句の情緒的帰結は凡化というしかない。警察サイドの描写は魅力的。(cinemascape)

 

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